全漬物協組連、PR事業の一環として古代の漬物「須須保理(利)」を再現
漬物はもともと野菜や山菜などの保存方法として始まったといわれているだけに、歴史は古い。乾燥品とともに“最古の加工食品”といわれるほどである。奈良・東大寺の正倉院に納められている古文書「雑物納帳」に野菜を塩漬けした「■」(にらき)の文字が書き残されているということだから、文献に登場したのも西暦四世紀の第一二代景行天皇の頃ということである。
「漬物」の文字があらわれるのは「延喜式」(九二七年)で、山菜や野菜、果物が酒粕やもろみに漬けられて供され、その種類は春一四種、秋三六種にのぼったというから、かなり多種多彩である。
ところで最古の漬物「■」は「にらき(ぎ)」とも「すすほり」とも読むようだ。広辞苑によれば「にらき」(■)とは「ニレの樹皮の粉末を入れた塩に菜を漬けた食品」で“和名抄”に記されているという。「すすほり((■)」は「塩漬の菜。すずおり」で、“新撰字鑑”を原典としている。「すすほり」については修訂大日本国語辞典に「野菜を漬物にすること。また、その野菜」と書き、“字鏡”では「■(須須保利)」となっていて「すすほり」と読ませていることを紹介している。
「にらき」といい「すすほり」といい、全く異なる読み方がなぜ生まれたのか、興味のあるところだが、それは考証家にゆだねるとして、最古の漬物が再び現代によみがえったとしたらどうだろう。
9月27日、全日本漬物協同組合連合会がPR事業の一環として行った記者懇談会の席上、食文化研究家として知られる永山久夫氏が「須須保理漬」として奈良時代の漬物を再現した。カブを原料に、米麹と大豆を加え、塩分八%で一ヵ月間、常温で漬け込んだということで、乳酸発酵が進んで、かなり酸味が強くなっていたが、ご飯と一緒に食べると食が進みそう。
さて、そのつくり方だが、“字鑑”によれば「■根須須保利六石(料理六升、大豆一斗五升)、■■(アヲナ)■十石(料塩六升、■五升)……■根須須保利一石(料塩六升、米五升)」と記されている。永山氏がこれを再現したのかどうかは聞き洩らしたが、漬物業界でもどなたか挑戦してみてはいかが。