喫茶特集:マナベ・真鍋国雄社長にインタビュー 既存店4%の集客アップ
――ズバリお聞きして、いま喫茶業界はどういう状況だと思われますか。ドトールコーヒーが登場してきて、喫茶のイメージもずいぶん変わりましたが、ここにきて昔の喫茶店のように落ち着いた雰囲気でくつろぎたいというニーズも高まってきているような気がしますが。
真鍋 スタンドコーヒーのドトールさんが出てこられて賑やかになりましたし、喫茶需要を底上げしたという気がします。しかし、バブル以降は市場が落ち着き、拡大、効率主義だけではやっていけなくなってきたという感じです。
――確かに小売業界全般をみても売上げ主義だけの考えでは経営は難しくなってきていると思います。しかし、珈琲館さんの場合は安定した集客力を発揮しているようですが。
真鍋 私どもは一貫して品質の向上と取り組んできておりまして、この点がお客様に大きく支持されている理由だと思います。また、平成2年にCIを導入したのですが、店の雰囲気がスッキリしたことで、お客様の来店動機が高まって全店ともにいい結果を出してきております。もっともCIの結果についてはロゴなどがかたいという評判もありますので、近い将来に再度CIを導入する考えでおります。
――ところで価格についてですが、ドトールコーヒーが一八〇円、これは低価格志向でリーディングカンパニー的な役割を果たしているんですが、さらにベローチェは一五〇円という安さです。そして商品においてはアメリカから参入してきたスターバックスがエスプレッソコーヒーで市場を開拓しようとしています。いわば価格の安さと質の面での競合です。珈琲館は三〇〇円~五〇〇円の価格帯、もちろん商品の質は高いわけですが、これらのチェーン店に対してはどういうスタンスでおられますか。
真鍋 喫茶業界は大きく見て価格的には低価格志向とモデラート、また店舗の運営面ではセルフサービスとフルサービスというように二極化して共存し合うものだと考えております。お客さんは自己の気分やそのときの目的で店を使い分ける。ですから私どもは私どもで存在していける。他店は他店。ただし、消費者ニーズの流れとしては、ファストフードサービス的なものより居心地のよさとか商品のグレードを含めて、フルサービスで質の高い店舗運営が強く求められられてきているという気がします。今後は店の存在を強く印象づけて、来店動機を高めていくことが課題だと思います
――具体的には。
真鍋 まずは商品の質と価格のバランスをどうとっていくかです。私どもは価格は一切動かさないで品質を上げる。値ごろ感、お値打ち品を訴求する。消費者に一番分かりやすいところです。たとえばコーヒー豆は一杯あたり一〇~一五㌘と、他チェーンに比べ多めに使っております。アイスコーヒーについては、これも、氷で味が薄まらないようレギュラーコーヒーの一・五倍の豆を使ってます。女性客に人気があるラテにしても良質のブレンドで価格は三〇〇円にとどめています。これらのアイテムは全体売上げの四割前後を占める貢献度です。
私どもは最初に数字、売上げありきでない。どうお客に来てもらうかを考える。消費が低迷しているからといって喫茶需要がなくなるわけではない。バランスの悪い高い値段を取るから客が敬遠するのです。私どもは材料をケチらないで、良い豆を使っておいしいコーヒーを提供する。それでいて価格をいじらない。これは実質的な値下げとなります。
――それでリピーターが増え、集客力が安定するわけですね。
真鍋 お陰様で既存店ベースで三~四%アップの成果を出しています。これは一店一店の仕事がしっかりしている証拠。本部は商品開発と後方支援に注力すればよい。
この4月からはエチオピア産の野生のコーヒー豆を使った新商品を導入します。これは地域の農民しか飲んでいないというもので、どこにもない商品です。約七〇日間陰干した完熟コーヒーを四〇〇円で提供する予定です。また新たに、お客さん、オーナーさんに喜んでいただけると思います。
――マンネリに陥らないよう、常に消費者にインパクトを与え続けるということですね。
真鍋 居心地のいい、落ち着いた環境をどうつくり出していくかです。店の運営面は常にお客の立場で考えなくてはなりません。これはあるFC店に教えられたことですが、相席などの詰め込みをしないとか、造花ではなく生花を飾るとか、トイレを常に清潔にしておくとか、小さなことかも知れませんがこういった気配りが集客力を高めていくのだと思います。
――なるほど。「王道に近道なし」のたとえで、小さな積み重ねが大切ということですね。
真鍋 レジのことでも教えられました。レジが混む時間帯に細かい釣銭を渡すと時間がかかってしまいます。外税だととくにそうです。レジ処理をどう短縮するか。加盟店からの提案により4月からは端数が出ないよう内税にして、レジ待ちの不快感を減らしていく考えです。
――これが商品の質と居心地よさの追及ということですね。そして、結果として店の集客力を高めることになっている。どうもありがとうございました。
真鍋国雄社長=昭和13年8月、北海道出身。気取りのないフランクな人柄で、まだ四〇代という若さにしか見えない。早稲田大学在籍中から喫茶店を経営。喫茶ビジネスは筋金入りだ。喫茶のほかには日本料理店なども経営していたので、すでに青年実業家という存在だった。45年に珈琲館直営第一号を出店。48年からFC展開。今年1月末現在全国に四五〇店舗(九七年度売上高約一九〇億円、対前年比六%増)を展開。