インサイドレポート 低価格時代の外食・飲食店 西洋フードシステムズ

1996.10.21 113号 4面

日経流通新聞が毎年4月に発表している「飲食業ランキング調査」によると、九五年度は売上高上位一〇〇社の中で、同社はデニーズジャパン、小僧寿し本部に次いで一一位。

九六年3月期売上高は九五〇億円。出店数はトータルで七二九店(うちFC一七店舗)。売上げで前年比一・三%増、出店数は不採算店のスクラップを出しているので、プラスマイナス〇・八%のマイナス成長。

市場の成熟化と消費の低迷で、厳しい戦いを強いられているという図式にあるわけだが、出店意欲は旺盛だ。

とくにCASA(カーサ)については今年度は新規に三〇店を出店する計画で、8月末現在で二〇店を消化している。

カーサはロードサイド立地に加え、最近は市街地や都心のビルインでの出店も積極化してきている。

店舗面積八〇坪、客席数一〇〇席が標準規模で、ロードサイドであれば、三〇~四〇台の駐車スペースが付く。売上げは月商二〇〇〇万円前後。

メニューは洋食分野を主体に、基本のフードメニューが七〇品目(単価七〇〇~九〇〇円)。このほか、サイドメニューやデザート、ドリンク類が三〇品目(一五〇~七〇〇円前後)。

メニューはマンネリ化しないよう二ヵ月に一回マイナーチェンジする。九二年11月から導入したオムライス、ハヤシライス各八八〇円はその例で、当初は“フェアメニュー”とし導入したが、評判が良くそれ以降は定番メニューになっている。このメニューはヨード卵三個を使ったリッチなもので、ハヤシライスも特製のデミグラソースと、有機丸大豆の醤油など無添加調味料を使ったヘルシーメニューだ。

これらメニューは、上位五位以内に入る貢献度の高いメニューで、オムライス料理については、9月20日から11月下旬ごろまでオム・フライ(カキフライ)、オム・シチュー(スペイン風)、オム・クリーム各九八〇円など、さらに新メニュー導入で現在キャンペーンセールを展開中。

新メニューといえば、9月5日にグランドオープンした南池袋店は、都心型二四時間営業のモデル店舗となるものだが、従来の時間帯別メニューやフェアメニューの導入に加え、いくつかの新しい試みを行っている。

ホテルの朝食サービスをイメージさせる「モーニング・ビュッフェ」(午前7時~11時)七八〇円の導入はそのひとつ。

これはサラダバーと卵料理、ポテト料理、ペンネマカロニ、おかゆ、焼き立てパンとドリンク類の提供。

サラダバーは「ランチバー」(午前11時~午後3時)四八〇円、「ディナーサラダバー」(午後3時~ミッドナイト)六八〇円の時間帯でも実施している。

サニーレタスとホウレンソウ、レタスとクレソン、赤ピーマンのサラダ、大根と大葉のサラダ(季節サラダ)の主力三品と、スライスポテト、パスタ、ゴボウサラダなど一三種のサブメニュー。

レタス、プリーツレタス、キュウリ、トマトなど四品は今年7月から導入した有機栽培のもので、「安心・安全・健康」のメニュー政策を実現した一例だ。

有機栽培といえば、コメについても「おいしさ」に加え「安全性」を重視している。9月上旬からCASA、藩で千葉産のコシヒカリの米飯提供を始め来年度から全面導入する。

食材やソース、調味料などの質の向上と安全性を高めて、消費者の関心を集め、来店動機を喚起させていく作戦だ。

外食ビジネスも拡大出店一辺倒から、中身の勝負になってきた。西洋フードはそれを強く認識しているわけだ。

南池袋店のメーンディッシュはチャツネバーベキュー、和風オーガニック、オリーブオイルのオリジナル四種の無添加ソースが売り物のステーキディナー四種(一二八〇~一七八〇円)。

都心型店舗では今後アルコールメニューでの来店動機も高めていく方針から、シャルドネ、カベルネ、ソービニヨン、マドンナなどのワイン類(一五〇〇円~)、キューバリバー、ダイキリ、ジントニック、モスコミュールなどカクテル類の強化も図っている。

つまみ類は荒挽きソーセージのグリル、生ハムサラダ各八八〇円、新鮮まぐろのターター風カナッペ九八〇円、ホウレンソウとカキのグラタン七八〇円などの大皿料理。

店舗面積一九七坪、客席数一七〇席。初年度売上目標五億三〇〇〇万円。都心型店舗はこの後、10月上旬に東京オペラシティ店(東京・渋谷区)、12月中旬に大森ベルポート店(同・大田区)の二店がオープン。

郊外ロードサイド立地でも、八千代市や土気などの千葉県下に、9月末から年内にかけて新店を開設する。

以上がカーサの出店戦略だが、藩、小吃坊、糸ぐるまについても、出店数を伸ばしてきており、郊外の商業ビルや都心の複合都市ビルなどで出店をよく見かけるところだ。

コントラクト(業務委託)事業については、「企業内キャフェテリア」「保養所・研修施設レストラン」ほか、式場や各種パーティー会場でのバンケットサービスを展開、二割強の売上比を占めるが、今後は病院、福祉分野への進出も積極化していく。

病院関係については昨年「メディカルサービスプロジェクト」を発足させ、現在その市場戦略を練っているところで、福祉分野と合わせ年間二桁の出店を具体化する考え。

◆会社概要

・企業名/(株)西洋フードシステムズ

・会社設立/一九四七年9月

・本社所在地/東京都豊島区東池袋三‐一‐一(Tel03・3984・0662)

・資本金/一五八億円

・取締役会長/和田繁明

・代表取締役社長/杉本惇

・従業員数/二四三八人

・出店数/レストラン四六三店、ケータリング事業一九二店、食品事業五六店、計七二九店

・売上高/九五〇億円(九六年3月期、前年比一・三%増)

・特色/セゾングループの大手外食企業。平成元年10月から旧社名レストラン西武から現社名に変更。コミュニティレストラン「CASA」、居酒屋・ふるさと三昧「藩」、中華レストラン「小吃坊」、京風らーめん「糸ぐるま」などのチェーン展開(売上げ七割)を主体に、コントラクトおよび食品事業を推進。

西洋フードシステムズは、セゾングループの大手外食企業で、年商一〇〇〇億円に迫る一部上場の総合レストラン企業。

ファミリーレストランタイプの「カーサ」や高級感のある居酒屋「藩」、中華レストラン「小吃坊」、京風らーめん「糸ぐるま」などのレストランビジネスのほか、コントラクト、ケータリング、食品事業を展開する。

牛丼「吉野家」、ドーナツ専門店「ダンキンドーナツ」は子会社で推進している和洋のFFチェーンで、業態開発は多方面に及ぶ。

これら店舗展開に加えて、食材や調味料の質の問題にも積極的に取り組んでおり、コメ、野菜類の「有機栽培化」「無添加化」を実現している。

グルメ杵屋も、今年9月に二部上場から東京、大阪の一部上場に移行した大手外食企業。勢力地盤の関西に加え首都圏でも出店を活発化、大きく業績を伸ばしている。

年間売上げ約三〇〇億円。西洋フードの三割の売上げ規模だが、業態はうどん・そば専門店を軸に、サンドイッチ、オムレツ、カレー、天丼専門店などの和洋飲食。このほかには、西洋フード同様に、和洋中のケータリング事業や会館食堂、リゾート分野でのレストランを展開する。

企業の長期目標としては、西暦二〇〇〇年の初頭に二〇〇〇店、二〇〇〇億円の企業スケールを掲げており、これが実現すれば国内有数の総合レストラン企業になる。

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