世界の人気食材 「中国キノコ」人工栽培で入手容易に、少ない投資で高収益
中国にみる食用キノコの歴史は二〇〇〇年以上前からで、当時の日本は縄文時代にあたる。中国人はキノコ好きな国民で、長い間親しまれてきた。
そして、キノコを表現する文字として〓(グウ)、菌(ヂュン)、〓(モウ)、菰(グウ)などが使われる。日本の茸の文字は、中国では全く別の意味で、草などの生えたての軟らかいさまを表す。
キノコ類の良さは、あらゆる料理に向き、高級な宮廷料理、薬膳料理、精進料理、手軽な家庭料理など幅広く利用される。このため需要は急増し、主要なキノコはすべて人工栽培が成功し、ブームをみせている。
この現象を中国誌は――
・品種改良や栽培技術が進み、バイオテクノロジーの技術も利用されている。
・設備が簡単で、投資が少なくてすむ。生産期間も短いので、生産性が極めて高い。
・他の野菜と比べて売値が高く、高収入。
・健康志向が高まっているので、売れ行き好調。
といった理由を挙げて、これからも期待される食品としている。
人気キノコの事情と食べ方をみると――
◆四大名菜のひとつに
(1)猴頭〓(ハオ・ツー・モー=やまぶしだけ)
中国では最も貴重、最も美味とされる。豪華食品の代表として燕窩(ツバメの巣)、熊掌(熊の手のひら)、魚翅(フカヒレ)と猴頭〓が挙げられ、四大名菜とされる。
深山老林に多く、かつては王侯の食べ物であったが、人工栽培に成功。とくに制ガン作用も大とあって一段と人気が高まってきた。
歯切れ、口当たりとも最高で、栄養面でも優秀。調理法は数百種もあり、炒、爆、溜、紅焼、白〓などいずれもよい。最近では、日本の高級中国料理店でも賞味できるようになった。
◆高貴なキノコの女王
(2)竹〓(ゾウ・スン=きぬがさだけ)
分布は熱帯から温帯にかけて。竹〓のレース状のかさは夜半の三~四時間に柄を伸ばし、かさも全開させて数時間後にしおれる。この別名キノコの女王とも呼ばれている。
非常に高価で、採取の時期が短く、収穫量の少ないことによる。しかも美味で需要は増大。訪中の田中角栄首相も絶賛したという。
高貴で歯ごたえ抜群、強精効果も期待され人気も高い。人工栽培に成功し、周年供給体制が完備。宮廷料理の竜井竹〓湯には欠かせない。これからが楽しみのアイテムである。
◆美肌づくりにも効果
(3)銀耳(インアル=白きくらげ)
かつては霧雨煙る四川省の特産品。金と等価で取引された貴重品である。薬効が高く益気、清肺、益脾胃、滋養、活血、高血圧症などに卓効ありとされてきた。
ぬるま湯でもどすと白い花が咲いたように美しく、ぷりぷりとしてスープに使われる。さらに時間をかけて煮込むととろけるようなデザートに。消化がよく、美肌づくりに効果的。
成分も食物繊維、カルシウム、鉄など豊富。人工栽培が各地で進み、価格も大幅にダウン、日本でも容易に入手できる。
◆金と等価の高い薬効
(4)冬虫夏草(ドン・チョン・シィア・チャオ=とうちゅうかそう)
セミや甲虫などの幼虫に寄生し、養分をすって成長。冬は虫の姿、夏は草の姿と変わるので名前がつけられた。分布は日本、ヨーロッパにもみられるが、食用とするのは中国だけ。
薬効が高く、酒にされて不老長寿、強精、貧血によく、酒一杯は金一杯の等価という。
四川名菜の虫草鴨子には欠かせず、最高の味といえよう。量産されるようになって価格は下落し、入手も容易となった。