百歳さんこんにちは:東京都・後藤はつのさん(109歳)
東京都墨田区に暮らす後藤はつのさんは、今年9月1日に109歳を迎えた同区の最高齢。認知症予防のために73歳から始めた油絵は独自の技法を確立し、文部大臣奨励賞を受けるほどの域にある。
◆岡倉天心から行儀作法を学ぶ
はつのさんの出身地は新潟県妙高市赤倉温泉。豆腐屋旅館の8人きょうだいの長女として生まれた。「温泉宿でしたが、ネオンも飲み屋もない、ひなびた静かな町でした」と郷里を語る。
幼少時代の思い出の一つが、明治時代の思想家であり日本の近代美術発展に大きな功績を残した岡倉天心との出会いだ。「先生が赤倉の別荘で晩年を過ごされた時、別荘におぼろ豆腐を届けに行きました。そこで行儀や作法を教えていただきました」と懐かしむ。
◆73歳にして絵画に目覚める
はつのさんが絵画に目覚めたのは、73歳になってからのこと。すでに東京に移り住んでいた。長男の昭さん(85歳)が画材をプレゼントしたのがきっかけだった。
はつのさんの作品は100号の大作。「小さい絵を描くのは苦手だから」と謙遜するが、子ども時代を過ごした赤倉をモチーフにした作品は、郷愁に満ちた温かみのある世界が描かれている。
作品は1年に1作のペースで100歳まで描き続けてきた。96歳の時に「現代童画展」で文部大臣奨励賞を受賞。106歳でニューヨークを旅行し、同地で個展も開催した。
昨年には、原田泰治美術館(長野県諏訪市)で「108歳の挑戦」と題した個展も開いた。はつのさんの描く子どもたちの顔には眼が描かれておらず、原田泰治の作品に通じたところがあることから、ファンの引き立てで実現した。
◆郷土料理や発酵食品が好物
はつのさんの健康法は、食べ物の好き嫌いがなく、ゆっくり奥歯で噛むこと。郷土料理や発酵食品を好んでいるのも、長寿につながっているようだ。
同居している昭さんと、小倉百人一首で遊ぶ日々。記憶力の衰えを感じさせない。
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