料理マスターズ特集2023

◆料理マスターズ特集:第14回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」 金・銀・銅賞に13人

表彰 特集 外食 2023.12.01 12685号 10面
前列左から〈ゴールド賞〉奥田政行氏、松尾英明氏、〈シルバー賞〉飯塚隆太氏、高橋拓児氏、西野正巳氏後列左から〈ブロンズ賞〉川副藍氏、木村英明氏、菰田欣也氏、滝本将博氏、田邉真宏氏、豊島雅也氏、中土征爾氏、村山優輔氏

前列左から〈ゴールド賞〉奥田政行氏、松尾英明氏、〈シルバー賞〉飯塚隆太氏、高橋拓児氏、西野正巳氏後列左から〈ブロンズ賞〉川副藍氏、木村英明氏、菰田欣也氏、滝本将博氏、田邉真宏氏、豊島雅也氏、中土征爾氏、村山優輔氏

鈴木憲和農林水産副大臣から奥田政行氏に授与証が手渡される

鈴木憲和農林水産副大臣から奥田政行氏に授与証が手渡される

鈴木憲和農林水産副大臣

鈴木憲和農林水産副大臣

榊原英資インド経済研究所理事長

榊原英資インド経済研究所理事長

高橋喜幸料理マスターズ倶楽部事務局長

高橋喜幸料理マスターズ倶楽部事務局長

五十嵐麻衣子農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課課長

五十嵐麻衣子農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課課長

コロナ禍の制限も緩和されにぎわう交流会会場

コロナ禍の制限も緩和されにぎわう交流会会場

 ◆官民一体で盛り上げる 地域食文化を誇りに

 日本食文化の担い手である料理人を顕彰する「料理マスターズ」。料理を通じて、地域の「食」や「食文化」の素晴らしさ、奥深さを日々実感し、その魅力に誇りを持つことを目的に、農林水産省が2010年に創設した制度だ。これを「料理マスターズ倶楽部」が、官民一体となって盛り上げる活動を繰り広げ、料理人と1次生産者を結び付けるとともに、食品産業や食を取り巻く分野の企業と連携し、地域活性化や日本の食文化発展への貢献を目指している。11月13日、帝国ホテル東京で鈴木憲和農林水産副大臣らを招き、第14回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」授与式が盛大に開催された。

 今回、「ブロンズ賞」「シルバー賞」に、3回目の「ゴールド賞」も加わり、合計13人が選出された。この制度はステップアップしていく点に特徴があり、年間最大8人が受賞するブロンズ賞に続き、受賞後5年以上経た人を対象に最大5人のシルバー賞、さらに5年以上経過した後、最大3人のゴールド賞が授与される継続性のある取組みを評価する設計となっている。今回、ゴールド賞2人と、シルバー賞3人、ブロンズ賞8人が受賞した。授与式終了後、料理マスターズ倶楽部主催の交流会も行われ、参加した料理人や協賛企業、生産者らが情報交換し親交を深めた。(佐藤路登世)

 ●農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」審査委員

 ▽委員長=榊原英資(一般財団法人インド経済研究所理事長)

 ▽委員=青木紀美江(青木農園代表取締役)、音羽和紀(オトワレストランオーナーシェフ)、門上武司(あまから手帖編集顧問)、小山薫堂(放送作家)、重田秀豪(インサイト)、曽根清子(料理通信社「料理通信」編集長)、辻芳樹(学校法人辻料理学館理事長・辻調理師専門学校校長)、中東久雄(草喰なかひがし代表取締役社長)、西川恵(毎日新聞社客員編集委員)、服部幸應(学校法人服部学園理事長・服部栄養専門学校校長)

 ※委員は五十音順(敬称略)

 ●主催者あいさつ

 鈴木憲和農林水産副大臣 世界の人々を魅了

 「料理マスターズ」は、地域の食材や食文化のすばらしさや奥深さ、その魅力に誇りとこだわりを持ち続け、料理を通して地産地消や日本の食文化の普及に尽力されてきた料理人の皆様を顕彰する制度です。

 今年度は、ゴールド賞2人、シルバー賞3人、ブロンズ賞8人の合計13人の方々が受賞されました。これまでの努力と熱意に深く敬意を表しますとともに、長年にわたる地産地消や食文化の普及取り組みに感謝の意を表します。

 中でも今回、ゴールド賞を受賞された奥田政行シェフは、生産者と連携し、地域の農産物を生かしたイタリアンを提供し、地域活性化に貢献してこられました。また、松尾英明シェフは、生産者や産地など食材を取り巻く問題の意識を高めるため、自ら大学院で学び、大学や自治体と協働した食材の持続可能性を意識した活動を継続されています。こうした取り組みは後進の模範となり、日本の食文化発展に大いに寄与することは間違いありません。

 昨今、世界的な食料安全保障上のリスクの高まりや、気候変動に伴う原材料価格の高騰、働き手の確保など、外食産業は引き続き厳しい環境にはありますが、その一方で新型コロナウイルス感染拡大の収束とともに、訪日外国人旅行客の数は、急速に回復してきております。その一方で料理人の皆様は、地域の食材や食文化の普及・発展のため、努力を積み重ね、世界トップクラスの料理を生み出し、人々を魅了していると言っても過言ではありません。

 私事ですが、ニューヨークを訪れた際、日本産の食材を使った料理を提供するわが国料理人の努力に、深い感銘を覚えるとともに、こうした料理を高い対価を払って味わう現地の方の姿を目の当たりにし、大いに自信を得ることができました。

 近年、日本人は世界の中で自信を失う局面がありましたが、これからは食で勝つ時代が到来するのではないでしょうか。日本の食文化が世界でますます輝くよう、今後もご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

 ●審査委員長あいさつ

 榊原英資インド経済研究所理事長 日本の料理、海外で注目

 フランスには「農事功労章」という顕彰制度があり、農業関係者とともに料理人も対象で、しかも国内はもとより外国人のフレンチ料理人も受章資格があり、現に日本人シェフで受章している人もいます。

 農林水産省と料理というと、今までの感覚では「なぜ」と思いがちですが、農林水産物の消費は圧倒的に食べることによってなされ、同省が生産だけでなく消費にまで視野を広げれば、当然料理や料理人も業務範囲に入ります。

 従来日本では料理といえば、食品衛生などの観点から厚生労働省、学校給食や食育の関連から文部科学省が関わることが多かったのですが、食材を所管とする農林水産省が主に業務を担当することは、むしろ当然のことです。今まで農林水産省の関心が、もっぱら生産者に向かっていたことは、歴史的経緯からやむを得なかったことかもしれませんが、成熟先進国となった日本で農林水産省の視野が消費者まで、料理と料理人まで広がることは自然の成り行きでしょう。

 この意味で料理人顕彰制度は日本にとって誠に意義深いことと思われます。今、日本料理、あるいは日本の料理人は、世界的に注目されています。13年12月には和食が日本人の伝統的食文化として、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本料理や日本の食材のすばらしさが、世界的に認められるようになってきたのです。「森と水」の国、日本は世界有数の環境大国です。森、河川、海、日本ほど海産物の数と多様性は世界一とされています。

 当然、自然と食材に恵まれた日本の料理は、日本料理だけでなく、フランス料理もイタリア料理も大変質の高いものになっています。どんなジャンルでもおいしい、ということが日本の料理の特徴といえます。優れた料理人を表彰することで、日本の食生活はますます磨きがかかり、充実していくことは間違いありません。

 ◆料理マスターズ倶楽部主催 交流会

 ●主催者あいさつ

 高橋喜幸料理マスターズ倶楽部事務局長 38都道府県に受賞者

 料理マスターズは今年で14回目を迎え、3回目のゴールド賞が誕生し、受賞者は38都道府県の105人に上ります。質の高い日本の食材を追求し、超一流の技術により、食材の魅力を生かした料理を提供される方々ばかりで、食材生産者をはじめ地域の方々と協業し、地域の魅力向上に向けて励んでおられます。

 この制度はステップアップに特徴があり、年間最大8人が受賞するブロンズ賞、その後5年を経た人を対象に最大5人のシルバー賞、さらにその後5年以上経過した人を対象にした、最大3人のゴールド賞が授与されます。

 制度の趣旨に賛同いただいた民間企業と受賞者で構成される「料理マスターズ倶楽部」は、民間の立場で制度を支援し、官民一体となって盛り上げる活動を展開しています。同時に新たな人材・知恵を、食品産業をはじめ日本の民間企業の活動に生かすことをお手伝いし、日本の食文化の普及や発展への貢献を望んでおります。

 本倶楽部では、受賞者の方々による第1次産業と食べ手・消費者を結ぶ活動を広く知っていただく機会を設けており、次のような活動を定期的に行ってきております。

 特徴を生かした独自イベントとして、プロの料理人の目で地方の加工食品を評価・認定する「料理マスターズブランド認定プロジェクト」を大阪で開催するほか、生産者や料理人の協力でシンポジウムや、料理人と生産者の思いを伝える食イベント「シェフズキッチン」、料理マスターズの店と関係する生産者を訪ねる「ガストロノミ&アグリツアー」という旅行を企画、実施しています。さらに、食を通じた地域活性化を目指す自治体を対象に、相談に乗ってアドバイスするスポットコンサルティングも始めました。

 こうした活動を通じて、日本の食文化の普及、発展に貢献できれば、望外の喜びです。今後も、ご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 ●来賓あいさつ

 五十嵐麻衣子農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課課長 地域との強い結び付き敬意

 高齢化や共働きの進展により、食の外部化が進み、外食は人々が安心して社会生活を送る上で欠かすことのできない産業で、インフラの一部と言っても過言ではありません。

 お店に足を運び、一人で、あるいは親しい人と、時にお店の方々と語り合いながら、料理人の技術と心がこもった食とサービスの提供を受ける体験は、とても豊かでかけがえのないものです。

 受賞者の皆さまは、地域の生産者や自治体等との交流を通じて、各地の魅力あふれる食を発信し、農林水産業の活性化や食文化、食品産業の発展に貢献をしてくださっていることに、改めて感謝申し上げます。

 「料理マスターズ」の狙いの一つは、日本各地の食材の魅力を発見し、それを料理の形で人々に伝える、料理人の努力を応援していくことだと考えております。

 新型コロナによって、飲食業界は多大な影響を受けました。皆様も、程度の差はあれ影響を受けられたことと思います。その中でも、地域との結び付きをより一層強くし、地域の食材の普及や食文化の発展のため並々ならぬ努力を積み重ねてこられたことに、改めて敬意を表します。

 料理人の皆さまは、その感性やアイデア、技術をもって、地域の食材や食文化の魅力、生産者や食品製造事業者のこだわり等を人々に伝えてくださる存在でもあります。

 今後とも、「料理マスターズ」を受賞された皆さまが日本の食と農をつなぐ懸け橋としてご活躍いただけるよう心より期待しております。

 日本の食材と食文化を繋ぐ取組みを通じて、後進料理人の道標となってくださいますようお願い申し上げます。

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