うまいぞ!地の野菜(35)青森県現地ルポおもしろ野菜発見「マイルドにんにく」

2001.10.01 237号 13面

「子供のころから風邪をひくと、裏の庭から採ったニンニクをすって湿布に使っていたよ。今のように食べることはなかったね」という鳥谷部正逸さん(65)。

日本一のニンニク生産量を誇る青森県。その中でも主要産地として知られる上北郡天間林村の生産者の一人である。

天間林村では庭先にニンニクが自生していたが、食用にする習慣はなかった。村では長芋生産に力を入れており、京浜、関西市場に出荷していたが、昭和30年ころ、県の集団栽培品種のニンニクを商品としてルートに乗せたところ、「日本人のにおいに対する偏見か、なかなか広がらなかった」。

ところが58年、NHKでニンニクの効用が大々的に放映されたおかげで大反響を得、また、イタリアンをはじめエスニック料理への関心が高まる中、ニンニク人気は一挙に火がつく。

45年ころから始まったホワイト六片種栽培には、「土作りが第一」と鳥谷部さん。村では有機質堆肥で地力をつけ、保水・保温に効果のあるマルチ使用で飛躍的に作付け面積を拡大。昭和49年には青森県のニンニクが生産日本一となり、ホワイト六片種のブランドを確立する。

一見安泰かに見えたニンニク産地も、平成5年~6年、中国からのニンニク輸入開始により、一キログラム七〇〇円で落ち着いていた価格が、中国品の一キログラム一〇〇円以下の放出により、市場価格を半値にした。

その上、当初輸入量四〇〇〇t~七〇〇〇tであったものが現在、二万tにまでふくれ上がり、「四〇〇人はいた栽培業者が、これを機に農業放棄したり、また老齢化により今では三六〇人前後になりました」。

このころ「ニンニクをより多くの人に食べてもらおうと、においを消すことを考え、試行錯誤を繰り返し、二年がかりでやっと製品化にこぎつけました」と語る生みの親の町屋栄之介さん。

商品名は「MILD229」(マイルドにんにく)。塩水に浸けたり、冷凍乾燥したりするが、最終的には真空処理をすることで、においは薄らぎ、栄養価には変化のないニンニクが完成した。

品質保持のため、住友化学(株)からウイルスフリー切片を買い取るなど並々ならぬ努力をはらっている。当初の販売額五〇〇万円が一〇〇〇万円、現在では約五億円に。レギュラーと合わせると計約九億円弱になるほどに成長した。

天間林村では、9月下旬~10月上旬になると、苗を植えて越冬させ、雪がなくなる4月上旬から除草などの作業で忙しくなる。6月下旬~7月上旬に収穫し、これを乾燥させて貯蔵、3月末までが出荷期間。ただ平成3年、CA貯蔵により周年出荷が可能になった。

「ニンニクは素材として食べるのではなく、食材を引き立てる脇役として使ってこそ味わいが出る」という町屋さん。フレッシュを酢漬け、味噌漬け、醤油漬けなどオーソドックスな食べ方のほか、すって刺身の薬味として食べることをすすめる。特にイカの刺身は絶品とか。

「すそ野を広げ、細く長く使って欲しいですね」と鳥谷部さん。「マイルドにんにく」は少しずつ愛好者が増え、レストランばかりでなく、静岡の保育所でも使うようになったという。

■生産者=JAとうほく天間に所属する農家約三六〇人

■販売者=グリーン・ジ・アース(株)(青森県上北郡天間林村大字天間舘字森ノ上一九八、電話0176・68・3131、FAX0176・68・3630)

■価格=宅配可。一キログラム一八〇〇円(送料別)

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