百歳さんこんにちは:愛知県・井島末喜さん
愛知県大府(おおぶ)市の小高い丘の上に建ち並ぶ閑静な住宅街の一角に「井島書道教室」はある。満98歳になる井島末喜(すえき)さんが50年ほど前に開設し、現在は長男が引き継いで近所の子どもたちを中心に書道を教えている。末喜さんは、書道家・井島震岳として現在も「書契書道会」の会長を務め、毎月発行する『書契』に掲載する条幅(じょうふく)の参考書を書き続けている。
●週に2回ボウリング
特筆すべきは、条幅(掛軸の大きさの画仙紙)を書く際、中腰で行うこと。これは経験を積んだ熟練の筆使いと、その技を支える足腰がしっかりしているからこそ、なせる技だ。
その強い足腰をつくるのに一役買っているのが、趣味のボウリング。1970年代のボウリングブーム以来、40年を超すキャリアで、現在も週2回、欠かさずボウリング場に通っている。自宅から車で約20分の「名古屋グランドボウル」(名古屋市緑区)に、近隣に住む娘の運転で通い、娘たちと一緒にゲームを楽しんでいる。1回行くと3ゲームはこなす体力を、いまでも持つ。アベレージは約130点。少し前までは150点以上を常に出していたという。この1年でも200点超えを出していて、日本ボウリング場協会の90歳以上を対象にした番付で、末喜さんは全国4位の横綱(90歳以上が横綱)に位置する強者だ。
将棋も強く、本人曰く4~5段の腕前。愛知県の大会で優勝した経験もある。多彩な趣味の持ち主でもあるのだ。
●10代から書道に親しむ
末喜さんは1917(大正6)年3月19日、熊本県に生まれた。10代から書道に親しみ、成人してからは山間部で炭焼きの仕事に就いた。その後は炭鉱で働くも、当時から書道は毎日続けてきたという。そして、仕事の合間に仲間と楽しんだのが将棋だった。
4女1男の子どもを授かった。4人続けて娘が生まれ、5人目にようやく息子が誕生。その長男が現在、書道教室を継いでいる。
現在の住まいに移ってきたのは、娘が名古屋に嫁いでいた縁から。知人の勧めなどもあり書道教室を開設した。以来毎日、早朝から筆をとり、条幅や半紙と向きあってきた。
98歳となった現在はさすがに毎日とはいかないが、会長書として条幅の参考となる作品を書いている。最近は後進の指導に専念しているが、「自ら筆を置くことはない」ときっぱり。書の道をいまも追求している。
●「8020運動」で表彰も
健康の秘訣を聞くと「何でも食べること」。食べ物の好き嫌いはない。朝昼夕の3食に加え、楽しみのおやつも欠かさず食べる。歯が現在も20本すべて揃っているというから驚きだ。
きのこの佃煮が好物。芋などの根菜類、「元気の素」としてウナギや刺身も大好きだ。牛乳と乳酸菌飲料は毎日欠かさない。週に1度行く食品スーパーでの買い物も楽しみの一つで、好きなお菓子や果物を自分で選ぶのが楽しいという。
80代の時には、厚生労働省や日本歯科医師会が「80歳になっても20本以上自分の歯を保ちましょう」と推進している「8020運動」で表彰も受けた。「昔から歯が丈夫で、かたいものばかり、しっかり噛んで食べていた」とのことで、いまでもせんべいやアイスの「あずきバー」などを、そのかたさをものともせず食べる。
性格はいたって穏やか。「マイペースで細かいことにくよくよしない」が信条だ。いまの目標は「まずは100歳」だが、もちろん、末喜さんにとっては通過点に過ぎない。地道に「健康的な生活を続けていく」だけだ。
先日、大家族に囲まれて白寿のお祝いをした。県外からも含め約30人が集まってくれた。5人の子どもをはじめ、孫11人、ひ孫9人、それぞれの配偶者、そしてもうすぐ生まれる予定の赤ちゃんも。末喜さんを囲む家族の輪は、まだまだ大きくなっていく。
◆あなたの周囲の元気な99歳(白寿)以上の方をぜひご紹介ください。
百菜元気新聞編集部 TEL03・6679・0212