日本人の主食の座を狙うオートミール コロナ禍で市場参入が加速

日清シスコの浅井雅司社長(右)と古薮啓介取締役営業本部長

日清シスコの浅井雅司社長(右)と古薮啓介取締役営業本部長

オートミール市場が拡大している。食生活にオートミールを取り入れる人は一部で存在していたが、一般化するまでには至っていなかった。市場拡大の契機となったのは、新型コロナウイルス感染症の拡大だ。

健康価値や汎用性の高さが評価

コロナ禍で巣ごもり生活が続く中、新しい食品に挑戦する動きが活発化。さらに、感染に対する不安や運動不足から健康志向が高まったことから、オートミールが持つ簡便性・保存性に加え、豊富な食物繊維を含み、低GIであることなどの健康価値、さらに、ご飯への置き換えやおかずからスイーツまで活用できる汎用(はんよう)性の高さが評価され人気が高まっている。

グラノラブームから約10年弱、コロナ禍に伴う在宅時間の増加や健康への意識の高まりで、シリアルの「おいしさ」「簡便」「保存性」「栄養バランス」が評価され、シリアルの需要は活発化している。グラノラブームの時は「第3の朝食」として、朝食の中の3番手に甘んじていたシリアルだが、2021年以降「オートミール」が脚光を浴びたことで、夕食を含めた「主食」の一端を担う可能性がでてきた。

日本のオートミールの歴史は日本食品製造が1929年に北海道産の燕麦(オーツ麦)を原料に製造を開始したことが始まりとなる。その後、雪印乳業(当時)が米国クエーカーオーツカンパニー社と業務提携し「クエーカーオートミール」を販売していた。オートミール人気の高まりを受け、大手シリアルメーカーが相次いで市場に参入している。

日本ケロッグは、4月1日に「ケロッグ オートミール」を発売した。日本食糧新聞の取材に井上ゆかり社長は、従来のパンからのスイッチに加え、米食からオートミールへのスイッチを提案することで、シリアル市場全体の活性化につなげる考えを示している。市場参入に当たっては「これまで、オートミール市場を大切に育ててこられた方々の努力を傷つけてはならない」と述べ、共存共栄の考えで日本におけるオートミール市場を確立し、1人当たりの年間消費量が数百gレベルのシリアルを1㎏の大台に乗せることを目指す。

ホットで食べる需要に着目

日清シスコは9月27日、「日清シスコのホットシリアル」シリーズとして、味付きの「おいしいオートミール トマトクリームリゾット風」「同チーズクリームリゾット風」およびフレークタイプの「同オートミールフレーク」、スタンダードな「おいしいオートミール」の4品を発売し、市場に参入する。

浅井雅司社長は、日本食糧新聞の取材に、「オートミール」は、コメ、パンに続く第3の主食の一端を担うポテンシャルがあるとした上で、「2024年までにオートミール市場規模を現在の約45億円から100億円規模まで拡大させることでシリアル全体の総需要を拡大したい」との考えを示した。

また、古薮啓介取締役営業本部長は、オートミールは市場が急速に拡大する一方で、自社調査で、どうやって食べるのか、おいしいのか、続ける自信がないなどの声があり、日常生活に取り入れ、続けていく上での課題の存在を指摘した上で、「トライアル、リピートのしやすさを考え、計4品を全て同一価格(希望小売価格330円・税別)で発売し、この課題解決を後押しする」との狙いを明らかにした。

「日清シスコのホットシリアル」は、シリアル市場に潜在的にあるホットで食べる需要に着目して開発されたシリーズ。今後、オートミール商品を含むさまざまなシリアルを「日清シスコのホットシリアル」として展開し、「冷たいシリアル」に加え、「ホットシリアル」の定着を促すことで、総需要を拡大する。

市場未参入のカルビーは

大手シリアルメーカーでオートミール市場に現時点で参入していないのはカルビーだけとなった。3月に開催した「新シリアル中期戦略」発表会で伊藤秀二社長は、「オートミール」市場への参入について、従来の「オートミール」での参入はないと語った上で、グラノーラを改良した「フルグラ」が日本消費者に広く受け入れられたように「オーツ麦」の加工方法の研究開発を進めた結果、日本人に合った「オートミール」のようなものが商品化される可能性はあるとの考えを示した。

資本提携するペプシコ社の傘下であるクエーカーオーツ社との連携については、スナック菓子と同様にペプシコ社とは競争分野と連携分野が両立しており、現状オートミールでの連携はないと述べている。

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