まだ伸びるパスタの世界 ブーム盛り上げた実力派

1997.09.30 136号 17面

イタリアブームが続く。日本の都市ホテルの名物フランス料理部門も続々とイタリアレストランに転換している。また昨年度新設された一八〇〇店強のレストランのうち四割がイタリア料理という。

ともに麺好き

イタリア料理の人気は高く、この中心にあるのがパスタである。昨年度の輸入量は六万三〇〇〇t強、前年比一三・六%の増、国産品がわずか一・六%増であるからまさに対照的。

パスタの伸びている理由として(1)おいしさ(2)豊かなバリエーション(3)実力のある食べ物(4)割安さ(5)日本、イタリアともに麺好き国民――などがあげられ、さらに伸びるものと思われる。

スパゲティの歴史は諸説ふんぷん。中国説では、一四世紀のはじめ、イタリアの探検家で東方見聞録を著したマルコ・ポーロが、中国からミェヌ(麺)を持ち帰り、それが太陽の国で雨量の少ないイタリアの風土に合って発達したという。また一説には、一二世紀ごろカンパーニャ地方で作られていたともいわれる。

いずれにしろ一七世紀にはローマ法王の許可のもと、ローマでスパゲティの店が開かれていた。このころは、日本のそうめんのように手打ちで自然乾燥品。量産に適する大型機械が開発されたのは第二次大戦以降のこと。

パスタとは、広義には練り物の意で、マカロニ・スパゲティの総称。この原料となるのがデューラム小麦で、非常に硬くタンパク質も豊富。そして主産地は中近東、ギリシャ、イタリアなど地中海沿岸国。改良品種では、アメリカやカナダでも生産されている。

三五〇種超す

スパゲティは、主食、副食、スープ、サラダ、デザートなどに広く使われている。ゆでる、焼く、浮き実にする、詰めるなど、調理法によってさまざま。製品の種類は三五〇種以上、調理法では一〇〇〇種を超えよう。

製品分類では――

●ロンググーズ=棒状、管状、板状など。ロングマカロニ、スパゲティ、バーミセリ、ヌードル、カッペリーニ

●ショートグーズ=カットスパゲティ、カットマカロニ、ツイスト、ペンネ、カネロニ

●スモールグーズ=小型製品のアルファベット、リゾット、ステリーネ、アネリーネ

●スペシャルグーズ=ネスト、エッグヌードル、ラビオリ、ラザーニャ

イタリアでも南北では食べ方が異なり、北部は硬めにゆで、あっさり味でバターを使用、南部は軟らかくゆで、味はややしつこくオリーブ油が多用される。

細いのが人気

最近ではスパゲティも大変化。以前は太さが一・九㎜でミートソース用が中心であったが、一・六~一・三㎜の細いタイプに人気が移り、ソースメニューの多様化とゆで時間の短縮化の影響による。

北部の味の代表がスパゲティボロネーゼで、ミートソースを使用。南部の味の代表がスパゲティナポリタンで、魚介類を多用する。

しかし、イタリアでもヘルス志向のため、ボロネーゼでも肉がなく、雲のように振りかけたパルメザンチーズもなしという人も多くなった。

また表面生地を滑らかにして食感をよくしたもの、逆に凹凸をつけてソースをからめやすくしたもの、お湯やレンジで簡単に調理できるチルドタイプといった新製品の開発も続く。

日本にみるスパゲティの消費傾向は、かつて業務用の比率が六五%と高く、家庭用が低かったが、現在は逆転している。スーパーにみる輸入スパとソースのセールスの力による。イタリアレストランの参入も続くが、その半面、淘汰の時期でもある。真剣な取り組みが大切。

ピザもパスタの一種。イタリア語ではピッツァ。英語ではピザと呼ばれている。イタリア南部で生まれた食べ物で、ナポリが発祥の地とされるが、シチリア説もみられる。

前者は具にアンチョビーを主にするのに対し、後者はライプオリーブを使うなどの差はみられるが、基本的なものは同じである。

イタリアはローマを境に北がヨーロッパ、南がアフリカと呼ばれた時代もあり、この貧しい南部の人々が主食代わりにしていたのがピザ。昔はニンニクやトマトをのせ、オリーブ油を振りかけて焼くだけのものであったという。

このピザは、ピッツァリア=ピザ専門店と呼ぶ専門店で食べられる。ここでは注文と同時に生地をめん棒で丸く伸ばし、サッと両手の親指と人差し指で数ヵ所つまんで一回り大きく伸ばし、石窯で手早く焼く。香ばしくパリッと焼き上げるのがポイント。

飽きこない味

ナポリで食べるピザは、(1)生地がとても薄い(2)焼き上がりがパリッとしている(3)具は二~三種でシンプルなもの。

代表例で、イタリア人がピザの原点と呼ぶマルゲリータは、トマトの赤、モッツァレラ・チーズの白、バジリコの緑とイタリアの国旗を思わせるもので、人気度ナンバーワン。

チーズとトマトソースがベースで、具はごくわずかのバジリコだけ。ピザのパリパリを味わうには具はわずかでシンプルが望ましく、具だくさんに慣れた日本人を驚かす。あっさりとして飽きのこないのがイタリアの味である。

生地の原料をみると、イタリアは強力粉一〇〇%、アメリカは強力粉五〇%、薄力粉五〇%と大差がみられる。

軽く前菜にも

ピザは軽い食事として、またはスナックとしておやつ代わりに、分量を少なくすればアンティパスト(前菜)として、いろいろと用いられている。

ピザは、ナポリから船出した移民によって世界各地に伝えられ、食べられてきた。特に第二次大戦時、ナポリに駐留したアメリカ兵が好んで食べ、帰国後これを広め、世界の味に仕上げたともいえよう。

アメリカに移ったピザは(イ)ファストフードとして(ロ)ピザミックスのインスタント化(主として業務用)(ハ)冷凍ピザ(主として家庭用)の三つの方向でそれぞれ大発展を続けている。

特にファストフードとしては、先進のハンバーガー、フライドチキンにならってフランチャイズ化を進展し、三大FFの一つとして日本でも人気の高い食べ物となった。

続々と新製品

(イ)日本に展開しているピザチェーンの代表社は――

(1)世界四十数ヵ国でチェーン化、五〇〇〇店強の店舗を展開している。

(2)すべてバイクによるデリバリーピザの形態をとる。

(3)品種は基本型ピザ(シーフード、バジル、ライト、スタンダード、和風ほか)二〇種を持ち、サイズはMとL、チョイスできるトッピングを用意している。

(4)チキンやサラダなどのサイドができ、家庭での食事やパーティーも可能。価格は一六〇〇~三八〇〇円でチョイスできる。絶えず新製品を開発、デリバリーエリアを確立し、見事な商品力、営業力で展開している。

(ロ)ピザ用粉のミックスは、業務用として小麦粉を最適配合し、製造時にイーストを添加し、サイズ、味の点でも加工メーカー(パンメーカーなど)にチョイス幅を任せる。この生地にソースをぬり、トッピングすると出来上がり。

(ハ)さらに手軽なのは冷凍ピザで、スーパーで販売、鮮度は極めて高く保存性もよく、業務用、家庭用に幅広く利用されている。

食生活の一部に地位を確保したピザは、成長アイテムとして一段の活躍が期待されている。

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