アポなし!新業態チェック(187)「モッシュグラブアンドゴー」広尾

2023.03.06 529号 11面

 ●モス、都内にチーズバーガー新業態 バーガー3品、キャッシュレス少人数で運営の小型店

 昨年11月、モスフードサービスが新業態のチーズバーガー専門店「モッシュグラブアンドゴー(mosh Grab’n Go)」を東京・広尾に出店した。同社がチーズバーガーの専門店を手掛けるのは初めてだが、メニューのアイテム数を絞り込み、セルフ方式のキャッシュレス会計を導入。少人数で運営できる小型店を開発した。

 同店のメニューはシンプルだ。メインのチーズバーガーは3種類。パティはダブルが標準で、シングルのものは「ジュニア」と呼ぶ。単品では、チェダーとモッツァレラの「2種のチーズ」(600円/ジュニア450円)、チェダー、エメンタール、ゴーダの3種類にホワイトソースを混ぜ込んだ「ふわとろチーズ」(800円/同650円)、チェダーとモッツァレラ、カマンベール、ゴルゴンゾーラの4種類を使った「クワトロチーズ」(900円/同750円)の3アイテム。もちろんポテトやドリンクのセットもある。「ポテト」(単品250円)は経時劣化を防ぐためフライではなくオーブンで焼き上げており、バンズは同ブランド専用に開発したものだ。チーズ抜きのバーガーも用意されている。

 ドリンク類は、コーヒーやジュース類などに加えて「グリーンスムージー」(550円)とデザート感覚の「チーズケーキスムージー」(600円)、イートインのみだがクラフトビールもある。

 同社では、「モスバーガー」業態では出店が難しい都心部などのエリアで出店可能な新ブランドとして位置付けている。

 (価格はすべて税込み)

 ★けんじの評価:高単価バーガー、多店舗化を狙えるか

 1月の終わり頃、同店に臨店して感じたのは「何が狙いなのだろう?」という疑問だった。

 同社はこれまでにも何度か高単価なハンバーガー業態を出店している。「モスプレミアム」のように現在でも続いているブランドはあるが、その店舗数は2店舗。多店舗化に成功しているわけではない。同店が出店した立地は、全国平均に比べれば賃料がかなり高額だとは思うが、エリア(商圏)内では駅の裏側にある細い道路の一角だ。たとえば丸の内や八重洲の表通りで成立するような業態なら新立地の開拓といえるかもしれないが、そこまでの立地ではないだろう。店舗の造作にはセンスのよさが感じられるが、家具などはかなり質素なもので高単価なメニューに相応しい意匠かどうかも微妙だ。

 いったい、この店がチェーン化できるという勝算はどこにあるのだろう。

 また、同店の公式サイトはSNSのLINE内にしか存在しないようだ(筆者が検索した限りでは見つからなかった)。LINE内のサイトはモバイルオーダー用のものなので、店舗の営業時間外には何の情報も表示されない。同社の公式リリースには「次の50年へ新業態に挑戦」とある。そんな「新業態」なのにブランドの公式サイトもないのだろうか。このブランドを大々的に売り出そうという意気込みもいまひとつ伝わってこない。

 メニューに関しては、各バーガーの調理法を少し変えるなど工夫を凝らしていてモスらしいおいしさを提供していると思う。だが、いろいろと疑問の残る臨店だった。

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「モッシュグラブアンドゴー」広尾

 開業=2022年11月18日/所在地=東京都港区南麻布5-16-10

 編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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