素材の魅力すべて見せます:「ヴァンピックル」

2001.11.19 240号 2面

東京は銀座。カウンター中心の二〇坪のほどの狭い店内。入ってすぐ目につくのは、正面のオープンキッチンの後ろ、冷蔵ケースの明かりに光々と照らされて、生々しく宙吊りになった豚の半身。ここは昨年12月、ワインで有名な銀座のフレンチ「オザミ・デ・ヴァン」の姉妹店としてオープンしたフレンチバーベキューの店だ。

フレンチバーベキューとは、備長炭にブドウの枝を混ぜ、香りをつけて焼くもの。焼き物は、三陸産カキ、常磐産アイナメ、銚子産ホウボウ、甲州地鶏卵などいずれも産地にこだわった肉や魚、野菜だが、なかでもこの店の文字通り看板なのが冒頭の豚で、埼玉県川越市川本町の吉田牧場で自然飼育され、電殺名人岸氏によって、ストレスをかけずと殺された豚である。

いくつかの産地の豚を食べ比べた結果、「一番、脂身にうまみがあってジューシー。ワインにも合う」(ヴァンピックル・田中一英店長)という。

最近人気の炭焼きだが、解体前の豚を客の目の前に吊るしたのは、おそらくこの店が初めてだろう。客の反応は「これは牛?豚?」と尋ねる人から、「どこの産地のものか」と興味を示す人までおり、中にはわざわざ冷蔵ケースの前の席を指定するお客もいるそうだ。

本店「オザミ・デ・ヴァン」では、オーナー兼ソムリエを務める丸山宏人氏の取りそろえる六〇〇種類ものワインリストは「品ぞろえ、内容とも日本一」(田中店長)。そのワインカーブを店で一番目につくところに置いているのも同店のこだわりなのだろう。

豚は冷蔵ケースで五日間熟成させ、毎週火曜日に店で解体される。常連客が狙っているのが九本しかとれないという極上骨つきロース肉で、翌日の水曜日にはなくなってしまう人気だ。香草とマリネにじっくり一日漬け込んだ肉は、三〇分かけてじっくり焼き上げる。良質の脂身から出る甘さは病みつきになる味だ。カジュアルな店舗ながら、熟年客が多いのもこの店の特徴。グルマンの舌と目を楽しませる趣向に、店は連日予約客でいっぱいだ。

◆「ヴァンピックル」/東京都中央区銀座四‐三‐四、銀座屋酒店ビル二階、電話03・3567・4120

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