72候を楽しむ漢方スローライフ(102)雷乃声を収む
見上げる空に秋を感じて(秋分初候 9月23~27日頃)
*
ゴロゴロと鳴り響いていた夏の雷が収まる頃。空を見上げると、入道雲の代わりにうろこ雲が浮かんでいます。この時期、秋分の頃にふと気づくのが、日暮れの早さ。太陽の出番がだんだんと少なくなり、その分気温も落ちて、季節は秋本番へと向かっていきます。
●長引く「空咳」に気をつけて
厳しい残暑もようやく落ち着く9月。この時期は爽やかな気候の一方、空気が乾燥し、空咳やのどのイガイガ感といった不調に悩まされやすくなります。
漢方では、こうした呼吸器系のトラブルは「肺」がダメージを受けているサインと考えます。肺はのどや鼻の状態と深く関わる臓器で、潤いを好み、乾燥に弱いことが特徴。そのため、空気が乾燥する秋は肺の働きが落ちやすく、コンコンと乾いた咳が出やすくなるのです。
空咳はそれほど重い症状ではありませんが、長引くと睡眠不足や体力の消耗を招き、全身の不調につながる心配も。悪化すると肺炎や喘息の要因にもなるので、症状が軽いうちにしっかり改善しておきましょう。
●秋は「肺」の潤いを養う
空咳対策の基本は、乾燥しがちな肺の潤いを十分に養い、働きを強くすること。のどや鼻の乾燥、口の乾き、肌の乾燥・かゆみといった症状を感じたら、肺の乾燥が進んでいるサインと考えて早めに対処しましょう。
体内の潤いを養うためには、適度な水分補給はもちろん、“身体を潤す食材”を積極的に取ることも大切です。また、睡眠不足は乾燥を招く要因になるので、日頃から睡眠をしっかり取ることも心がけましょう。
食材は、肺を潤し咳を鎮める梨、りんご、白きくらげ、はちみつ、春菊、クコの実、豚肉などがおすすめです。
◆ハレの日薬膳レシピ:豚しゃぶと梨ごまソース
豚肉に梨ごまソースを合わせて肺を潤しましょう
エネルギー280kcal たんぱく質17.7g 塩分1.6g(1人分)
<材料・2人分>
・豚肉(しゃぶしゃぶ用)…………200g
・酒……………………………………大さじ1/2
・白きくらげ…………………………2g
・わかめ………………………………20g
・春菊…………………………………40g
・クコの実……………………………4g
・梨……………………………………1/4個(50g)
・練りごま……………………………大さじ1
A・すりごま…………………………大さじ1
A・しょうゆ…………………………大さじ1
A・米酢………………………………大さじ1/2
<作り方>
(1)熱湯に酒を加え、豚肉をほぐしながらサッとゆで、ザルに上げて水気をきる。
(2)白きくらげは水で戻し、かたい部分を除いてちぎり、10分ほどゆでる。わかめは水に戻し、ざく切りにする。
(3)春菊は5cm長さに切る。クコの実はぬるま湯で戻す。
(4)梨をすりおろし、練りごまと混ぜる。さらにAを加えてよく混ぜる。
(5)(1)(2)(3)を器に盛り、(4)のソースをまわしかける。
レシピ=宮坂静(東京栄養士薬膳研究会)
*
24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。