この1品が客を呼ぶ:「CANAL CAFE」フォンデュータ

2001.02.19 222号 17面

まるで運河に浮かんでいるかのようにたたずむ「CANAL CAFE」。ワインと本格イタリアンが人気のカフェレストランだが、この冬一番の人気は冬期限定の「フォンドュータ」。ストーブをたいたテラス席で、ワインを飲みながら身体の芯から温まるのがスタイルだ。

神楽坂下から外堀に続く階段を降りると、都会のなかとは思えないゆったりとした空間が広がる。「カナルカフェ(カナルとは運河の意)」の名のとおり、全二五〇席のうち一五〇席をテラス席が占めている。水辺(外濠)の景観を眺め、水面を渡る風を感じながら食事を楽しむためのカフェなのだ。

平成7年7月のオープン当初はアルコールが中心で、ともすればビアガーデンのような感があったが、三年前にフードメニューを一新、イタリアン料理を中心としたカフェレストランに様変わりした。

それらの料理を考案したのが、シェフの原衛三郎さん。日本でイタリアンの勉強をした後、本場イタリア・ミラノのホテルやレストランで修業を積んだ経験を持つ。

「メニューはワインに合った料理というのが大前提で、三ヵ月に一度のサイクルで新しくしています。ミラノのホテルで働いていた当時に同僚だったシェフに相談したり、今、現地ではやっているものを聞いてヒントにしています」

この冬一番の人気メニューは、冬期限定の「フォンドュータ」(二人前二六〇〇円)。一般にチーズフォンデュと呼ばれるものだが、原衛シェフの手にかかるとひと味もふた味も違ったフォンデュが出来上がる。

使用するチーズはフォンティーナ、グリュイエール、エメンタール、そしてパルメザンの名で知られるパルミジャーノ・レッジャーノの四種類で、そのうち七割をフォンティーナが占める。ワインは使わず、牛乳にナツメグやコショウなどのスパイスを混ぜ、さらにぜいたくにも、トリュフのオイルを加えるのだ。

「とろみを出すためのチーズ、風味を付けるためのチーズと、味の特徴やチーズ同士の相性を見極めるために、十数種類のなかから一ヵ月くらいかけて試しました。チーズ本来の味を楽しんでもらいたかったので、塩分はいっさい使用したくなかったんです」

付け合わせのパンは、バケット、フォカッチャ、ライ麦パン、ドライトマトを練り込んだパンなど、その日に焼いた自家製のものを出す。そして、ブロッコリーやカリフラワー、ニンジン、カボチャ、里芋、サツマ芋などの根菜類も添える。

カナルカフェでは、どんなに寒い日でもほとんどの客がテラス席を希望する。三ヵ所に置かれた大型のストーブと、無料で貸し出しするブランケットがあるとはいえ、やはり身体の芯から温まるためには、フォンドュータのような火を使った料理は欠かせない。

最近、新たに魚の仕入れルートを確保したという原衛さん。全国各地の漁港から直接取り寄せるシステムで、常に鮮度抜群の素材が届けられる。出羽地鶏や寿豚、えぞ鹿、スカンピエビ、小やりイカ、スコッチサーモンなど、素材にこだわる原衛さんにとっては待ちに待ったシステムだったという。

「これからもメニューは定期的に更新していく予定です。新鮮な素材が手に入るので、さまざまな料理に挑戦することができると思います」

ウッドデッキのテラスで、ブランケットに身を包みながら、温かいフォンドュータとイタリアンに舌鼓を打つ客が、今日も後を絶たない。

◆「CANAL CAFE」=東京都新宿区神楽坂一‐九、03・3260・8068/坪数・席数=四〇〇坪・二五〇席/営業時間=午前11時半~午後11時、日・祝日午後10時まで、月曜定休

◆記者席からのコメント

火にかけられ温まったチーズは、えもいわれぬ独特の香りを放っている。カリッとした自家製のバケットをくぐらせると、チーズがしっかりとからみついてくる。これが原衛シェフこだわりのとろみなのだろう。口に運ぶと、さまざまなチーズの味に加えトリュフの香りが鼻腔をやさしく刺激し、ぜいたくな気分が満喫できる。おまけに水辺を目の前にした最高のロケーションとくれば、まるで水の都ヴェニスでも訪ねたかのよう。ほとんどの客が冬でもテラス席を好み、ワインを注文するというのも、うなずける。

◆こだわりの食材

すべての食材にこだわりを持つシェフの原衛さんにとって、この四種類はほんの一部。マウリのドライトマトはオイル漬けされたほどよい酸味のトマトで、パスタやソースなど何にでも使用できるほか、前菜としてそのまま使えるなど、応用の幅は広い。

タンマの塩はミネラルが豊富な海塩。濃度が高く味がしっかりしているので、炭火焼きの魚などに振れば、素材の味を存分に引き立てることができる。

キャンティジャーノの赤ワインビネガーは、マイルドでなじみやすく、サラダのドレッシングには欠かせないもの。

リグーリアのオリーブオイルはあっさりと軽いのが特徴で、サラダやパスタなどの仕上げに使用したり、魚料理に重宝する。

(問い合わせ=ミルトス044・870・9818、エレヴィ03・5753・0588、辰巳食品03・3389・4821)

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