地域ルポ:岡山 ラーメン店で人気の「デミソースかつ丼」

2001.06.04 229号 10面

かつ丼といえば、とんかつをつゆで煮込み、卵でとじて丼飯にのせるのが主流。とい

うよりも、それしか食べたことのない人がほとんどだろう。しかし、岡山市のかつ丼は

異なる。かつ丼というと、丼飯にとんかつをのせデミグラスソースをかけたものを指

す。通称「デミソースかつ丼」である。岡山市の「デミかつ丼」事情を探ってみた。

丼飯の上にキャベツ(のせない店もある)、とんかつをのせる。そして、その上からデミグラスソースをたっぷりとかける。これが岡山市名物「デミソースかつ丼」だ。濃厚なデミグラスソースと揚げたてのとんかつの相性は抜群で、絶大な市民権を獲得している。価格相場は七〇〇円前後だ。

メニュー開発者は、昭和6年創業の「味司 野村」の野村佐一郎氏というのが有力な説。野村氏が東京のホテルで洋食の修業中に考案し、帰郷後に調理人のまかない食としていたところ、それがいつしかメニュー化したという。

これをまねて広めたのがラーメン店だ。戦後、大陸引揚者の増加につれラーメン人気が高揚。ラーメン店の出店ラッシュとともに、デミソースかつ丼は人気サイドメニューとして定番化した。

当時、デミグラスソースといえば調理に技術と時間を要する高級品である。洋食は庶民のあこがれでもあった。

「簡単に作れて安ければ売れる」という状況下、あるラーメン店が、がらスープをブイヨンに見立て、ケチャップとソースで調味する、疑似デミグラスソースの調理方法を思いついた。このアイデアがデミソースかつ丼の普及に火を付けたのである。

現在、岡山市のラーメン店の人口比率は全国でもトップクラス。デミソースかつ丼の魅力が、大きな集客効果を発揮している。

◆岡山市は隠れたラーメン処

岡山市のラーメンはさまざまだが、豚骨と鶏がらを強く炊き、魚介のだしを合わせたスープが多い。瀬戸内海の小魚が引き出す独特なうまみと濃厚なコクが特徴で、岡山市は「隠れたラーメン処」ともいわれる。「だてそば」や「やまと」など老舗の近隣には、魚介料理店が軒を連ねる「おかやま魚島横丁」がある。デミソースかつ丼は、瀬戸内海沿岸の風土に育まれたヒットメニューなのだ。

◆デミかつ丼の必勝食材

デミソースかつ丼の調味の決め手はソースだ。ウスターソース、トマトケチャップ、がらスープのバランスが肝心だが、ケチャップが多いと酸味が強く、ソースが多いとソース味に偏ってしまう。その絶妙な調合に欠かせないのが、地元倉敷市・創業七〇年の老舗、(株)豊島屋の「タテソース」だ。甘み、辛み、酸味のバランスがよく、がらスープとの相性も抜群という。(株)豊島屋は、唐辛子エキスが通常ソースの一〇〇倍という「超激辛ソース」をこのほど発売。世界一辛いソースとして話題を集めている。

◆(株)豊島屋=岡山県倉敷市玉島中央町一‐七‐八、086・522・2148

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