高度成長する惣菜・デリ 開発テーマを満たす冷凍食品
《各社とも売れ 筋動向に注目》 食品加工業にとって、惣菜・デリ市場の拡大を単に川下の出来事として静観しているわけにはいかない。内食の伸び悩みと食の外部化傾向は否定できないからだ。
従って、食品メーカーは必然的に最終加工段階に近い調理食品重視へと進展している。惣菜・デリの売れ筋動向を分析・検証し、「惣菜のおいしさ、フレッシュ感を食べたい時にいつでも再現できる調理食品」が今日の開発テーマ。冷凍食品メーカーの惣菜・デリ市場への取り組みには次の三つが挙げられる。
一つには、スーパー・CVSベンダー向けの業務用冷凍食品の開発、販売である。その中心となるアイテムはコロッケ、フライ、カツ等の揚げ物類だ。消費者ニーズの多様化を受けて、流通各社はヨコの品揃え強化を打ち出し、これに対応して、メーカー側は天ぷら類、米飯類等の和惣菜や「エビのチリソース煮」「酢豚」等の中華惣菜などの新製品を次々と投入し始めている。
二つ目は、惣菜・デリ的メニューによる家庭用冷凍食品の開発、販売である。特に、ピラフ、焼きおにぎりといった米飯類や、うどん・そば、パスタ等の麺類、さらにたこ焼きといった屋台系スナック類がかなり好調な売れ行き。
三つ目には、冷凍食品メーカーが川下戦略の一環として、自ら惣菜・デリビジネスに参入するケースも見られ大手CVSチェーンと手を組んだベンダーの設立が多い。
以上のように、各冷凍食品メーカーは惣菜・デリ市場への取り組みを本格化、強化する傾向にある。今回はその中でも多方面に実績を持つ日本水産の事例を紹介する。
《売場提案に注力 する日本水産》 同社の惣菜・デリ市場への取り組みは、スーパー・CVSへの業務用冷凍食品の開発、販売と惣菜・デリ的な家庭用冷凍食品の開発、販売、さらには自らCVSベンダー事業にも進出している。
まず、業務用冷凍食品の展開について見てみると、同社の冷凍食品全体の売上高は約八〇〇億円(91年度)。そのうち業務用は五五%の四四〇億円。
チャネル別販売比率はおおよそ惣菜・デリ(四〇%)、外食・給食(四〇%)、その他(二〇%)と推定される。以前は事業所・学校給食やファミリーレストラン等の比率が高かったが、90年代に入った頃から惣菜・デリチャネルの比率が高くなってきた。同チャネルの中では、やはりスーパーが七~八割と高い位置付けとなっているが、CVSのベンダールートも急速に拡大している。
同社の業務用冷凍食品は米飯類、麺類、天ぷら類、唐揚げ類、フライ類、コロッケ類、オムレツ類、中華類、洋風、和風、スナック・デザート類に分類される。
惣菜・デリ向けとしては、天ぷら類、唐揚げ類、フライ類、コロッケ類等の揚げ物で約八〇%を占め、残り二〇%は中華惣菜、米飯類、麺類、蒸し物、焼き魚、オムレツなど。
売れ筋は、「デリカ用かにクリーミーコロッケ(丸型・俵型)」や「同えびクリーミーコロッケ」、「お惣菜コーンコロッケ」など、バラエティ豊かなコロッケ類。
同社では今後、スーパーのローコストオペレーションに対応した商品開発が重要だとしている。各スーパーチェーンとも慢性的な人材不足により、バックヤードで手間ひま掛けて調理・加工することが大きな負担となっている。そこで、スーパー惣菜の中心アイテムである揚げ物については、スチーマー対応の商品やボイリングパックの商品、解凍するだけの商品等の開発に注力している。
また、“売れる惣菜売場のシステムづくり”を目指す「インストア・マーチャンダイグ」のプロジェクト研究を推進し、スーパー惣菜のソフトを中心としたノウハウ蓄積を行っている。これは自社の商品導入を促進させるためだけのものではなく、スーパーと共同歩調でいかに惣菜売場を活性化させるかが目的。
一方、家庭用においては、主婦の調理省力化ニーズと電子レンジ・オーブントースターの普及に着目した調理済み冷凍食品の開発に注力。その代表が「焼きおにぎり」「ZIPハンバーガー」である。
《期待が大きい 冷凍食品類》 この日本水産の事例からもわかるように、惣菜・デリ市場の拡大は、加工食品メーカーにとって、有望な販売チャネルを創り出している。今日の市場成長は、従来の製造・小売までを担う中小惣菜メーカーによって生み出されたのではなく、業務用食材を活用したスーパー惣菜やCVS惣菜の売上げ拡大によるところが大きい。
流通各社では一般グロサリーよりも惣菜・デリ売場の拡張に力を注ぐとともに、店内調理スペースや人員不足から、ますます、業務用冷凍食品への期待が高くなっているわけである。
また、惣菜・デリ市場は加工食品メーカーにとって魅力的な直接的マーケットとも言える。電子レンジ・オーブントースターの普及により、最終加熱だけを残した家庭用調理冷食は、そのまま食べられる惣菜・デリの簡便性やフレッシュ感に限りなく近い食品と言えよう。