炒飯の素特集
◆炒飯の素特集:ご飯食急増を下支え メニュー・形態が進化
炒飯(チャーハン)の素は常温保存でき、手軽で経済的な粉末・液体調味料として根強い需要を誇る。前期末からの新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ内食、ご飯食の急増に応じて社会の急変を下支え。夏の最盛期を前に反動減も見え始めてきた。コロナ共存の外食自粛、節約志向の内食増の今期も引き続き、簡単・時短でメニュー、食生活を豊かにする真価を発揮したい。(吉岡勇樹)
炒飯の素市場は19年度、前年比約2%増の73億円で着地したとみられる。一昨年に競合する冷凍市場で味の素冷凍食品の「ザ★チャーハン」など、ヒット商品が相次ぎ需要シフト。大幅減を余儀なくされたが、以後2年連続で拡大し回復している。
家庭内調理の減少とともに市場は長く漸減傾向にあった。特に冷凍が増大して19年度も同3%増の285億円と再成長。ドライの本市場とともにコロナ対策の内食増が追い風になった。
炒飯はご飯と野菜、肉などの食材を炒め合わせて具材豊富、栄養バランスを高めれば完全食になる。素材を選ばずに冷蔵庫の余り物を一掃。子どもも喜ぶ簡単ワンプレートレシピとしてのメニュー力は高い。売場に多いロングセラーブランドの安心感も社会不安の高まりに対応。2月末の政府の休校要請から一気に需要が高まった。
内食比率は2桁増で推移し、特に昼食率が大幅増。乾麺、カレーとともに昼食向きの炒飯も食卓への登場頻度が増えた。トップブランドである永谷園の「チャーハンの素」はもちろん、2番手江崎グリコの炒飯の素、パイオニアのあみ印食品工業も売上げを伸ばした。人気の永谷園「にんにくチャーハンの素」、キッコーマン食品の「デルモンテ洋ごはん」も急伸し、メニューと形態進化のトレンドを明示した。
「にんにく」はもともと炒飯の具材として好相性が知られる。町中華ブームも手伝って「ザ★チャーハン」の定着で顕在化。特に自ら炒める炒飯の素でこそ、食欲をそそる香りが最大限に楽しめる。永谷園は発売3年で売れ筋商品に育てた。
「洋ごはん」はコロナ禍のヒット商品として注目された「うちのごはん」の混ぜご飯の素と同設計。レトルト具材とご飯を混ぜるだけの簡便性、おいしさが徐々に浸透した。時短のアイデア商材として支持され、定番の「チキンライス」が単品売上げ10位内にランクイン。弁当用途も見込めて市場の可能性を広げている。
特需が集中した定番品は市場・家庭内在庫が十二分に行きわたった。6月からは一部減収も見られ始めた。コロナ共存の外食自粛、自衛やリモートワークによる内食増は今後も続き、炒飯の素もまだ例年以上に活躍できる。メニューそのものとアレンジレシピの魅力向上、簡単調理と炒めて香り立つ機能性を追求し、ユーザーの若返りと市場継続を果たしたい。
永谷園は人気のパックご飯を、レンジアップなしにパラパラ炒飯にするレシピ紹介を積極化。節約志向で深まる内食志向にホットプレート、炊飯器を使った「おうちごはん」メニューを開発し、使用拡大を促す。新商品はあみ印食品工業が8月から「カレー」「麻辣」2品を発売。ともに炒めてスパイスが香る炒飯向きの商品力を伝える。