タイ・コンビニ業界、セブンイレブン一強に

小売 ニュース 2023.11.08 12673号 03面
ファミリーマートからトップス・デイリーに模様替えされた店舗=タイ・バンコクで、10月28日小堀晋一写す

ファミリーマートからトップス・デイリーに模様替えされた店舗=タイ・バンコクで、10月28日小堀晋一写す

 日本や米国などと並びコンビニエンスストア大国のタイで、セブンイレブン一強の様相が強まっている。一時はライバルと目されたファミリーマートは5月に完全撤退。地場資本と組んだローソン108も伸び悩む。現在2位につけるロータス・ゴー・フレッシュはセブンと同じ巨大財閥CPグループの一員で競争相手とは言い難い。周辺国のカンボジアやラオスでもセブンの出店が続いており、この地域のコンビニ市場は完全にセブンイレブン一色に染まっている。

 不穏な動きは年初から始まっていた。一時は2000店を目標としていたファミリーマートの看板が、市街地から突然姿を消し始めたのだ。バンコク中心部プロンポン周辺の数百mの四方には少なくとも3店の同店があったが、すべて閉店した。コロナ禍前には店舗デザインを刷新して、セブンを猛追すると意気込んでいたのにである。何があったのか。タイのコンビニ市場にさまざまな憶測が流れた。

 ところが、日本のファミリーマートとフランチャイズ契約をしてタイで同店を展開していた流通大手セントラル・グループは、積極的な情報発信を行わなかった。

 明らかにしたのは閉店がずいぶんと進んだ6月以降になってから。取材に答える形で、「5月下旬の契約満了によってファミリーマート事業は終了した」(セントラル傘下セントラル・リテール・コーポレーション)というものだった。事後報告は明らかにイメージを低下させた。

 契約満了時に残っていたファミリーマートの400店舗余りが、セントラル・グループが別に展開していた小型スーパーマーケットのトップス・デイリーに統合され、模様替えして再出店した。

 現在同ブランドの店は525店舗を数える。セブンと対抗するために、商品も一新した。タイで根強い韓国料理ブームを受け、即席韓国ラーメンの調理コーナーを併設するなどした。輸入品なども扱う。しかし、その先の戦略は描けていない。

 これに対し、セブンイレブンは盤石だ。6月末の店舗数はタイ全土に1万4215店。年間700店のペースで新規出店を続けている。

 運営するCPグループ傘下のCPオールの今年上期(1~6月)の売上高は前年比約10%増の4543億バーツ(約1兆9000億円)、純利益は約33%増の86億バーツだった。年末までに新たに最大130億バーツの社債も発行して資金調達も進める。格付け会社の投資適格もA+を維持したままだ。

 タイのセブンはカンボジアとラオスでも出店計画を持つ。カンボジアでは2021年8月以降、首都プノンペンを中心に6月末現在66店舗を展開する。年末までに100店舗体制を目指す。ラオスでも9月に1号店を出店。全土に拡大していく方針だ。これにより、セブンの展開国は世界20ヵ国・地域となった。

 タイのコンビニはこのほか、CPグループが英テスコから買収したロータス・ゴー・フレッシュが約2000店、大手財閥TCCグループが運営するビッグCミニが約1200店、ローソン108が200店弱などとなっている。

 (バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら