お店招待席 郷土料理「雪椿」(東京・中野) 頑固なまでに守る郷土色
新潟の味を看板にした定食屋としてスタート、以後かたくななまでに郷土色を打ち出したのが奏功し、健康志向、本物志向の比較的高い年代客層を取り込んでいるのが新潟郷土料理「雪椿」。JR中野駅前商店街ブロードウエイ二階の洋品店、雑貨店が居並ぶ中に立地する。
「故郷の新潟料理をオフクロの味として提供しよう」(市川清久店長)と、のっぺい汁、漬け菜、煮しめ、ご飯、味噌汁、新香をセットにした「越後定食」一本に絞り、一八〇円でスタートしたのが約三〇年前。
以後、物価に合わせ二七〇円、五〇〇円と価格を変えていくが、変わらないのは「頑固に守る田舎の味と本物のうまい新潟の酒」という常連客の佐藤さん。開店当初の学生時代から通っている客の一人だ。
「田舎のない東京育ちだけに、郷土料理に憧れているのかも知れない。妙に懐かしく感じられるほどここの味に慣らされてしまった」と笑う。
最近では、こうした男性常連客に加えて、昼間は買い物ついでに、また、習い事の帰りに立ち寄る主婦などで占められるほど客層が大きく様変わりした。オープン当初には考えられなかった光景だ。
郷土料理イコールヘルシーのイメージが定着したこともあるが、素朴な中にも変わらぬ郷土の味にこだわる姿勢がうけ、女性同士、家族客でも安心して利用されるようになったようだ。
一アイテムでスタートしたメニューも、価格のアップを契機に三つの「焼魚、煮魚、田舎汁」定食をランチに加え、選択肢を広げる。また、食事主体メニューだったものに、新潟の地酒を品揃えし、新たに酒の肴として「田舎料理一品」を充実させた。
「郷土の人には、こんなものが商品になるのと言われてしまい笑われた」
サケの氷頭なます、越後モズク、エゴの酢味噌などや、だしも煮干し、昆布、カツオ、打ち豆を使い、新潟の郷土色をさらに色濃くした。
新メニュー登場前には常連客を中心としたモニターも大いに活用する。
味付け、価格などについての率直な意見を聞くなど、郷土料理を仲立ちとして客と店とのきずなを強めていく。
今後は、見掛けは同じ商品ながら、中身のグレードアップをはかり、本物志向の客に応えると同時に、新たな客層として若い世代をどう取り込むかが課題のようだ。
郷土料理「雪椿」
<創業>昭和43年12月
<所在地>東京都中野区中野五-五二-一五、TEL03・3389・9595
<営業時間>午前11時40分~午後9時、水曜日定休
<店舗面積/席数>二五坪/五五席
<従業員数>正社員六人、パート六人
<客単価>二〇〇〇円
<一日来店客数>平均一八〇人(昼一〇〇人、夜八〇人)
<客層>昼間は主婦中心だが、夜は比較的年齢の高い男女客
<目標月商>約八五〇万円
人気メニュー
★雪椿定食(刺身、煮しめ、のっぺいまたは酢の物、ご飯、味噌汁、漬け物) 1,800円
★おけさ定食(三段重ねの楽しい弁当、サケのうま煮、卵焼き、煮しめほか、味噌汁)
……………………………………… 1,080円
★いわしのセット(イワシのショウガ煮、酢の物、ごまあえ、ご飯、味噌汁)… 900円
★おにぎり定食(おにぎり2個、煮しめ、味噌田楽、漬け菜煮、味噌汁)……… 950円
★田舎汁定食(大根とサケの田舎汁、煮しめ、ご飯、漬け物)……………………… 700円