で・き・る現場監督:ピザーラ東武動物公園店・許田光男店長

1998.03.16 148号 22面

許田光男さんは宅配ピザチェーン「ピザーラ」を三店舗手掛けるフランチャイジー。既存店の頭打ちが叫ばれるなか年商三億円と好調に業績を伸ばしている(現在、宅配ピザ店の月商相場は四〇〇~五〇〇万円)。経営理念は自らが生涯現役スタッフであること。繁盛の秘訣はこの徹底した現場志向にあるという。

「同じ商品を扱う条件下で競合に負けるとすれば、それは現場(スタッフ)の力量がないからです。力量は現場の緊張感とプライドで決まります。その力量を高めることが経営者の手腕といえます」

「ましてピザーラの商品開発力、ノウハウ、知名度は他チェーンよりも十分勝っている。現場に力量さえあれば繁盛は間違いないのです」

「力量を高める条件は、経営者か社員が常に現場にいること。電話対応からメーキング、配達にいたる行程管理を徹底し、アルバイトスタッフに対する目配りを欠かさぬことです。マニュアル主体の宅配ピザ店では、ちょっとした怠惰やミスがすぐ品質低下(商品やサービスの)に結びつく。アルバイトの緊張感が店の売上げを左右するといって過言でありません。だから経営者は常に現場にいるべきなのです」

許田さんの手掛ける三店舗には常注社員が二人ずつ。ほとんど社員が、店の繁盛に魅力を感じたアルバイト上がりだという。

厨房の緊張感が高まるにつれスタッフの力量も高まる、それが売上げにも比例して表れる、というのが現場監督である許田さんの持論だが、それでは売上げアップにつながるスタッフの力量とはどんなものか。

「アルバイトスタッフを社会人と見なせるまでに育て上げること。チェーンコンセプト、セールスポイント、また労働のルールを知らしめて、ピザーラスタッフの一員であることを自覚させることです。アルバイトといえど甘えは許しません。労働者の一人として厳しく接します」

「新人アルバイトに対しては雰囲気に慣れさせることから。そして徐々に仕事を与え、半年後には一通りこなせるスタッフに成長してもらう。いわば半年ぐらいは先行投資ですね」

「アルバイト主体の業態とはいえ、宅配ピザ店はオペレーションの徹底が大原則ですから、最初から新人スタッフに仕事を任せてはいけません。少しずつでいいから一つ一つを完璧にこなせるよう指導します。一人前になるには時間が必要。社会の一員として育てるためにも妥協はいけません。本人のためですから」

「そして経営者は、新人スタッフを戦力外と見なす“余裕”が必要。その余裕が店舗の力量を決定づけます。つまり、その余裕とはベテランスタッフの退職を見据えた中期計画というわけです」

中期計画に基づくスタッフ固めは先行投資としての色合いが濃く、出費もかさむが、長期的にはこれが繁盛の原動力となっている。

「時間をかけてスタッフを育て、責任感とプライドに磨きをかければ、次の新人もそれをまねする。そして店は活気づく。また次の新人が……というように好転が続くわけです。この好転をつくりだし維持することが店長の命題なのです」

ピザーラの看板に誇りを持ち、労働機運のディテールにこだわる許田さん。派手な多店舗化や副業に乗り出す考えはない。

「背伸びせず目の行き届く範囲できちんと見る。これからも店(現場)を強くするだけに集中し地域一番店を目指す」という。

◆「ピザーラ」/経営=(株)フォーシーズ/東京都港区南青山五-一二-四、全菓連ビル、電話03・3409・6000

TVCMでおなじみの宅配ピザチェーン。日本人志向のメニュー開発で支持を獲得し勢力を拡大。ここ数年、宅配ピザチェーンの好感度ナンバー1を維持している。

景気のあおりで昨年は既存店の売上げが前年比を割ったものの、最近は、ひとつのピザで四種類の味を楽しめる「ビンゴ」と「ボンバー」が大ヒットし、各店で月間最高売上げを連発している。現在の店舗数は四四〇店舗(直営八〇・FC三六〇、平成九年度決算期予定)。

◆許田光男(ピザーラ東武動物公園店店長、(株)サンベイスト代表取締役)=昭和19年、東京都出身。タイヤメーカーのサラリーマンを経て運送自営業者に。業務用食材のサプライヤーとしてピザーラを担当時、その納入実績と宅配というニュービジネスに注目。平成4年にチェーン加盟、一号店として春日部店を出店。翌年にせんげん台店、翌々年に東武動物公園店を出店し現在の三店舗展開に至る。年商は三億円。

※「ピザーラ東武動物公園店」(埼玉県北葛飾郡杉戸町杉戸四-三-三、電話0480・34・7100)

※(株)サンベイスト(埼玉県北葛飾郡杉戸町高野台西三-二三-三、電話0480・32・5256)

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