焼き肉特集:関西の名店=ダイリキ「炭火焼肉ワンカルビasile西中島店」
「対面販売は時代を超えて残るもの」。これは一九六五年の創業以来一貫して毎日食べる“おかず”として、最良の食肉を提供する小売店舗の展開を事業の柱としてきた、ダイリキ(株)高橋健二社長の言葉である。“お客と顔を突き合わせて商売したい”というのが同社の社員共通の願い。外食事業をフランチャイズチェーンではなく、直営チェーンとして展開しているのも同じ理由からである。
同社は、一九九三年に都心型居酒屋風焼肉レストラン「炙屋」(曾根崎店)を外食事業一号店として開業(現在七店舗)。以来、郊外型焼肉レストラン「あぶりや」(同六店舗)、昨年から始めた郊外型低価格焼肉レストラン「炭火焼肉ワンカルビ」(同一三店舗)と、直営店舗だけを関西地区に二六店舗(8月1日現在)を出店している。
同社の特徴は焼き肉事業の三業態展開である。長年にわたり食肉小売事業の対面販売で得た、地域の客が求めるもの(商圏特性)を見抜く感性や顧客を大切に思う心、また、細やかな店舗展開が可能な直営の強みがあってこそできるものだ。
食肉小売事業では一九八九年に関東地区一号店を出店、現在、七三店舗(直営店五一、D・O・S「独立支援制度」店二二)で全国展開している。
現時点で外食事業店は関西地区に限って出店、多店舗展開とあわせて「売上高や店舗数に固執した考えはない。目標はあるが拡大計画とは違う」「我々の商売は多店舗展開することで効率が良くなる業態ではない」(高橋社長)という。
「増やすこと、速くすることが、店(既存店も含めた)の人材育成を遅らせサービスレベルを低下させる。急速展開することで店の乱れが起こりやすい」(同)と語る。
常に既存店のサービスを気にかけ、それぞれの地域の顧客を大切にする心は、“人と人とのコミュニケーション”を重視する対面販売のノウハウが生かされているようだ。
また、「規模を誇る会社なのか、価値を誇る会社にするのか」「われわれのような労働集約型の商売は、基本的には高付加価値の店にするのが良いと考えている」という。
高橋社長は小売事業を通じて価格下落や競合店との競争を経験、リーズナブルな価格とともに他店にない品ぞろえや加工・販売の専門技術を追求して今の地位を築いてきた。だからこそ外食事業では値段や仕組み・オペレーションだけではない付加価値を重視しているようだ。
「商品と空間をレベルアップし、九〇分、二時間というスローフードの中で、どれだけ顧客満足度を上げられるか」と語る。
同社の外食店の社員は一店舗あたり平均二人と少ない。主力の戦力であるアルバイトには個々のマインドを出させ、権限を与え、能力を最大限発揮させている。一方で、店舗から意見を出し合うというサイドメニューの充実やたれの改善などの一例からも、直営店一店一店の底力が感じられる。
◇企業メモ
◆ダイリキ(株)/本社所在地=大阪市西区新町一‐二七‐九、電話06・6535・7771/創業一九六五年6月/一九六七年焼肉材料の販売を開始/一九七二年大阪府豊中市で大力食品(株)を設立/一九七八年総合食肉販売店を開設/一九八九年関東地区に小売一号店、一九九三年中部地区に同一号店を出店/同年外食事業一号店を大阪市内に出店。ダイリキ(株)に商号を変更/現在小売店七三店舗(惣菜店二店舗含)、外食店二六店舗を展開/二〇〇〇年の実績はトータル売上高一五四億六六〇四万円(前期比三・九%増)、経常利益八億五五二万円(同三・七%増)。うち外食事業は売上高三〇億六八七八万円(同二九・八%増)/今期の目標はトータル売上高一七〇億円(同一〇%増)、経常利益九億三〇〇〇万円(同一五・五%増)を目指している。
◇店舗メモ
◆「炭火焼肉ワンカルビasile〈アジル〉西中島店」(店長=塚本剛、大阪市淀川区西中島三‐一八‐四、電話06・6100・1129、営業時間=午後5時~11時、無休、坪数九三坪・一七三席、客単価三〇〇〇円)
今年6月にリニューアルオープン。ビジネスマンが多い立地特性から、落ち着いて食事ができるようにした。
間接照明を多用し、店内装飾もシンプルかつウッディーなアジアンテーストで統一。「女性客(OLなど)が三~四倍も増えた。ホルモンメニューとサイドメニューのアジアンフードを充実、プリンやジェラートなどのデザート類も人気」(塚本店長)
「アジルは一店舗のみの予定」(同社広報)
〈メニュー例〉ロース三九〇円、ホルモン三種盛四五〇円、ナムルの生春巻き四八〇円、フォー・ボー(ベトナムうどん)四三〇円、プリン各種三五〇円など