弁当4社の市場開拓戦略 「ホットフーズ」 業界№2、地域に根を下ろす

1993.02.01 21号 13面

ほかほか弁当「ホットフーズ」のチェーンブランドで、北海道から九州まで約九〇〇店舗を出店。売上高は四〇〇億円に迫まる。事業主体は㈱全栄(本社東京・千代田区、資本金四一〇〇万円、蟻川一郎社長)で、弁当チェーン業界では「ほっかほっか亭」に次いでナンバーツーの地位にある。

チェーン展開は一〇〇%近くがFCシステムによるものであるが、ここ数年はFC展開をストップしている。出店コストが高騰していることに加え、競争が激化、この結果、加盟店に大きく負担をかけることになり、ビジネスとしてのウマ味がなくなってきているとの判断からである。

「かつてFCシステムというのは“脱サラビジネス”といわれ、小資本で高収益を実現していたんですが、それがバブル経済と共に成り立たくなってきました。土地や物件取得に金がかかり過ぎということなんですが、資材や大工の手間賃など建築コストも大きくハネ上がってきていますから、初期投資の負担が大変なわけなんです」(㈱全栄常務取締役蟻川茂行氏)。

二年前までのモデルケースにおいては、店舗面積六坪クラスで開設資金は三八〇~五八〇万円(内外装二五〇~三五〇万円、厨房一三〇~一八〇万円)であったが、今は建築資材が上昇したのに加えて、大工の手間賃も日当で四、五万円が標準で、出店コストが二、三割アップという状況になっている。

モデルは店舗での収支プランでは、営業時間一三時間(午前7時~午後8時)で、月商三四六万円、荒利五〇%、純利益三〇%という内容であるが、人件費や食材コストの上昇で、年々収益力は弱まってきている。

しかも、現在の状況は消費が低迷する節約ムードにあり、競争の激化と共に、来客者も一、二割落ちてきているという厳しい現実にある。客数がダウンする分客単価が上がればいいのであるが、そう都合のいいようにはいかない。持ち帰り弁当は“コーヒー一杯分の価格”設定が基本で、インフレに強い商品でなくてはならないので、そう値段を高くするわけにはいかない面もある。

「ある程度の店の大きさとなりますと一〇坪は必要なんですが、そうなりますと、内外装・設備資金は二〇〇〇万円くらいになります。もう個人で負担できる金額ではありませんし、償却もかつての半年、一年というレベルから五、六年前後はかかってしまう。また、同業他チェーンとの差別化においては、オリジナルの商品も開発していかなくてはならないし、ある程度メニューも増していかなくてはならない。ですから、店の業績を安定させていくためには、大変な努力がいるということなんです」(蟻川常務)。

東京の郊外京王線多摩センターにある多摩センター店は、ホットフーズ唯一の直営店であるが、以前フランチャイズ店であったのを引き継いでのオープンである。直営として再出発して今年で七年目になる。同地域(多摩市)は現在は落ち着いているが、過去四、五年前まではベッドタウンとして人口増加(現人口一四万六〇〇〇人)の著しかったところで、駅から四、五分、多摩センター通りに面した立地にあり、郊外店としての性格にある。

店舗面積一〇坪の独立店で、二階が住居という形態の店。駅周辺の商業ゾーンからやや離れたロケーションにあるが、店舗正面エリアが集合住居ゾーンであるので、固定客が七、八割と地域に深く根を下ろしている。

また、一方においてはロードサイド立地であるので、休日や行楽シーズンにはドライブ客の利用も多くなり、営業内容においては可もなし不可もなしといった状況をみせている。

「でも、二年で更新の家賃も人件費も上がってきてますから、そう楽ではないんです。売上げは出前注文や特注弁当でカバーしていますが、店売りは頭打ちになってきているんです」(蟻川節子店長)。

店での弁当売りは昼の11時から12時、1時ごろと、夕方の4~5時ごろと二つのピークがあるが、店の売上げはこの二つの時間帯で全体の七、八割を占める。とくに、どこの弁当チェーンでもそうであるが、昼食時の時間帯に売上げのウエイトが集中する。

弁当チェーンの中には七、八割もが昼どきに売上げが偏るというケースもあり、営業効率が極めて悪いという結果を出している。この店の場合はそれほどではないが、それでも五、六割が昼食時に売上げが集中する。

人気メニューはのり弁、シャケ弁(各三五〇円)ほか、幕の内弁当(五八〇円)、ランチA(七五〇円)、みそ汁付き和風ハンバーグ弁当(五八〇円)、生姜焼肉(五八〇円)など。客単価は五〇〇~六〇〇円前後。

売上げは平日平均で一三万円、日曜祭日には客数が増えるので、倍の二六万円くらいになる。営業時間は朝9時から夜9時まで。売上げのボーダーラインを維持していくためにとくに定休日は設けていない。

「いつも店を開けていれば、それだけ特注なり、電話予約が期待できるのです」と店長の蟻川節子さん。店はパートタイマーのベテラン主婦四人と、夜の学生アルバイト二、三人でおこなっている。

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