お店招待席 フランス料理「南部亭」(千代田区) 公園の緑が借景
樹々に囲まれた日比谷公園の一角に、ひっそりと建つ「南部亭」は、公園のフランス料理専門店としてすっかり定着している。
昼時のテラスは、公園の緑を眺めながら食事をする近隣のOL、ビジネスマンで賑わい、夜は接待客やカップル、週末には家族客と幅広い客層を得ている。
オープンは一〇年前。当時は、ヘルシーという言葉も今ほどには言われていなかったが、一貫して「体にやさしく、健康に良いフランス料理」(南部昭子店長)を前面に打ち出しての店舗展開だ。
「三年ぐらい前から健康志向の風潮が高まっており、作り手として、味のこだわりだけでなく、素材も可能な限り吟味する」(釜谷孝義料理長)という姿勢を崩さない。
野菜は、生産者のはっきりした有機・無農薬野菜を仕入れる。ただ、オープン当初は仕入れルートも数少なく、安定供給もままならなかったが、現在では、同じ考えの同業者、生産者も増え、供給ルートもしっかりしてきたので、安心してメニューに取り入れている。
このほか、乳製品、パン用の粉など、仕入れは常に厳しくチェックし、魚は天然物へのこだわりから業者を通してだが、三崎からのもの。肉については、流通問題、価格の問題もあり、徹底できないのが現状のようだ。
固定客が多いので、客を飽きさせないようメニューは常に流動的にしているという。吟味される食材は、かなりの部分が均一で定期的な入荷は難しいため、日替わりメニューで柔軟性を持たせている。
ランチは時間が限定されているため、皿数を減らし二皿構成。スープとメーンディッシュ。もち論、その日の仕入れによりメニューをかえている。
女性をターゲットとしたわけではないが、建物のたたずまい、店内の調度品や器などから受ける柔らかい雰囲気から自然に女性が来店するようになり、六〇%が女性だ。
「女性向けにと奇をてらったものは出さない。むしろスタンダードな安心できるメニューに人気があり、味付けはどちらかと言えば薄味でしょうか」(料理長)
時間帯、曜日により異なる幅広い客層は、逆にメニューのバランスをとるのが難しいが、チョイスの部分を入れることで解決している。
夜の公園、冬の公園はどうしても客足も遠のく。「南部亭」ならではの魅力あるメニューを打ち出すべく、日々新メニューに挑戦している。
★ゴボウスープ(鮮魚を添えて一品料理とする)2,200円
★ブイヤベース(冬の1~2月がメーンとなる三崎の魚をふんだんに使った鍋物)………4,500円
★キノコ料理(秋はやっぱりキノコ。野生のマイタケなど自然の味)2,500円
★スズキのワイルドライス添え(ワイルドライスのリゾットを乗せ、グラタン風に)…
3,000円
★鴨のムネ肉香草風味(西洋から中国をイメージした一品、甘酸っぱいソースを添えて)3,500円
「南部亭」
〈創業〉昭和64年
〈所在地〉東京都千代田区日比谷公園一‐二、Tel03・3593・3003
〈営業時間〉午前11時30分~午後2時、午後5時30分~10時、日曜日定休
〈店舗面積・席数〉三〇坪・四四席(ほかにテラス席一六席)
〈従業員数〉社員七人、アルバイト四人
〈客単価〉昼五〇〇〇円、夜一万円
〈一日来店客数〉六〇~八〇人
〈客層〉外資系企業の接待や主婦層・OLで、六割が女性
〈売上高〉月商一〇〇〇万円