新店ウォッチング:サンマルク・カフェ銀座店
「ベーカリーレストラン」という、ここ数年でも業界最大級の新業態を開発し、自らを「業態開発企業」と名づけて快進撃を続けるサンマルクが、今年の春に銀座に出店した新業態「サンマルク・カフェ」を訪れてみた。
サンマルク・カフェ銀座店は、銀座通りから、銀座二丁目と三丁目を隔てる小路へ入ってすぐのところに位置している。
すぐ隣にはドトールのコーヒー店が、また二階客席の向かいには道路を挟んで喫茶店のルノアールがあり、さらに近隣はスターバックスの一号店出店地でもあるという激烈なロケーションへの出店だ。
同店の売り物は、何と言ってもFC一〇〇店舗以上を有する既存のベーカリーレストランで圧倒的な強みを見せた、店内オーブンで焼く「焼き立てパン」(六〇円から)であり、ドトール店よりはるかに狭いカウンター内に小さな電気オーブンを設置して、焼き上げたパンをすぐに並べて販売する仕組みだ。
一階の客席には、ここで焼き上げるパンの香りが一面に漂って、独自の雰囲気が醸し出される。
スープに注目
飲み物の品ぞろえはブレンド、アメリカン、アイスコーヒー(すべて砂糖ミルク付き)が、いずれも一八〇円であり、隣接するドトール店と同じ価格帯となっているが、そのほかに、ミルクも砂糖も付けない「ブラック」と「クールブラック」(アイスコーヒー)=写真(下)=と呼ぶストレートのコーヒーを一七〇円で提供しているのが新しい。
そのほかの飲み物は、紅茶、カフェ・オ・レが二一〇円、ジュースが二二〇円、ロイヤルミルクティが二三〇円(すべてホット・アイスとも)と標準的だが、面白いのは、冬季限定の「伊勢エビスープ」と夏季限定の「冷製赤ピーマンスープ」(どちらも三六〇円)というメニューで、これらの商品が成功すれば、このタイプの業態における新しいメニュージャンルとして確立されるかも知れない。
目立つ女性客
店内の内装は、濃いめの茶系に塗装した木地を中心に、サンマルクがテーマカラーにしている黒を配した落ち着いたイメージで、特にテーブル席をメーンに七〇席を有する二階フロアはさらにアップグレードな重みのある内装で、ドトール店などではあまり見ることができない、いくぶん年齢層が高い女性客が一人で来店している姿も多く見受けられた。
このサンマルク・カフェ銀座店は実験店という位置づけで出発したようだが、すでに多店舗展開の計画が決定され、二号店以下の計画も発表されている。
◆取材者の視点
とにかく店内は圧倒的な女性客である。
一見すると、焼き立てのパンを売っているという以外は、何の変哲もない低価格コーヒー店のように見えるが、隣のドトール店と比べても、ほぼ同じ価格帯にもかかわらず、客層(お客の利用動機)がまるで違っている。同社のヒット業態であるベーカリーレストランで培った独自の雰囲気づくりは、このあたりにシッカリ生かされているのだろう。
ただ、女性客狙いにしては、アーミーグリーンにステンシル書体のロゴマークは、軍隊の旗印のようで、いまひとつロマンチックさに欠けるような気がする。
また、従業員が少し若いためか、オペレーションや接客にドトール店のような落ち着きが感じられないのが気になった。
ビジネスマンのちょっと休憩目的という狙いがピタリとハマっているドトール店と、おしゃれな(でありたい)若い層に圧倒的に支持されているスターバックスの間にあって、難しいマーケット狙いの選択を迫られる業態のような気がする。神戸屋レストランなどが展開する業態とも競合することは必至だろう。
少なくとも、このままドトール店が待ち受ける立地に正面から戦いを挑むのは、若干無謀なように思われるが、今後、同社がどのような立地を狙って展開していくのかが興味深い。
筆者が臨店したときには、店頭で従業員が二人もコーヒー(ブラック)のチラシを配っていたが、この意味が気にかかった。