厨房のウラ側チェック(10) 平成3年度食中毒の発生状況
厚生省食品保健課から平成3年度の食中毒発生状況が発表されましたので、その概要を活用し、今後の事業活動に役立てて下さい。平成3年度の食中毒発生事件数は七八二件、患者数三九七四五人、死者数は六人でした。前年と比較すると事件数で一四四件、一五・六%の減、患者数で二一八四人、五・八%の増、死者数で一人、二〇%の増に。
しかし、例年と比較して事件数は顕著に減少しているが、一事件当たりの患者数は大幅に増加して五〇人台となってきました。これは、昭和63年度の事件数七二四件、患者数四一四三九人の五七人台に次ぐものであり、また、前年の四〇人台より一事件当たり一〇人増となっています。
次に、都道府県別発生状況等の各論的に見てみますと、事件数では、大阪府六一件、東京都六〇件、神奈川県四八件、兵庫県四四件、新潟県三五件がワースト5です。患者数では、大阪府三〇一一人、静岡県三〇〇〇人、広島県二九八三人、千葉県二七八四人、神奈川県二五〇七人がワースト5です。月別発生状況では、7月から10月までの四ヵ月間に多発しており、年間の発生件数の六六・四%を占めました。その内、細菌性食中毒は7月から9月に集中発生し、植物性自然毒は10月に集中、動物性自然毒によるものは年間を通じて散発的に発生しています。病因物質別発生状況、いわゆる食中毒の原因のことで、毎年同様件数では、ナンバーワンは腸炎ビブリオ、次いで、サルモネラ菌属、ブドウ球菌、植物性自然毒の順に多かった。患者数から見たナンバーワンはサルモネラ菌属、次いで腸炎ビブリオ、病原大腸菌(下痢原性大腸菌)、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、セレウス菌の順になっています。
大規模食中毒の原因では、例年のサルモネラ菌属や下痢原性大腸菌の他に、ウェルシュ菌やセレウス菌によるものも発生しています。死者は細菌性食中毒で一人、動物性食中毒三人、植物性食中毒二人の計六人でしたが、細菌性食中毒における死者は、腸炎ビブリオによるものでした。この食中毒は、福岡県田川市の飲食店で発生した食中毒です。原因食品は韓国産のタイラギ貝のさしみと推定されており、患者の便から腸炎ビブリオを検出しました。腸炎ビブリオで死者を出したのは近年では二人目ですので、今後、同菌における食中毒は注意を要します。各企業は安易な対処をしないように、全従事者に徹底して下さい。
平成3年の食中毒事件数七八二件の内、原因施設を究明できたのは七一八件で全体の九一・八%になっております。判明した施設のワースト3は、飲食店二九八件で四一・五%、次に旅館一二九件で一八・〇%、家庭八八件で一二・三%の順になっています。また、患者数から見たワースト3は、学校一〇九六五人で二七・九%、飲食店八九七二人で二二・九%、旅館七六二六人で一九・四%の順でした。原因食品が判明した中では、その他の食品、魚介類、複合調理食品の順に多かった。以上、平成3年度の食中毒発生状況を飲食業において注意事項をまとめてみますと、病因物質で注事しなくてはならない順位は、事件数から腸炎ビブリオ、サルモネラ、ブドウ球菌、セレウス菌、ウェルシュ菌、下痢原性大腸菌のワースト6です。月別では6月から10月にかけて多いが、ウェルシュ菌の事件は3月から5月にかけて多く発生しています。いずれにしろ、病因物質の細菌六種についての菌の分布、潜伏期間、症状、予防のポイントを守り、前回の掃除を実行して細菌のいない、きれいな店舗作りをして下さい。
食品衛生コンサルタント
藤 洋