トップインタビュー J・アートグループ代表 坂井哲史氏 「焼肉屋さかい」50店体制へ

1996.11.18 115号 3面

‐‐「焼肉屋さかい」を創業してまだ三年。まさに、順調すぎるすべりだしですね。

坂井 焼き肉を始める前は中華や和食の店、居酒屋と飲食関係に携わっていました。同じ業界に一〇年もいればいろいろわかってきます。それで焼き肉業界が弱いと踏んだわけなんです。日本人はコリアンスタイルを基本的に敬遠しがちですが、味には共通感がありますよね。おいしさも感じているし‐‐。そこをうまくアピールすれば成功できると思ったんです。スポーツの世界でも、弱点を知ることが相手に勝つことですからね。

‐‐弱い業態への参入は、とんかつとイタリア料理へも?

坂井 そうです。4月にはとんかつの店をオープンさせて現在六店舗展開中。そして年末にはイタリアンレストランを出します。パスタやピザ中心の本格的メニューをお値打ちに、コース料理中心の堅苦しいものではないラフなスタイルの店にする計画です。

‐‐それにしても、この勢いは止まるところを知らないようですが、成功の原因を一言でいうと。

坂井 人事政策ですね。専門のシンクタンクに頼んできちんとした対策をとっています。「適材適所」をモットーに、個人が必ず持っている優れた資質を見分けながら、毎月一〇〇人の希望者の中からよりすぐった一〇人を入社させています。学歴は関係なく徹底した能力主義。どこか光る部分があって、トライする精神さえあれば十分。才能を伸ばしてやり、その能力を信頼しすべてを任せます。私はこまごまと口出ししません。もちろん定着率は抜群ですよ。

‐‐その独創的な営業戦略についてお聞かせください。

坂井 お客さまが喜ぶ「うまいものを値打ちに」提供します。専門店のチェーン化を進めるためには、素材にこだわることと腕のいい料理人を集めることだと思います。

あとは、そのノウハウをパターン化してゆくこと。冷凍肉は使いません。平均客単価は二四〇〇円。店舗スケールは三タイプ。一〇〇坪以上の大型店、六〇坪一〇〇席の中型店、四〇坪七〇席の小型店で、平均月収はそれぞれ二二〇〇万円、一二〇〇万円、一〇〇〇万円です。

あと、デザイン戦略としては常に一流をめざし、経費がいくらかかってもベストな条件下でいいモノをつくりたいと考えています。

‐‐「焼肉屋さかい」のひときわ目立つ真っ赤な看板。恵比寿さまが太陽を背に、左手に肉の塊り、右手に生ビールのジョッキを持っている看板はとてもインパクトが強いものですが、これもデザイン戦略のひとつですね。

坂井 まわりに印象づけるための自己主張は大切です。しかし、ただ派手にすればいいというのではなく、日本人の五感に訴えることを計算して外観、色、インテリアなどを考えています。店舗の外観は強烈すぎるほどのインパクト性を求めますが、内装はやはり落ち着いた方がいいですからシックなデザインで統一していますよ。

‐‐9月に東京支店を開設されましたね。

坂井 当初から関東進出は考えていました。年内に直営店を相模原にオープンさせ、来春以降は本格的な多店舗展開の計画です。

‐‐すると、いずれ拠点も岐阜から東京へ移すのでしょうか。

坂井 そうですね。本社が岐阜の各務原にあるのは、単にそこが私の出身地だったというだけ。もともと私は何事にも固執しないラフな性格。自由で新しがり屋だから一定の場所にこだわりません。今は社員も増えましたし、このツキを大事にして彼らのためにも飛躍したい。将来、海外へ進出してインターナショナルな会社にするのが、私の生きがいです。

‐‐短期間に新しい挑戦を仕掛けてゆくやり方ですね。

坂井 せっかちな人間こそ天下を取る。そう思っています(笑い)。グズグズしていたら先を越される。思いついたらすぐ動く。私自身のせっかちさが功を奏したんじゃないですか。保守的になったら終わり。あらゆるものを柔軟に見つめ、いいと思ったら早めに対応する。これですね。

O157問題が起きたときも間髪入れず生ものを切り、講習会を開いて衛生教育を徹底させました。常に安定供給するためには、リスク管理は大切な条件です。

‐‐先の先まで時代を読んで、構想をたてているんでしょうね。

坂井 いや、五年先のことしか読めないですよ。目下時代は不透明だし、アイデアもやりたいことも次から次へとわき上がってきますから。とりあえず二〇〇一年には、二〇一店舗、二〇一億円の売上げを達成し、株式を上場するのが当面の計画ですね。

とにかく同業他社と同じ手法は取るつもりはありません。目標にしている会社もありませんしね。ただ、ぬきんでてすごいと思っているのは、藤田田氏。会社としておもしろいのはモスバーガーとミスタードーナツ。販促方法を参考にさせてもらっています。

いつの時代も「かっこよく」「おもしろく」、チャレンジ精神で邁進していきたいですね。

‐‐ご発展を期待しています。どうもありがとうございました。

「焼肉屋さかい」を大ヒットさせ、東海地区を拠点に爆発的な躍進を続けるJ・アート。

9月には東京支店を開設した。いよいよ関東圏を手中におさめる日も近い。

岐阜県各務原市生まれ。愛知学院大学商学部を卒業後、サラリーマンを経て昭和53年に外食産業に進出。中華店やカラオケハウス、居酒屋などを手がけ、平成5年に「焼肉屋さかい」一号店、二号店を出す。

わずか三年で現在三六店舗(うちFC二四店舗)を有し今期年商五五億円を上げる。直営とFCの比率は1対3。来年の2月までに五〇店舗体制へ、さらに新業態の「とんかつ本舗」は一号店をオープン後六店舗へ拡大する。

矢継ぎ早に出る言葉からは、自信に満ちあふれた明るい展望が飛び出すばかり。この時期に次々に出店、成功させている坂井社長の経営戦略のポイントとは何か。

ヒマな時にはビートのある音楽をよくきく。48歳。

(文責・片山)

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