コロナ禍で注目のフードロス対策ビジネスを比較検証

食品原料WEBマッチングサービス「シェアシマ」

食品原料WEBマッチングサービス「シェアシマ」

日本の食品ロス問題は根深く、平成30年6月発表の消費庁調査では国民1人当たりの食品ロス量は年間約51kgに相当する推計がある。SDGsの2030年までに達成する目標を意識し、食品ロス軽減に取り組んできたものの、新型コロナウイルスの影響で販路先を失ったことなどから食品ロスは急増してしまった。そこで農林水産省でも、この影響下で生まれた未利用食品について、新たな販路の確保やフードバンクへの寄附を通じた有効活用する取り組みを推進している。いまだ自粛ムードが継続する中で食品関連業者同士もしくは消費者をつなぐフードシェアリングサービスがますます必要となってきている。フードシェアリングサービスを行う9社をまとめ比較をした。

【シェアシマ】食品原料をマッチング

「シェアシマ」はICS-netが運営する食品原料Webマッチングサービス。食品原料を扱う食品メーカーと専門商社などをつなぐ。出品者には、「アドプランコース」と「ベーシックプランコース」が用意されている。

「アドプランコース」は、決済に既存の商流を利用するため、マッチングだけを目的としたコース。「ベーシックプランコース」は、年間出品登録料9万円(税別)が必要。10品以上の登録は1品あたり5000円 (税別)の追加料金。購入者と取引成立すると、販売価格の10%をシステム利用料として支払う料金体系。購入者は会員登録をすることで購入可能に。対象地域は全国。

<利用方法およびシステムを使う際の流れ>
出品者は会員登録をしたのち、商品情報と規格書を登録。購入者とメッセンジャーで直接やり取りし、サンプルなどを購入者に送付。購入者が品質を確認したのち、売買契約を行い支払い手続きとなる。

掲載商品>
掲載商品はカットした冷凍野菜10kg、乾燥味付大根葉、あまおうパウダー、グルテンフリー醤油一斗缶、クーベルチュール、ソーセージなど種類に限らず業務用食材を多数掲載。

<使いやすさ>
Webサイトは使いやすいと感じる。出品者が出品する際にどうすればよいか迷うようなことはなく、通販サイトなどを利用していれば直観的に利用できる。

<利点>
インターネット上での販路を持たず、情報の発信場所を模索している業者にとって便利なサービスといえる。出張を伴う営業の軽減や、シェアシマをプラットフォームにして購入者と直接契約するため価格を下げやすい。

【Ecobuy】購入者にアプリでポイント

「EcoBuy」はNTTドコモが運営する一般消費者向けの食品ロス削減サービス。賞味期限、消費期限が近い商品を購入することで、消費者にポイントが付与されるスマートフォンアプリだ。購入商品の期限が近付くと通知やレシピ提案なども行う。獲得したポイントは他者ポイントと交換も可能。2020年夏頃にサービス開始予定で現在全国の加盟店を開拓中。(EcoBuy 事業実施報告書から)

利用方法およびシステムを使う際の流れ>
小売店がEcoBuy対象となる商品をシステムへ登録(画像、ポイント数など)すると、消費者であるEcoBuy会員に情報が通知され、会員は登録店舗にて対象商品を購入できる。EcoBuy会員は購入した商品とレシートをアプリに読み込ませ、ポイントセンターへ送信。ポントセンサーが「ポイント還元申請」情報をもとにEcoBuy会員へポイントを付与される。

消費者にポイントが付与されるスマートフォンアプリ「EcoBuy」

利点>
現在小売店では期限間近の商品には、値引きシールを貼るなどの作業を行っている。廃棄となった商品の廃棄処理稼働時間も大きい。アプリを利用することで、シール貼りや廃棄にかかる作業時間の削減が見込める。また消費者はポイントを獲得することでお得感を感じながら食品ロスへの意識を変え、社会貢献をすることができるため、続けやすい内容。

【KURADASHI.jp】社会貢献もできるフードシェアリングサービス

クラダシが運営する「KURADASHI.jp」は社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム。賛同メーカーから通常廃棄されていた食品などをKUROADASHI.jpが買い取り、サイト利用者へ協賛価格で販売するフードシェアリングサービス。利用者への提供価格はKUROADASHI.jpが決定。売上げの一部を社会貢献団体へ寄付することで社会貢献も同時に行う。食品小売店、食品製造業、食品卸業などさまざまな業種が賛同している。

商品提供者は、登録料や手数料などの費用は不要。サイト利用者は無料の会員登録と、送料無料のプレミアム会員(月額550円税込み)がある。

社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI.jp」

利用方法およびシステムを使う際の流れ>
提供者は協賛企業として情報を登録し申し込みを行う。担当者から連絡があったのち、取引開始。提供準備が整えば当日からでも掲載開始される。

<掲載商品>
食品、飲料だけではなくコスメ、日用品など多岐にわたり取り扱う。また米類、調味料、スイーツ、ワインなどいった加工食品以外にも和牛切り落としといった精肉類や魚介類も扱う。

使いやすさ>
手数料がかからないため、面倒なコストの計算が必要なくシステムの流れがつかみやすい。購入者も、掲載商品を誰でも検索できることで提供商品のイメージもしやすい。

利点>
手数料なしに加え、廃棄作業時間やコストの削減、不良在庫の損益の軽減など経済的なメリットがある。商品廃棄によるブランドイメージ棄損を防ぎ、SDGsターゲット12の遵守などによるブランドイメージ向上が見込める。

【temite】ゲームのように課題をクリアするアプリ

Creation City Labが運営する「temite」は小売店や食品メーカーなどが掲載商品提供者となり、タスク(課題)を設定し、消費者がタスクをクリアすることでリワード(報酬)を獲得できるスマートフォンアプリだ。

参加ユーザーの協力により企業の困りごとを解決していく仕組み。初期費用は無料。掲載費用は、SNS投稿数×100円(税別)+temiteリワード(報酬)+送金手数料(実費)の成果報酬と進行管理費(総額の15%上限)。

<利用方法およびシステムを使う際の流れ>
企業は申し込み後、担当者と打ち合わせをしながら、タスクを設定。タスクにはレシート提出やSNS投稿、アンケートなど。タスク進捗管理やリワード進呈作業、キャンペーンに関する問い合わせなどはtemiteスタッフが行う。

消費者がタスクをクリアすることでリワード(報酬)を獲得できるアプリ「temite」

 
<掲載商品>
8月1日現在は調味料を掲載中。展開例としては、コーヒーや食パン、ケーキなどの食品が想定されている。

<使いやすさ>
アプリでは情報があふれていることで、少々使用方法を迷う。慣れるとすぐ使えるようになる。企業側もスタッフのサポートが期待できるため問題はなさそう。

<利点>
報酬型であるため、通常ではマッチングしない顧客を獲得するチャンスになることで、集客と同時に廃棄量の削減が見込める。SNS投稿を報酬とできることから、SNSでの宣伝もこのアプリで行うことが可能。

【TABETE】閉店間際に残ってしまった商品をフードシェアリング

コークッキングが運営する「TABETE」は予約客のキャンセルや来客数の減少、賞味期限間近などの理由で廃棄される可能性のある商品在庫を抱える飲食店や食品小売店と消費者をマッチングするフードシェアリングサービスプラットフォーム。

掲載企業は初期費用、導入費用、ランニングコストなどはなし。1食あたり手数料150円の完全報酬型。販売価格は250円から680円まで設定可能。

<利用方法およびシステムを使う際の流れ>
掲載企業は、登録したのち出品しレスキューチケットを発行し設定。TABETEユーザーは事前にクレジット決済となるため、店舗での現金のやり取りはなく、ユーザーがレスキューチケット画面を店舗に見せ、店舗側が「受け取る」をタップしてから商品を渡して完了。

フードシェアリングサービス「TABETE」

<掲載商品>
飲食店や小売店の閉店間際に残ってしまった商品。洋菓子や和菓子、パンなどがあった。

使いやすさ>
シンプルでわかりやすい。商品が残ってしまった時、すぐに登録できる手軽さがある。

<利点>
これまで廃棄するしかなかった余剰食品を売上げに還元することで、食品ロスの削減と新規顧客の獲得が見込める。事前クレジット決済で商品の受け渡しでの負担や掲載における運用の負担がない。

【Otameshi】社会貢献もできるECサイト

SynaBiz が運営する「Otameshi」はカゴメ、AGF、UCC、モランボン、アサヒグループ食品などの食品メーカー商品や日用品など幅広く品種を展開しているECサイトだ。

賞味期限、消費期限が近いものなど「まだ食べられる」「まだ使える」にも関わらず廃棄処分となってしまう商品をリーズナブルな価格で提供。日本赤十字社や認定NPO法人フローレンス、公益団体法人日本動物愛護協会など社会活動団体への支援、寄付も行う。手数料などは問い合わせに対して応じる。

<利用方法およびシステムを使う際の流れ>
一般的なショッピングサイトとの大きな違いはなく、出品者も消費者も利用はしやすい。商品ごとに寄付金額が提示されていることもわかりやすい。

廃棄処分となってしまう商品をリーズナブルな価格で提供する「Otameshi」

掲載商品>
食品では、缶コーヒーや野菜ジュース、ミネラルウオーターなどの飲料から、インスタント食品、調味料、缶詰、ジャムやシリアルなど長期保存に向くものが多い。コスメやティッシュ、キッチン雑貨などの日用品やペット用品も取り揃える。

<使いやすさ>
一般的なショッピングサイトと変わらないため、特別難しいものではない。フードシェアリングをしている意図的に意識する必要はなく、自然と社会貢献ができる形となっている。

<利点>
品数の多さや、大手メーカー食品が多いことで需要が幅広くあるところがよい。長期保存に向いている品が多く買いやすい。

【ロスゼロ】規格外の説明とともに食品をお届け

ビューティフルスマイルが運営する「ロスゼロ」は 賞味期限、消費期限、割れたクッキーなどの規格外食品、販路不足となり廃棄処分となりかねない余剰在庫の食品を買い取り、一般消費者や法人が購入できるフードシェアサービスプラットフォーム。

規格外食品には、新たな付加価値を加え新しい商品として販売。オフラインでは規格外食材を当該地域で消費できる食事会を開催。手数料などパートナーの費用は問い合わせに対して応じる。

<利用方法およびシステムを使う際の流れ>
食品メーカーから、賞味期限や消費期限の近いもの、規格外食品など廃棄されかねない食品在庫をロスゼロが買い取り、さらに規格外食品は付加価値を与え別の商品として販売。一般消費者や法人は会員登録したのち購入できる。

社会貢献に参加している意識も高めやすい「ロスゼロ」

<利点>
食品ロス、SDGsへの取組みなどの説明もよくわかり、社会貢献に参加している意識も高めやすい。商品ページにはなぜ規格外なのか丁寧に説明があり不安を払拭しており、消費者が買いやすいようになっている。

【No Food Loss】クーポン形式でお得な買い物が楽しめるアプリ

みなとくが運営する「No Food Loss」は賞味期限や消費期限の近いもの、また季節限定販売などで飲食可能な範囲にも関わらずやむなく廃棄処理される商品をクーポン形式で発行するスマートフォンアプリサービス。

消費者はアプリでクーポンを店舗で見せることで割引された価格で購入できる。また、食品ロス、過剰在庫などの買い取りも実施。社会活動団体への支援、寄付も行う。初期費用、月額料金、発行手数料はなし。販売できた場合に販売金額の20%を手数料とする。

<利用方法およびシステムを使う際の流れ>
事業者は会員登録後、専用アドレスの企業管理画面からログインし商品の登録や編集、またクーポンの管理を行う。出品商品の有効期限や割引タイプ、率、クーポン数、出品理由などを記入しクーポン発行するとアプリに反映される。

やむなく廃棄処理される商品をクーポン形式で発行するアプリ「No Food Loss」

<掲載商品>
コンビニエンスストア、飲食店、小売店などが登録し、テークアウト可能の商品を掲載中。

<使いやすさ>
シンプルなデザインで登録も操作は簡単。フードシェアリングによる食品ロス軽減の説明もわかりやすい。

<利点>
クーポンという既存するサービスを使用しているため、消費者が使用するにあたり理解しやすい。単にスマートフォン画面を見せるだけという消費者の行動が簡単であることもよい。

【Render】割引・特売・詰め放題ショッピングサービス

Renderが運営する割引・特売・詰め放題ショッピングサービス「Render」は食品の傷ものや規格落ち品、訳あり品など食べる分には問題のない商品を消費者に提供するフードシェアリングサービスのプラットフォームアプリ。

割引、特売、詰め放題などのリーズナブルな商品が並ぶ。設定した連打ゲームをトライすることで獲得できるゲーム性を取り入れた新しいショッピングシステム。月額費用、ランニングコストなし。出店登録料は個人で5000円、法人は2万5000円。販売手数料は売れた場合のみ10%。

<利用方法およびシステムを使う際の流れ>
生産者、事業者が会員登録したのち、出品もしくは直送。アプリにはリアルタイムで反映し、消費者はリーズナブルで購入ができる。連打ゲームに挑戦すると、結果次第でさらにお得に。

割引・特売・詰め放題ショッピングサービス「Render」

<掲載商品>
野菜や缶詰、スイーツ、飲料などの他、ストッキング、シャツなどの衣服もあり。

<使いやすさ>
斬新なシステムのため戸惑う人はいるかもしれないが、間違えるほどではない。

<利点>
ゲームを取り入れて楽しく買い物ができることや、連打ゲームという単純なゲームであることも誰でも参加できて良い。

食品ロスに取り組む企業は増加傾向

今回紹介した企業のほか「再販売・再資源化による食品リユー ス支援(神明MOTT)」「サンプル百貨店(オールアバウトライフマーケティング)」「【在庫ロス掲示板】コロナ経済対策(バトラ)」「農家と購入者をつなぐマッチング サービス 『ゴヒイキ』(Heart Full)」など、食品ロスに取り組む企業は増えている。活用を想定している業者やサービス、利用方法にはそれぞれ違いがあり、事業者にとって出品しやすい企業の選択肢は増えている。

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