トップインタビュー:銀河高原ビール社長・中村功氏

2001.08.06 233号 17面

世は地ビールブームでわき返っている中、大手四社に次ぐ第五の新しいビールを名乗り、華々しく登場して五年になる「銀河高原ビール」。小麦麦芽を使った従来にない新しいビールは、一二〇年来、飲み続けられてきたビールの概念を変えることができるのか。一般消費者ばかりでなく、外食レストランへとターゲットを絞り込み、確実に浸透している現況および今後の展望などを聞いてみた。

‐‐何故ビール事業を手掛けたのか。

中村 七年前にドイツのステファンという青年に出会ったのがきっかけ。彼が言うのに日本のビールはインチキだと。ドイツでは、ビールの原料は麦、ホップ、水と法令で定められており、コメやコーンスターチなどを使ったものはビールと呼称できない。ところが日本のメーカーは、ビール酵母を取り除いたビールを造っているという。

ビールからビール酵母を取ったらどうなるのか、これは日本酒や味噌から麹菌を取ったのと同じで栄養素がなくなってしまう。

また、ビールは本来健康的な飲料だが、ビール酵母を取り除いたあと、糖尿、痛風、肝硬変、心筋梗塞の原因ともいわれるコーンスターチを五〇%も入れ、炭酸も添加しているという。

こうした日本のビールは、確かにのどが乾いたときの清涼飲料水としてはよいが、食事をしながら飲むビールとしては物足りないと思っていた。

そこで日本の大手四社が造るビールとは違った、もう一つこんなビールがあるんだという思いで造ったのが「銀河高原ビール」。

‐‐「銀河高原ビール」とは、どんなビールか。

中村 このビールは、良質小麦麦芽五五%、大麦麦芽四五%の割合で作った南ドイツ・バイエルンに古くから伝わる製法で造られたバイツェンビール。ビタミン、ミネラル、アミノ酸などを豊富に含むビール酵母は、ろ過せずそのまま生かされており、水が命のビールは、工場を良質の天然水に恵まれた高原に設置している。

一般のビールはビール酵母がないから冷蔵配送の必要ないが、「銀河高原ビール」は、生きた酵母入りのため冷蔵配送をしなければならないし、半径一〇〇~一五〇キロメートル以内が限度。これは造る方も運ぶ方もたいへんなこと。例えば刺身を買ってきてそのまま置く人はいない。やっぱり食べるものはおいしく食べたいし、基本的にお客が求めているのは、おいしいもの、本物です。そのためには、扱いもそれなりにきちんとしなければならない。

‐‐ドイツのブラウマイスター(ビール醸造者)を呼び、小麦麦芽、こだわりのミネラルたっぷりの水を使って造られた日本初のバイツェンビール(小麦のビール)への反響はどうだったのか。

中村 結果は惨憺たるものだった。なにしろ日本人は一二〇年間、ビールはこういうものだと思いこんでいたのだから、結果は予想されたこと。理解してもらうには時間が必要。

‐‐地ビールの一種ととらえる人も多いと思う。またあれだけ地ビールが出てきたのに、今は音沙汰ないように思うが。

中村 本来、地ビールはおいしいはずだが、十分な研究もせずまずいものを造っていたため、かえって一緒にされてマイナスだった。結局、おいしくなければ消え失せる運命にある。

‐‐今後の展望を。

中村 食べ物でも車でも、ものにはいろいろと選べる種類があってしかるべき。しかしビールだけは並品一種しかなく、プレミアム品がない。

外食レストランでも食材にこだわり、魚はどこから、野菜はこの農家からとこだわっている時代。ところがビールはどうか。私はこれからはビールを選んでくれと言いたい。

食べ物のメニューは一〇〇種類あってもビールは一種類。これからはビールも選ぶ時代だ。

今ではこのビールのおいしさを理解し、取り入れる飲食店が、この4、5、6月で五割アップした。

ただ人海戦術による普及には限度があり、結果を即刻求めてはいけない。二年、五年、一〇年、一五年と長期的なスタンスでとらえなければならない。消費者にわかってもらうには、相当の時間がかかると思っている。

今後、外食レストランにターゲットを絞ってアピールしていきたい。今ではこだわりをもつ店、銀河高原ビールでやろうという店、このビールを目玉商品でやろうという積極的な店も出てきており、こうした店から口コミで倍々に広がっていくと確信している。

‐‐この意気込みを伝えるのは従業員。特別な教育法があるのか。

中村 人は何のために働くのか。人は何のために生きるのか。仕事とは素晴らしいもの、仕事の喜びと価値に生き甲斐をみつけろと言っている。今はその生き甲斐を多くのサラリーマンは失っている。そこから話を始めているが。

私自身、「銀河高原ビール」を育てていくのは、日本にまったくなかった商品だけに面白みがあり、夢も湧いてくる。いずれは二~三年で四~五万キロリットル、将来的には三〇万キロリットルと夢は大きくもっている。

●会社メモ

◆銀河高原ビール(株)(東京都中央区銀座二‐八‐一二、チャンドラ・ボースビル、03・3564・0018)資本金=三億円、従業員数=二〇〇人、醸造工場=那須高原工場、飛騨高山工場、阿蘇白水工場、岩手沢内工場の四工場で、最大醸造量四万キロリットル(年間)

●プロフィル

◆なかむら・いさお=一九三六年大阪生まれ。五五年香川県立高松商業高校卒業後、出光興産に入社。一三年間在籍、トップセールスマンとして活躍。六八年に退社し東日本ハウスを設立、社長に就任。八〇年にはホテル業にも進出、ホテル東日本社長に就任。九四年東日本ハウス会長に就任するが、九六年会長を辞任。同年7月銀河高原ビール(株)を設立する。

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