和食ファミリーレストランの出店・顧客動向 「鮒忠」居酒屋タイプを和食レストランに

1996.09.02 108号 13面

(株)鮒忠(本社=東京・浅草)は創業が昭和21年。戦後に立ち上がってきた企業だが、当時は社名のとおり、創業者の故根本忠雄氏が鮒、鯉など川魚を売っていた。

創業五〇年後の現在は、FCシステムを導入しての店舗展開をはじめ、ブロイラー生産、ケータリング(仕出し)など総合飲食を展開している。今年3月期で直営三二店、FC一一九店、計一五一店、売上げ一一〇億円の企業規模にある。

しかし、このチェーン企業もライバルの出現と、消費者の選択の幅が拡大したことで、市場の優位性が失われ、マイナス成長を強いられてきている。

店舗の出店も現状維持か、年間一、二店の出店にとどまっている。とくにロードサイド立地は好立地においては、用地確保が困難なことに加え出店競争も熾烈なので、出店は容易ではない。

問題は短期に投資が回収できるかということだ。しかし、焼とり、かば焼など既存居酒屋タイプの店をリニューアルして、「郊外型ファミリーレストラン」に生まれ変わらせるということもある。

東京・足立の保木間店(03・3883・3484)がそのケース。鮒忠本来の看板メニューを売りものにした居酒屋業態だったのを、今年6月、約五〇〇〇万円をかけてファミリーレストランに改装オープンしたのだ。

立地は日光街道沿い。店舗面積は一、二階合わせ八三坪、客席数、一階(テーブル)一〇席、二階(座敷)四〇席のロードサイドレストランにしてはコンパクトな店だ。

収益アップを意図してのリニューアルオープンで、売上げ二割アップ以上の月商一五〇〇万円を目標にしている。

まだオープンして二ヵ月なので、ハッキリしたことはいえないが、以前のサラリーマンなどアルコール客からファミリー層主体に客層が変わり、この店が食事どころとしての理解は得られているようだ。

しかし、客単価が二、三割ダウンした。しかも手間がかかるようになった。極端にいえば、焼とりと生ビールだけでかせげた店から、メニューや接客面でもきめ細かさが求められるようになったし、食事メニューはバリエーションが広がり、それだけ調理に時間をとられるようになったからだ。

メニューはうな重一四〇〇円、天ぷら、天ざるうどん、いくら丼、天どん、うどんセット(九八〇~一四八〇円)などの食事メニュー、またアルコール党には料理(つまみ)四品と生ビールや日本酒、酎ハイなどをセットにした「おつかれさまセット」(一四〇〇~一五〇〇円)が人気があり、高い貢献度をみせている。

客単価昼一〇〇〇円、夜一七〇〇円。営業時間は朝6時から翌朝午前2時まで。朝食メニュー、オムレツ、ベーコンエッグ、焼魚、納豆定食など二八〇~五八〇円も導入している。

出店数一五一店のうち、本来の「和食ロードサイド立地」は五店舗でしかないが、売上げ拡大を狙って店舗レベルでの「仕出し」もおこなっている。千葉・本八幡店(0473・77・2627)は最新店で昨年11月にオープンした。

行徳街道に面した平屋店舗で、一〇〇坪、一〇〇席のゆったりとした店だ。メニューは毎月替わる旬の魚介類をはじめうなぎ、釜めし、天ぷら、魚、肉料理、麺類、デザートなど一〇〇品目前後。メニュー単価八〇〇~一六〇〇円。

客は店舗周辺の客七割以上で、地域密着型の運営形態にある。このエリアは店の右隣にデニーズが出店しているのをはじめ、ジョナサン、サイゼリヤ、不二家レストランなどが展開しており、競合地帯でもあるが、この店は和食メニューのバリエーションと運営形態の気軽さで、集客に成功しているのだ。

アルコールは生ビール、日本酒、カクテル、酎ハイなど。客単価昼一〇〇〇円、夜二〇〇〇円。月商一五〇〇万円。営業時間は午前6時~午後9時30分。

保木間店同様に朝食メニューも提供している。

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