うまいぞ!地の野菜(18)福井県おもしろ野菜発見「花ラッキョウ」
福井県の西北端、日本海に面した九頭竜川河口に位置する三里浜砂丘地。ここは全国でも珍しい三年もの「花ラッキョウ」の産地として知られる。
幅二キロメートル、長さ一二キロメートルと細長く伸びた砂丘は、古くから松や雑木林で埋まる不毛の地だった。
明治の初め、四郷村黒目のテグス商人が和歌山県に停泊中の貿易船でラッキョウを知り、種子を持ち帰って自家用として栽培したのが、この地でのラッキョウ栽培の始まり。
その後、大正時代には栽培農家も増え、京阪ばかりでなく、東京や横浜にも出荷するほどになるが、土つきを俵詰めでは腐敗の恐れありと、塩漬け加工の「花ラッキョウ」で出荷、瞬く間に全国シェア七〇%を占めるほどになる。
「花ラッキョウ」の名前の由来だが、小球の両端(ハナ)を切り取るからとか、びんの中で白く花のように見えるからとかの説がある。
こうして一大生産量を誇るラッキョウも、昭和46年の福井臨海工業団地造成で、収量は半減、加えて中国産をはじめとした輸入ものとの競合で、大きな転換期を迎えることになる。
伝統守り継ぐ
「小さいころから忙しい時には手伝っていたから要領は心得ているが」と強い日差しを浴び、流れる汗を拭う林雅幸さん(44)。
昨年10月、長年勤めていた自動車整備士の仕事を辞め、八〇歳を超す父親の与三兵衛さんの跡を継ぎ、専業農家としての新たなスタートを切ったばかり。
会社勤務時代と違い、朝5時半から、間に昼飯とお茶の時間を挟んで夕方6時までの労働時間。収穫最盛期の6月、7月は、砂地で炎天下の仕事はきつい。
「確かに拘束時間は長いけど、自分で時間の調整ができる自由。それに収穫する喜び、これは農業だから味わえると思っています」
「花ラッキョウ」は、8月下旬から9月上旬に植え付け、翌年6月、7月に収穫するのが一年もの。さらに一冬越して6月、7月に収穫する足掛け三年になるのが、いわゆる三年ものといわれる。
「ここまでじっくり育てるから分球が多くなる。一年ものに比べ小粒だが、色白で柔らかいわりにシャッキリ感がある」と代々から受け継ぐ自慢の「花ラッキョウ」。伝統品を絶やさず守っていきたいと収穫する手に力が入る。
強敵は中国産
地元農産物直売所の「ふれあいパーク三里浜」では、三年ものと指定買いするファンが年々増えてはいるが、「価格が大きな問題になっています」という三里浜特産農業協同組合・本田高雄生産課長。
現在急激に増えている中国産ラッキョウ。価格は「花ラッキョウ」の約三分の一。今までの国内他産地との競合から輸入物との競合となった。
こうした状況から従来のこだわり商品「花ラッキョウ」を柱に、ネギとの交配で「越のパール」、赤玉ネギで「越のレッド」などの新野菜を発売。また、加工品もワイン漬け、キムチ漬けなどと幅を広げたり、生食の食べ方提案もする。
すべてを手作業に依存するこだわり商品が、競合品の価格をどこまで越えられるか、今後の課題は大きい。
■生産者=三里浜特産農業協同組合(福井県坂井郡三国町黒目九‐二五)、Tel0776・82・2111、FAX0776・81・4387
■販売方法=直売所「ふれあいパーク三里浜」(Tel0776・82・3339、FAX0776・82・7773、インターネットhttp://wwwz.hitwave.or.jp/sanri/
■価格=加工品一〇〇g二三〇円、徳用一キログラム二〇〇〇円。土付一キログラム三九八円