世界の人気食材 「シソ」ヘルスフードしのぐ栄養素 ポイントは香りと鮮度

1997.09.01 134号 21面

シソの原産地は中国からヒマラヤにかけての地方で、シソ科の一年草。古くから日本に伝来し、葉茎全体に芳香があり、成長の段階に応じて、いろいろと利用できる野菜である。

葉の両面が紫色しているものを赤ジソと呼び、葉の両面が緑色しているものを青ジソと呼ぶ。表面が緑色で裏面が紫色をしているものは片面ジソと呼ぶ。

ヨーロッパでは花壇などでも作られているが、シソはどんな土地でも生育し、こぼれ種で増えてゆき、生命力は極めて強い。

シソの利用法は青ジソの葉は天ぷら、薬味、飾り用、青菜飯、シソ酒などに。特に青ジソのことを大葉とも呼んでいる。大葉はかつて高級料亭やすし店でしか使用されていなかったが、最近ではスーパーで容易に入手できる。

品選びのポイントは緑色が濃く、葉のみずみずしいものを選ぶこと。香りと鮮度がポイント。高温に弱く、葉の色が変わりやすいので、ラップして冷蔵保存すること。

赤ジソはアクが強いので、その色を生かして梅干しの着色料に使われる。梅漬けなどに入れる赤ジソの葉は塩もみして、絞ってから使用する。香りの成分はシソアルデヒドで、特に赤ジソにはアントシアン系の色素シソニンがある。

シソニンは酸に触れると鮮紅色に変わる。梅干しの持つ酸によって美しい赤色と変わり、食欲をそそる。赤ジソは利用範囲が限られているため、青ジソにみるような大量流通はない。

また穂ジソは薬味や刺し身のつま、揚げ物にされる。実は漬け物となるが、醤油漬け、塩漬けなどがある。実の漬け物はおむすび、即席漬け、お茶漬けなどに。また青魚を煮る時に加えると生臭みが消える。

青ジソの成分は一〇〇g当たり三五kcal。無機質ではカルシウム二二〇㎎、リン六五㎎、鉄一・六㎎、ナトリウム一㎎、カリウム四七〇㎎。ビタミンではA効力四八〇〇国際単位、B1〇・一二㎎、B2〇・三二㎎、ナイアシン一・〇㎎、C五五㎎。

ほかの野菜と比べてミネラルとビタミンが非常に多い。ビタミンAは野菜の中でトップ。バターや卵黄、チーズなどよりも多い。ビタミンCはオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類よりも多い。

そのほかB1やB2ともに多く、カルシウムでは牛乳の二倍、しかもリンとのバランスが非常によい。鉄の含有量も多く、栄養面からみて極めて優れた野菜と呼べよう。

料理面でちそう飯は、梅干しを作るときに漬け込んだシソの葉を天日で干し、細かく刻んで炊き込んだもので、松阪の名物料理である。シソ巻きは、味噌に砂糖、唐辛子の粉を加えてよくすりまぜ、シソの葉に包んで数個ずつ小串に刺し、油を塗って火にあぶって食べるものである。

シソ酒は青ジソの葉二〇〇gを洗って水気をとり、氷砂糖五〇〇gと焼酎一・八リットルに二ヵ月以上漬けたもの。熟成にはさらに二ヵ月を要す。

さわやかなスモックバイオレット(淡灰紫色)の美しい酒に仕上がる。ストレートでよく、カクテルには微量用いるとよい。

強壮、健胃整腸、鎮痛、利尿、脚気、ぜんそくによく、また貧血や冷え症には卓効がみられる。手軽であるので常用をおすすめする。

シソは食品として優れた特性があり、積極的に食べるチャンスを増やすことが大切。江戸時代から魚毒を消すといわれているが、割高な市販のヘルスフードより勝っている。

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