注目の「バーミヤン」”ガスト”思考着実に
既報のように、すかいらーくグループ四社の一九九八年6月期中間決算が発表されたが、この中で注目されるのは、中華料理のファミリーレストラン(FR)バーミヤン。中間期末店舗数は二二八店、既存店売上高は昨年対比二・八%減に抑え、最終利益は昨年対比〇・九%減の四億九一〇〇万円を余儀なくされたが、売上高、営業利益、経常利益は昨年対比それぞれ二八・八%増(一五六億五八〇〇万円)、一九・八%増(九億九四〇〇万円)、二〇・九%増(九億五三〇〇万円)と好調だ。上期は京都、兵庫、奈良など関西に進出、来期は愛知圏の出店を果たし新商勢圏づくりを行う。
出店についてはセントラルキッチン一工場当たり一〇〇店単位を予定。関東圏は既設の藤岡工場(群馬県)、酒々井(千葉県)、相模原(神奈川県)を中心にしており、新商勢圏づくりにはセントラルキッチン建設が不可欠となる。
一方、今後の店舗づくりは新型低コスト店舗「NY80」(ニューヨークタイプ)が中心。同社は九三年「M80」タイプを投入、続いて「P80」と店舗をモデルチェンジしてきた。「NY80」は前の二タイプに比べ標準工費が二〇〇〇万円減の六〇〇〇万円台で、投資回転率は平均年商対比二・二~二・三回転を予定。
さて、バーミヤンが注目されるのは、すかいらーく本体が展開する低価格FR「ガスト」のコンセプトの実践だ。
まだ記憶に新しいが、九一年、九二年の“ガスト現象”“ガスト効果”がフードサービス・流通業界を席巻した。が、効果の期間は長続きせず、修正を迫られた。
当時、ガストを企画、現在バーミヤンに転籍した田中基経営企画部長は「客数が二倍、売上げは一・五倍に増えた。キャパを超えてしまった。もっと多くの客に利用していただくという本来の目的が見失われ、値段で来るんだと思い込んでしまった」と振り返る。
安いだけに高校生などの学生層が急増、店の滞留時間が長く、ファミリー層離れを起こした。「高校生がたばこを吸う。当初は注意していたが忙しすぎてできなくなった。一回許すとそういう人ばかりが来た」と述懐する。
バーミヤンはもともと、メニューはドリンクを含め百数十アイテム、客単価一五〇〇円を狙っていた。が路線転換したのは、ガスト展開が始まった後だった。
「小商圏でメニュー単価を下げ、来店頻度を高め、ドミナント展開する」戦略を採用した。メニューはドリンクを含め五〇強に減った。そして客席への水のサービスを廃止、セルフ化した。九四年、フロアを替えソフトドリンクバイキングを導入した。デザートは受けない仕組みに変更した。
オーダーを取る時、ハンディターミナルに入力するが、その時、「デザートはいかがですか」など聞く項目がいくつかインプットされている。パートの接客係はこれを見て問いかけるわけだが、この項目を削除した。
デザートは基本が店内手づくり。添加物を使わないなどこだわり商品を提供していたが、ロスを考えての決断でもあった。
「店の入口から席に案内し、オーダーを取り、運ぶ。いかに作業数を少なくするか。九三年、キッチンの生産性が上がり、九四年、フロアの生産性が上がった。
ラーメン三八〇円、餃子一八〇円、チャーハン四八〇円、杏仁豆腐一八〇円など、値段が違うし、ほかとサービスが違うのは仕方がない」と、田中部長は言う。
要は「そこまではできない」という否定的なサービスでなく「ここまでやります」という能動的な姿勢である。
FRは何を売るのか。サービスでなく料理だという考え方。しかも低価格で提供し、売上げ、生産性を上げようという考え方だ。
スーパーはニーズを限りなく取り上げるとアイテムが増え効率が悪化する。生鮮の作業量も増加する。フードサービスの場合、加えてアイドルタイムがある。
「すかいらーくは昔、時間帯別のヤマがあった。デザート類が弱く、アイドルタイムは客が入らなかった。がその方が効率は良かった。バブルがはじけ、売上高を上げようとアイドルタイムなどの対策を考えた。結果、客数は増えたが効率は落ちた」(田中部長)
ガストの教訓を生かし、見事にガスト思考を展開しているバーミヤン。駐車場を備えた郊外型から、ノンパーキングの駅前立地、そして、SCテナント出店と形態を多様化させつつあるバーミヤン。さらに低投資型店舗開発が武器になる。
すかいらーく業態では鳥取、島根各県には出店できなかった。ガスト業態の展開で初めてこれが可能になった。北海道、青森、沖縄以外はすかいらーくはすべて出店したことになる。これはバーミヤンでも当てはまりそうだ。
ガスト、バーミヤン、さらに店頭上場したサイゼリヤ、そして若干業態は違うが洋風居酒屋チムニー。これらに共通するのは低価格メニューだ。田中部長はこれら各社の店数が圧倒的になった時、これまでのFR業態とは違った業態として認知される、と期待する。