水産練業界の苦境続く 日本かまぼこ協会、コスト高騰に理解促す
水産練り製品業界の苦境が続いている。主要因は北米産スケソウダラすり身の高騰。世界的な健康志向で欧米での切り身需要が増し、すり身価格上昇につながっている。これに物流費や人件費の上昇が重なり、メーカー収益を圧迫。相次ぐメディア露出によって国内市場は昨秋からの空前ともいえるカニ風味かまぼこブームで活性化しているが、他カテゴリーへの波及は限定的。恩恵を受けたメーカー以外は依然、厳しい環境にさらされている。(本宮康博)
こうした情勢を受けて、日本かまぼこ協会はこのほど生産コストの高騰に小売業者や消費者の理解を促す目的で、会員メーカーに対する実態調査の結果をとりまとめて公表した。さらなる厳しさも予想されるため、協会として今後「商品の価値に見合った適正な価格改定によって、事業が継続・発展できるよう、関係方面へ働きかける」方針だ。
同協会が11月に実施したアンケート調査(回答124社、6日開示)の結果からは、業界を取り巻く過酷な経営環境が浮かび上がる。いずれも17年時点との比較で聞いたところ、すり身の仕入単価は「20~30%上昇」したメーカーが4割超、「10~20%」も36%だった。調味料・食用油など副原料の仕入単価も8割以上が「10~20%上昇」とした。また人件費でも95%が「10~20%上昇」とし、輸送費は8割が「10~20%上昇」と回答した。
昨年から今春にかけて、大手・中堅メーカーをはじめ8割の会員が製品値上げを行ったが、そのうち半数近くの43%が「生産コスト増分を吸収できない」と回答。「25%未満の吸収」(28%)と「25~50%の吸収」(15%)を合わせると、ほぼ9割が値上げ後にコスト上昇分の半分も吸収できていないことになる。
下村全宏会長は「すり身は世界的な健康志向の高まりから需要が拡大し、価格が高騰している。値上げできたメーカーもコスト高騰をカバーしきれておらず、採算割れや経営苦境が続き、自助努力の限界を超えている。適正な価格改定ができないと、業界の存続が危ういと言っても過言ではない」と強い危惧を表明。「良質なタンパク質に富み、調理が簡便な水産練り製品が価値に見合った値段となるよう」消費者・流通業者に呼び掛けている。業界では今春以降、小規模メーカーの倒産・廃業が断続的に続いている。