シーフード・ビジネス最前線 「かに道楽」カニにこだわって30年、全国に50店

1992.08.17 10号 15面

屋号のとおり、徹底してカニにこだわっている。大阪道頓堀の本店の動くカニの看板は、大阪の観光スポットとなっているくらい有名であるが、今年1月、この名物の看板が店から消えて、その跡に「JR東海CM出演中」の横断幕が掲げられてマスコミを賑わせた。

JR東海が新幹線利用の旅のキャンペーンのため、この一大名物の看板をレンタルしてしまったのである。

それはともかくとして、かに道楽は昭和35年の創業以来、カニ料理にこだわって、独自の経営ノウハウを確立して、着実に店舗を増やしてきた。創業の大阪かに道楽を中心にして、東京、名古屋、京都、札幌と支店(地域本店)を拡大し、全国に四九店舗、この8月末には五〇店舗目を大阪に出店する。

平成3年度の売上げ二四〇億円、従業員数三〇〇〇人強と、外食ビジネスの世界でもビッグな企業として、その存在を広く知られている。日経流通新聞が毎年実施している「飲食業調査」でも、売上高ランキングが六四位の地位にあり、外食企業としての業績を拡大してきている。

消費者ニーズに対応して新鮮な素材を使って、売れるメニューをラインアップし、一店一店の店舗運営を確実にしていく。当たり前のことであるが、この原則をおろそかにしていないからこそ、店舗も増え売上げも向上しているのである。

かに道楽のメニューといえば、カニすき、カニナベ、カニ会席などがよく知られているが、基本はすべて日本人の味覚にフィットさせた、みそ、しょうゆといった伝統の味付け。もちろん、メニューによっては、若い人たちにフィットさせたオイル、バターなど洋風の味付けもある。

グランドメニューは四〇種。すべてカニにこだわったメニューである。カニスキ、カニナベなど看板メニューであれば、価格は一人前四〇〇〇~五〇〇〇円の範囲内で、野菜など材料も豊富なのでボリュームにおいても十分に満足できる。

客単価はアルコールを含めて昼五〇〇〇円、夜一万円で、リッチな内容のカニ料理が食べられるとすれば、妥当なプライスゾーンといえる。

客層は法人二割、サラリーマン(OL)四割、カップル、ファミリー客四割といった比率で、老若男女全客層を集客しているといえる。メニュー構成に加えて、客席数も大きいので、多様な客層を吸引することが可能になるわけであるが、かに道楽の場合は自社ビル店舗で四〇〇席、テナント出店で二〇〇席という店舗スケールであるので、カップルからグループ客まで多様な飲食ニーズに対応できている。

しかし、出店コストが年々上昇してきているので、今後の出店戦略としては、一〇〇席前後のスケールダウンした店舗の出店も検討するとしている。

また、企業全体の考え方としては、西暦二〇〇〇年までに年商五〇〇億円に引き上げ、店舗も六〇~七〇店舗の体制へ拡大し、さらにスケールメリットを追求していく方針としている。

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