年間3兆円マーケットのシーフード 海外120カ国、市場の3分の1を依存
総務庁統計局がまとめた「平成3年度家計調査年報」によると、日本人の生鮮魚介類に対する一世帯(三・五七人)当たりの年間消費量は約四七・五㎏で、消費金額は八万一〇〇〇円だという。
これは昭和44年および51、52年時の六〇㎏強に対し、約二一%もの消費ダウンで、年間推移ではゆるやかな下降カーブを描いてきているという。つまり、日本の家庭から“魚離れ”現象が起っているというのであるが、街中のシーフードレストランや活魚料理店では連日の賑わいぶりで、生鮮魚介類に対する食ニーズは強い。
しかも、年々高級志向が高まってきており、とくにマグロ、ウニ、エビ、カニなど高価格魚介類の需要が拡大してきている。家庭ではサカナは食べないが、街のレストラン、料理店では食べる。不可解な現象であるが、この背景には①生活の洋風化②世代交代による魚に対する知識不足(調理技術をもたない)③家族も少なく、調理がめんどうくさい④子供が魚より肉を食べる⑤値段が高く、家計の負担になる‐‐といった事情がある。
事実、データは少し古くなるが、昭和60年7月に農林水産省が調査した「食料消費の動向について」によると、生鮮魚介類の消費量が減少した理由は、「家族が年をとったため、また家族数が減ったため」二九・六%、「好みに合わなくなったため(家族が嫌いなため)」二七・二%、「値段が高くなったため(割高になったため)」一六・〇%、「調理がめんどうになったため」七・四%などといった調査結果を出している。
一方、同調査では消費量が増加したケースの理由についても回答をまとめているのであるが、この分野についてはまず、「健康によいため」が三五・四%とトップに、前記の回答とは逆に「子供が成長したため、または家族が増えたため」二〇・六%、「おいしいため(家族が好きなため)」二〇・二%、「いろいろなものをバランスよく食べるようになったため」一四・七%……という内容を報告している。
シーフードがヘルシーというイメージはすでに大きく浸透している。このイメージはアメリカの消費者およびレストランビジネスからもたらされてきたものであるが、日本でも健康志向や食のファッション化、あるいはグルメ志向に伴って、生鮮魚介類がより意識的に食されるようになってきたのである。
「シーフードレストラン」と呼称する“新業態”が登場してきているのは、こういった背景からであるが、例えカタカナやヨコ文字のシーフードレストランであっても、和食ネーミングの活魚料理や磯料理であっても、その本質は生鮮魚介類を食材にするという点においては、何ら変りはない。