世界の人気食材 「サケ」魚族で唯一安定供給誇る
水産物の漁獲高は大激減。乱獲説、環境悪化説(海水温上昇)、周期説(豊凶の周期性)などがみられるが不明。この中でマグロを筆頭に大量の輸入が続く。しかしサケだけは例外である。
サケは母川回帰の性質があるため、これを利用した人工ふ化による増殖が成功。日本、ロシア、ノルウェー、チリ、アメリカ、カナダなどで積極的に進められた。そのため減少を続ける魚族の中で唯一安定供給ができる。
サケ科の魚の特徴は体形が紡錘形で、背びれの後方に脂びれと呼ぶ小さな膜状のひれがある。産卵期は9月から1月ぐらいまでで、水のきれいな河床の砂利場に穴を掘り産卵する。産卵後一週間ほどで死ぬ。ふ化した稚魚は春の雪解けのころ海に下り、三~四年を経て成熟すると産卵のため生まれた川に回帰する。
サケの種類はシロザケ(サケ)、ベニマス(ベニザケ)、カラフトマス、マスノスケ(キングサーモン)、ギンマス(ギンザケ)などとなる。
シロザケは北太平洋に広く分布し、体長は七〇㎝ほど。北海道では秋に川に上ってくるので、アキアジとも呼ばれている。多くは新巻にされるが、沿岸で取れるものはトキシラズとも呼ばれ味が良く、鮮魚として高値である。
また河川で漁獲され婚姻色の出たものはブナザケと呼ばれる。成熟して母川に回帰中餌も食べないので魚肉の味は劣る。アメリカでもドッグサーモンと呼び、味の悪いサケと軽視する。
ギンザケは腹部が銀白色で背部は黒く、淡い黒点が多数みられる。肉色は淡いピンク色。北海道以北からアラスカに分布し、最近ではチリ南部のフィヨルドで養殖されたものが輸入されている。
ベニザケは北海道の一部とアラスカ、アメリカ西海岸で取れる。サケ類の中では最も肉質が良く、肉の赤色も濃い。ステーキで賞味されるほか、スモーク・サーモンや缶詰に加工される。
カラフトマスは別名ピンクサーモン。北海道やアラスカなどで取れ、北太平洋沿岸水域に広く分布している。サケ類の中では最も小さく、最も早く成熟する。口先が曲がり体高が高く、セッパリマスの別名がある。
マスノスケは別名キングサーモン。サケ類の中では一番大きくキングの称号が与えられている。全長は二メートルに達する。肉色はベニザケに次いで赤く、欧米人に愛好されている。刺身でもステーキにしても良く、缶詰にもされる。オホーツク海やアラスカに多く、日本では北海道の東部の沖でわずかに取れる。
サケは利用範囲の広い魚でスモーク・サーモンを始め、ステーキ、ムニエル、テリーヌ、サーモン・オゼイユ(サケのクリームソースがけ)、マリネ、缶詰などにされる。
北欧にはモウイ・サーモンと呼ぶ良質のサケがいる。これを使うサケのディル風味漬け(グラバックス)は最も美味な前菜とされている。オープンサンドの具にされたり、主菜にも幅広く利用されている。
アメリカ人でもスモーク・サーモンやサーモンステーキは好物である。ニューヨークの百貨店では、産地別に十数種類のスモーク・サーモンが人気を呼んでいる。
日本もサケ好きの国民で、郷土料理にも多用されている。北海道のルイベ、石狩鍋、三平汁、氷頭なますはこの代表。また新潟県の村上市では十数種のサケ料理が絶品の味を誇っている。
従来魚を食べなかった中国や韓国ではエビやサケなどを食べるように大変化。北海道産の秋サケが輸出用として活躍している。新興消費国の台頭で、魚価は上昇機運にあるといえる。