まかない味シュラン:イタリア料理「アクアパッツア」

1999.03.15 174号 6面

店名「アクアパッツァ」は、日高良実シェフの並々ならぬ思い入れで命名されたもの。直訳すると気狂い水の意だが、かつて日高シェフがイタリア中を料理修業で駆けめぐっていたころ、南イタリアで出合った漁師料理。焼き魚を白ワインやブイヨン、ニンニク、アンチョビなどと煮込み、水でまとめたシンプルなものだが、あまりのうまさにいたく感激、以来、日高シェフの料理の原点、よりシンプルかつうまい料理への追求となる。

料理人はサービスを知って初めて料理ができる。それにはお客の要望を聞きながら覚えるのが一番という日高シェフ。

まずは経験をと、キッチン志望者でもどんどんサービスのセクションに回され、厨房、フロアともに対応できる柔軟性ある料理人修業をさせられる。

まかないは一日二回。午前11時と午後3時。六人の厨房スタッフが各自一日交代で切り盛りする。ただドッと客が押し寄せるランチ時は、つかの間の時間を利用して作るシンプルなスパゲティ。新人が担当する。

午後3時。メーンの食事作りは店のメニューになることはないが、自己研修の場であり、体力をつける場でもある。

「世代により創作アイデアが違っていて面白い。オープン当初のお客も年代が上がってきた。これからは二〇代に期待をかけています」という日高シェフ。若い料理人の自由な発想を楽しみにする。

この日のメニューは四品。いつもなら和風が定番となるが、「煮込みや焼き魚が続くとシェフから注意もあるので、気張ってイタリア風に決めました」と笑う百瀬幸治シェフ。

食材を見る目を養って欲しいという日高シェフの要望に応え、厨房にころがる残り物をどう生かすかに気を使う。大量に使うクレソンはかなりの量の茎が残ってしまう。これを料理の端々に混ぜ込み、栄養として彩りとして活用する。また商品にはならない仔牛テールの切れ端も、組み合わせで立派なイタリア風料理に仕上げてしまう。

普段よりちょっとばかり気張ったメニューを評し、「組み合わせは合格。特に大麦を使ったのは良いが、値段が張るね。品数も普段はそんなに多くないよ」と苦笑しながらもトータルでは合格のようだった。

▼所在地=東京都港区南青山六‐六‐二〇、菊岡ビル1F&B1、Tel03・3106・9586▼創業=平成7年4月▼営業時間=平日についてはランチタイム午前11時30分~午後2時、バールタイム午後2時~5時、ディナータイム午後5時30分~10時30分、年中無休▼坪数・席数=一二五・四坪・四八席

クレソンノフレッター

■作り方 クレソンの茎や野菜クズ、あればホタテなど魚介類の余りを利用し、フレッシュの香草を衣に混ぜ込み揚げる。

■ポイント 香草の香りをソース代わりにする。

クレソンスパゲティ

■作り方 クレソンの茎を細かく刻み、アンチョビでゆっくりソテーし、軟らかくなったらバルサミコ酢少々を入れ麺にからめる。

■ワンポイント アンチョビの味わいを生かす。

カブのリゾット

■作り方 バターでコメを炒め、野菜からとっただしを注ぎ煮詰め、カブをスライスして入れる。

■ワンポイント 貝類をだし代わりに入れたり、仕上げに刻んだ葉っぱを入れると味、彩りともに良くなる。

オックステールの煮込み

■作り方 仔牛テール煮込みの端を使い、ワインとトマトで煮込む。大麦をゆで、バターとカレー粉で炒めて添える。ソースは煮込みソースを使う。

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