飲食トレンド:シェフは女性の天職です

1999.11.15 192号 1面

講師の手元を見つめる真剣な表情。話を聞きながら器用に手先を動かす‐‐ここは東京・国立にある調理専門学校、エコール・キュリネール国立(辻調グループ校)。ここ一〇年で女性の生徒数は全体の一割程度から半数を超えるまでになったという。なかにはOLを辞めてシェフの道を選んだ転職組も。長く「男の世界」であった料理界もパワフルな女性たちが牙城を崩しつつある。

「結論から言って、料理人になるのに性別での向き不向きはないですね。むしろ女性のほうがどん欲で積極的。調理実習・講習で最前列に集まり、バンバン質問してくるのはほとんどが女性。実習グループでは女性が統率役になる。就職活動も率先してこなし、男子生徒にはいい刺激になっています」と話すのは同校の西洋料理教授の宮本滋さん。

体力的にみれば女性は男性よりは非力。重い鍋を持てるか、大きな荷を運べるのか、女性料理人につきもののこんな懸念も宮本さんは一蹴。

「慣れることで体力はついてきます。また、料理はチームワークで作るもの。たとえスピードや体力で負けても、細かい作業が得意、奇麗なものを好むなど個性は十分生かしていける」

例をあげれば欧米人と日本人の体力・体格差。

「これは格段に違いますよ。吊り下がった鍋なんて背伸びしても届かない。それでも日本人は向こうでも互角に働いています」

同校には全国から求人が集まる。男女雇用機会均等法などで、女性への門戸も開かれつつあるが、「調理場は女性スタッフだけで固めたい」と指定してくる店も出はじめているそうだ。

「調理の世界に女性が進出したのは二〇年ぐらい前から。その女性たちがそれぞれ現場で力をつけ、女性の力が見直された。もともと女性にとっては料理は身近な存在。そんな女性の志向と、現場の理解がかち合ってきた。これからも女性料理人はどんどん増えると思いますよ」(宮本さん)

二一世紀はどうやら元気のいい女性が食文化の担い手に。食材やメニュー面などに新しいブームがまき起こりそうだ。

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