ジャパン・フラワー・コーポレーション、バラの食用展開を 漢方薬メーカーと連携

農産加工 ニュース 2021.02.15 12187号 04面
松村吉章社長

松村吉章社長

バラのお茶

バラのお茶

中国平陰県のバラ農園

中国平陰県のバラ農園

 富山県を拠点にフラワーショップチェーンなどを展開しているジャパン・フラワー・コーポレーション(JFC)は、観賞用で人気が高いバラの食用(薬膳)としての展開を目指している。地元の漢方薬メーカーなどと連携して、「地方創生の観点も含めて富山を日本一のバラの都にしたい」(松村吉章社長)と意気込む。

 同社は、2018年に伊藤忠商事の子会社である婦人アパレルメーカーのレリアンから、バラ専門店「ローズギャラリー」を事業譲渡。美意識の高いラグジュアリーなバラ専門店として生まれ変わらせ、銀座本店を中心に百貨店などで店舗展開している。バラの食用展開に至ったのは、「世界トップ水準の本物のバラを追求していく中で原種に近い品種にたどり着く」(松村氏)ことがきっかけだ。

 19年5月に「バラの町」との異名を持つ中国山東省平陰県を視察。ここのバラの作付面積は3500ha、年間生産量9000tとバラ生産では世界一の規模を誇り、中医薬(漢方医薬)や食用を中心に栽培され、香水用途としても欧州などに出荷されているという。現地ではお茶、チップスなどのお菓子といった食用のほか、香りを楽しむアロマテラピーなどさまざまな用途がある。中医学理論によると、バラは「行気解鬱」「和血散淤」といった効能が知られ、ストレス緩和、月経不順改善などに日常的に愛飲されている。一方、富山は北緯37度に位置しバラの栽培には適地であることも重なり、バラの潜在的な可能性に魅了され、本社で食用バラの試験栽培に着手した。順次、栽培面積を増やしていく計画で、まずは100haを目指し、将来的には平陰県に匹敵する規模まで拡大したい考え。

 観賞用と違い、食用バラは「SDGsの観点も含めて無農薬で育成することがポイント」(松村氏)。富山は米どころとして有名であり土壌環境としては最適で、「コメからの転作を検討している生産者もいる」(同氏)ことからバラの栽培面積を拡大できる可能性は十分にあるとみている。ただ、食用バラの普及には課題もあり、安定した栽培技術の確立や生産の教育指導体制、流通手段などが挙げられる。こうした課題を乗り越えるには種苗メーカー、生産者、漢方薬メーカー、行政などとの連携が必要となる。中長期目標としては食用バラにとどまらず、アロマテラピーやコスメ、セルフメディケーションなども含めてバラを富山の特産物に育て上げたい考え。「桜に人が自然と引き寄せられて集まってくるように、多様なバラを目的に富山に人が集まってくることを願っている。人々が忘れていた自然への畏敬の念を思い出させるような象徴的な事業にしていきたい」(松村氏)と力を込める。(藤村顕太朗)

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