パクチーアカデミー協会、パクチーの機能性分析 においではない可能性も

農産加工 ニュース 2021.05.24 12231号 05面
新たな加工食品開発に道を開く可能性があるパクチー(写真提供=金港青果株式会社)

新たな加工食品開発に道を開く可能性があるパクチー(写真提供=金港青果株式会社)

渡邉泰雄理事長

渡邉泰雄理事長

 パクチーは古来、香辛料や薬用植物として世界的に知られている。日本では一時期、デトックス野菜として紹介され一世を風靡(ふうび)したが、近年、その機能性が次第に明らかになってきている。パクチーに特化した学術団体であるパクチーアカデミー協会の研究によると、パクチー独特のにおいは機能性と直結しないのではないかということが分かってきたという。同協会理事長の渡邉泰雄氏(横浜薬科大学総合健康メディカル研究センター代表)は、「パクチーのにおいが苦手な人でも食べてもらえる新たなパクチー開発につながる」と期待を寄せる。

 パクチーの効能効果については、2000年以上の歴史がある中国の伝統医学「中医学」で「解表」(発汗)、「消食」(消化不良の改善)、「透疹」(あえて発疹を出す)、「解毒」などが知られ、中でも「解毒」は、ヒ素など重金属の排出作用という現代的なエビデンスがあり、古典で知られる効能の裏付けも進んでいる。このほか現代の研究では、抗酸化作用、脂質改善、血糖値コントロールなどが知られており、同協会メンバーらのグループでは記憶障害抑制や静穏(質の良い睡眠)効果などがあることを報告している。

 ただ、パクチーの独特のにおいは人によって好き嫌いがあるため、同協会理事の永沼勝之氏(ハイアットリージェンシー東京取締役総料理長)がオリジナルレシピを開発、おいしく食べる健康野菜として提案している。

 パクチーの研究では香り成分に着目した報告が多いが、実はそのにおいもパクチーの機能性と直接結びつかない可能性があるという。「ガスクロマトグラフィーを使って調べても微量なピークしか立たず、有効成分を特定できない」(渡邉氏)といい、既存の香り成分が関与しているわけではなさそうだ。ただ、現時点ではルチンをパクチーの品質評価の指標としており、同協会が展開している「パクチー認証制度」もルチンを測定することで抗酸化作用の分析を行っている。

 実際、パクチーはニンニクと違って、食べても口ににおいが残らない。また、虫を寄せ付けないことから、においは“除虫”としての効果にすぎないのかもしれない。あるいは、まだ知られていない香り成分が存在する可能性もなくはない。いずれにせよにおいがパクチーの効能に関与していないのであれば、「においのないパクチーを選択できる余地ができる」(渡邉氏)ので新たな加工食品開発に道を開くことができそうだ。(藤村顕太朗)

 ▽パクチー認証制度の概要=農産物としてのパクチーおよび加工品について自主的な生育環境や生育方法、衛生管理を推進するとともに、より安全で高品質なパクチーの提供と消費者の安心確保を図ることを目的としている。生育・製造もしくは販売する事業者にとってトレーサビリティーの確保などにも適切な証明となる。問い合わせ先メールアドレス=pakutiacademy@gmail.com

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