地域ルポ 神田駅東口・南口周辺 居酒屋中心に雑多な飲食店が出店
JR神田駅は一日平均約二六万人、地下鉄銀座線同六万五〇〇〇人の乗降者がある。相互乗り入れもあるので、単純に足して三二万五〇〇〇人とはいかないが、一日平均三〇万人前後はあるようだ(JR神田駅)。乗降者のほとんどは、地域のオフィスワーカーや店舗従業員、来街者などだ。JR神田駅東口および南口周辺。中央通りから東京方向、新幹線の高架に沿って商店街「神田駅前商店会」(神田ふれあい通り)が展開しており、飲食を中心に大小の店舗が林立する。喫茶、居酒屋、ラーメン、丼物チェーンなど。裏通りからハズれれば、小粋な雰囲気の和食、日本料理の店も点在する。昼はランチや喫茶、夜はアルコール客で賑わうということだが、ビジネス街であるので、土・日は会社が休みになり、来街者が激減するので、休業する店も多い。
駅東口を出てガード下からUターンする形で、東京駅方向(南側)へアプローチする。
中央通りと結節する横断歩道。頭上に「神田駅前商店会」(神田ふれあい通り)の看板がかかっている。
東北・上越新幹線の高架に沿った南北二〇〇mほどの商店街で、高架下や高架沿いの雑居ビル一、二階や地下一階に飲食、物販、金融などの店舗が出店する。
しかし、目につくのは居酒屋や喫茶、ラーメン、すし、丼物などの飲食店舗がほとんどだ。
この商店街はカラー舗装されているのだが、車も通るので、朝夕は人と車の流れで雑然とした状況を呈する。
この通りの人の流れは、朝は駅東口および南口から日本橋や室町方面へ。夕方は逆の流れになる。通勤、退社のオフィスワーカーなど中央通りに劣らぬ人の流れがあるので、これらビル住人を狙って多くの飲食店舗が出店しているわけだ。
旬三昧・日本料理「うるわし」(03・3257・0257)。かつてこの場所には同名のクラブがあって、バブル経済崩壊までは賑わっていた。
それをスクラップ&ビルドしてこの自社ビル(地下一階)出店で、九一年6月オープン。経営は銀座、新橋、赤坂などに大型居酒屋「番屋」を展開する宅新開発(株)(本社/東京・千代田区鍛冶町)。
店舗面積六二坪、客席六五席。意外な場所に高級感のあるシックな日本料理店という存在だが、地域の法人利用や管理職クラスの会食を意図しての出店だ。
このため、客席は、座敷、個室対応のテーブル席など、小人数から多人数利用までのフロア構成となっている。もちろん、店のホスピタリティも形態に即してハイグレードのものだ。
これは着物姿が決まった女将の長倉妙子さんをはじめ若い女性たちが、ソフトな物腰で対応する。
料理は一品料理がホタテバター焼き八五〇円、サケ祐庵焼き、合鴨みそ焼き、ハゼあら揚げ各七五〇円、タイのかぶと煮一二〇〇円、マグロ赤身刺し一三〇〇円、刺身盛り合わせ三〇〇〇円など。
会席コースでは、旬彩八〇〇〇円、旬三昧一万円、旬づくし一万二〇〇〇円など。ふぐ料理、寄せ鍋(九〇〇〇~一万五〇〇〇円)もあるが、これは10月~3月までの季節メニュー。
ランチメニュー(午前11時~午後2時)も提供している。タイ丼一八〇〇円、うるわし御膳二二〇〇円、天ぷら御膳二三〇〇円、旬御膳三〇〇〇円の四種。
客単価昼二七〇〇円、夜一万円。月商八〇〇万円。売上げは以前は一〇〇〇万円を出たが、バブルがハジけて夜の客単価が大きくダウン。それでも収益は十分に確保している(宅新開発(株)常務取締役北尾晄三氏)。
夜の営業は午後4時~10時、土・日・祝日は休み。
天丼チェーン「てんや」(03・5296・0664)。新幹線高架下、九四年9月オープン。店舗面積二五坪、客席数三四席。
月商八〇〇万円。このところイートイン(天丼+みそ汁四九〇円)が減少してきた。売上げキープのためテークアウトを伸ばしていく考え。持ち帰り天丼(弁当)四六〇円。一日五〇~六〇食は出るが一〇〇食くらいは出したい。
客層は平日がサラリーマン、OLなど、土・日は工事関係者の人や地域来街のヤング層。平日午前11時~午後10時、土・日は9時まで。
新幹線高架下。キリンビールの子会社((株)キリンアクト)が九〇年からチェーン展開を開始した、朝・昼喫茶・スナック、夜ビア・ショットバーの“二毛作経営”のGIRAFFE(ジラフ)。四年前の出店(直営)。
一階二〇坪、四〇席、二階二〇坪、五〇席、サントリー系列の「プロント」と似た運営形態にあり、朝・昼7時30分~5時までがセルフサービスの喫茶(コーヒー一五〇円)とサンドイッチやデニッシュパンの提供。夜は5時30分から9時までがビアタイム、9時から11時までがバータイム。
バータイムは照明をおとし、BGMをスウイングやピアノジャズに変えるなど店の雰囲気をシックに変身させる。
客層は二〇~三〇代のサラリーマンやOL、カップルが主体。客単価、朝・昼二五〇円、夜一八〇〇円。
店の利用は大半が常連客だが、客足は土・日は平日の三、四割にダウンする。以前は月商一〇〇〇万円の水準を維持していたが、通りを挾んで向かい側にプロントが一年前に進出してきたので競合状態になり、売上げが一、二割ダウンしている。
このため、客数、客単価アップのための秘策を練っている。
プロント神田店(FC=03・3254・8202)。六階建てビル角地。昨年3月末オープン。証券会社に代わって、一、二階に出店。店舗面積一二〇坪、客席数二〇〇席の大型店。客単価昼三〇〇円、夜一七〇〇円。月商二〇〇〇万円が目標だが、土・日の売上げが伸びていないので二、三割アンダーの数字。
土・日は会社が休みになるので、平日の半分の客数になる。営業時間は平日午前7時~午後5時、5時~10時30分。土曜9時~10時30分、日曜10時~5時30分。カフェ、バーともに固定客六、七割。
居酒屋といえば、この界わいには大手居酒屋チェーンも多く進出している。天狗、りきしゃまん、庄や、ニユー・トーキヨー庄屋、養老の瀧など。
しかし、これら居酒屋チェーンや立飲み屋は、夜の営業が主体であるので、会社が休みになる土・日は休業している店がほとんど。
喫茶チェーンや丼物、サンドイッチなどファストフード系の店では、プロント、ドトールコーヒー、珈琲館、ルノアール、ジラフ、天丼てんや、サブウェイなどの出店が目につく。
FFの雄であるハンバーガーチェーンは見当たらない。このエリアは“飲み屋街”であるので、ヤング層をターゲットにしたハンバーガーショップはペイしないということのようだ。
プロント、ジラフは喫茶オンリーではなく、夜はアルコールも売る“二毛作”の業態だが、この両者は似た業態でありながら、通りを挟んで向かい合う形で位置しており、完全に競合するという運営状況だ。
駅南口の前面は岩本町から内神田へ東西に伸びる片道二車線の放射道路だ。
ここを横断して南へ前進すると、道は二つに分かれる。一本は新幹線の高架に沿って東京駅方面へ続く、神田ふれあい通りの延長。
もう一本は真南へ通称多町大通りから日銀通りへ抜ける道。この通りは片道一車線の狭い車道でありながら、大手町、日本橋方面から内神田、神保町の靖国通りへ抜けるバイパスの役割を果たしているので、車の通行量が多いところだ。
南口から一五〇〇m前後のところだが、日銀通りと東西方向でクロスする神田金物通り。駅前の商店街からはやや遠のくが、この辺りには日本料理「うるわし」、魚料理の店「ちゃぽん」、串あげ・小皿料理「ちよだ」、ふぐ・活魚料理店「岩戸」といった小粋で個性的な店も点在する。
通りを神田駅南口方向へ歩く。高架下は二層の店舗になっており、一階は間口二間、店舗面積一〇坪前後のスタンド居酒屋(立飲み屋)が目につく。
サラリーマンなどの退社時である6、7時ごろには車の流れも止まるので、歩道側にもテーブルを出して、集客に対応する店も珍しくない。
酒好きの男たちのアフターファイブ。縁日的な雰囲気で冷たい生ビールを楽しむ。夏の“風物詩”でもあるが、ポストバブル時代以降はこういった店が増えてきた。
個店、路面店の強味でもあるが、店側は集客力アップ、左党にとっては経済的な飲み方ということで、大きく支持されている。
生ビール(中)が三五〇円、酒のつまみが一品四〇〇~五〇〇円前後、客単価二〇〇〇円どまりというのが一般的なようだ。
写真(右)の左右(南北)方向が日銀通り、上下(東西)方向が神田金物通り。片道一車線の狭い通りだが、このエリアには小粋で個性的な日本料理、魚、串焼き、小皿料理などが点在する。
通りの角地にビル二階建てのサンドイッチチェーン「サブウェイ」(直営)が出店している。
三年前のオープン。一、二階合わせ店舗面積二〇坪、客席数三〇席。客単価六〇〇円前後。月商四〇〇~五〇〇万円。
営業時間平日午前7時~午後10時、日曜日10時~7時。土・日は客数が激減するが、店のPRも兼ねて営業している。