お店招待席 日本酒バー「天乃川」(東京・新宿) 香りと味の演出光る
インセンティック・バーの雰囲気で地酒を楽しめるのが、東京・新宿の京王プラザホテル内にある日本酒バー「天乃川」だ。
薄暗くムーディーな雰囲気の店内に入ると和洋折衷のバーカウンター。選りすぐりの地酒四八種がリーチインケースにラインアップ。アイテムは季節ごとの差し込みを合わせると約七〇に及ぶ。
オープンは日本酒の級別が廃止された五年前。それまであまり知られていなかった地酒の特徴(吟醸、純米、本醸造など)をアピールすることを目的にスタートした。
当時生まれた日本酒初のソムリエがこの店の初代店長。しかも女性であったことから人気はうなぎ上り。いまや京王プラザホテルの看板店と化し、系列ホテルでも同様の展開を始めている。
「多種多様な味を楽しんでもらいたい」とするコンセプトからオーダーは一合ずつが基本。カップル、グループで利き酒風に分け合って楽しむケースも多く、それぞれを楽しませる演出として、徳利、おちょこを地酒ごとに分ける工夫をしている。
「冷えたままで香りと味を楽しむ吟醸、大吟醸は、柄の長いワインタイプのグラスが最適。味わい深さを楽しむ純米酒は口当たりの重厚なタンブラーがマッチする」という。
客層は二〇代後半からの男女が半々。地酒に関心を持ち始めた女性客が男性を引き連れて訪れるパターンが多い。カップルで三~四種類を楽しんで客単価は五〇〇〇~六〇〇〇円程度。
繁盛の要因について「ほかで日本酒を本格的に飲ませる店は閉店時間が早い。バースタイルで深夜まで営業していることが支持されている。雰囲気の割に安いといった値打ち感が強い」と同ホテル広報部は分析する。
このほか、ホテルサイドから見ると「従来のバーに比べて食のオーダー率が高く客単価が上がる」といったメリットがあるとのこと。
今年で五年目を迎えるがコンセプトの陳腐化はなさそうだ。しかし最近はさらなる地酒の啓蒙を目的に地酒セミナーや新酒利き酒会など、イベントを活発化させている。
風変わりな日本酒提案は今後ますます人気を集めそうだ。
日本酒バー
「天乃川」
〈開業〉平成5年4月
〈所在地〉東京都新宿区西新宿二‐二‐一、Tel03・3344・0111
〈営業時間〉午後5時~午前2時
〈店舗面積/席数〉四〇坪/五三席
〈従業員数〉ホール五人・厨房五人
〈客単価〉五〇〇〇~六〇〇〇円
〈客層〉二〇代後半以上のビジネスマン、OLから年配まで幅広い。
★売れ筋純米酒(各180ミリリットル)
(1)男山/木綿屋(北海道旭川)……1,000円
(2)春鹿/超辛口(奈良県福地院)…1,000円
(3)田酒/山廃純米(青森県青森)…1,000円
★売れ筋吟醸酒(各180ミリリットル)
(1)新政/純米吟醸(秋田県秋田)…1,700円
(2)司牡丹/純米美麗(高知県高岡)1,400円
(3)一の蔵/吟醸(宮城県志田)……1,700円
★売れ筋大吟醸酒(各180ミリリットル)
(1)黒龍/大吟醸(福井県吉田)……2,100円
(2)白瀧/純米大吟醸雫酒(新潟県湯沢)…
………………………………………2,500円
(3)龍力/純米大吟醸(兵庫県姫路)3,000円
(1)天乃川豆腐 ………………………1,000円
(2)筑前炊き …………………………1,500円
(3)鮪刺身 ……………………………2,500円