スーパー銭湯「虹の湯」、食べて湯ったり、9坪の厨房スペースで月商2千万円
奈良県は上牧町、大和連山を見渡す丘に、スーパー銭湯「虹の湯」がオープンして一年。近隣住民の憩いの場としてにぎわい、他府県からの常連客も後を絶たない。飲食売上げはわずか九坪の厨房スペースで月商二〇〇〇万円を誇る。周囲の飲食店も軒並み前年比売上げ二~三割増の波及効果を享受している。虹の湯が仕掛けた飲食と温浴レジャーの組み合わせに見る外食ビジネスの好機を探った。
虹の湯は、三七(男一九・女一八)の温浴施設のほか、飲食施設、マッサージ、エステ、アカスリなどを併せ持つ日帰り天然温泉。通称スーパー銭湯だ。
大人一五〇〇円、子ども一〇〇〇円もあれば、日時を問わず趣向風呂と飲食がセットで楽しめる(飲食実績と施設概要は別掲参照)。
一年前のオープン以来、一日来場者数二〇〇〇~三〇〇〇人、月間来場者数七万五〇〇〇人をキープし、施設売上高は月商七五〇〇万円にも達する。奈良県中部、最寄り駅から車で一〇~一五分という片田舎の一施設だが、事業規模はユニバーサル・スタジオ・ジャパンの一〇分の一に匹敵する。
虹の湯を手掛けるのは、宅配ピザチェーン「ピザポケット」(八三店舗)を展開する(株)ポケットフーズだ。お好み焼きとピザの宅配複合化に先べんをつけるなど、ローカル市場における外食ビジネスのあり方を、身を持って示してきたコンサルタント系外食企業である。チェーン傘下には、他チェーンからの看板替えで窮地を救われたFC店も数多い。
虹の湯の事業化は、それら宅配事業の成功実績をベースに、ローカルに貢献するビジネスモデルの構築を図る試みだ。
「ピザポケットはもともとピザレストランだから、単品商売の難しさを十分に知っています。とくにローカルは、味と接客がよいだけでは成り立たない。宅配導入やお好み焼きの複合化など、付加価値サービスが不可欠です」
「万人受けするアイテム数を増やして“かけ算の楽しみ”を訴求するのがポイント」と大原義洋社長。
「虹の湯は、その“かけ算”の論理をスケールアップしたビジネスモデル。宅配ピザ事業の顧客アンケートで一〇年間の蓄積があるが、一貫して「温泉に入りたい」「おいしい物を食べたい」という答えが多い。虹の湯は、その複合ニーズにこたえた事業」という。
当初、素人同然の業界参入は周囲の失笑を買ったが、レストラン、宅配、コンサルティングの事業実績とローカルニーズを信じて、ついに天然温泉の掘削に成功。困難を極めた水資源も三回目の掘削で確保した。
オープン直後は機器のトラブルに見舞われ、クレームや臨時休業が相次いだが、軌道にのってからは、うなぎ上りで常連客が固定化。全国各地の自治体や有力企業も数多く見学に訪れるなど、繁盛を極めている。
「オープン直後の失敗は、飲食店ならば命取り。虹の湯の失敗は、お客様が許してくれました。それだけ期待とニーズが強いことを実感した」と大原義洋社長。「絶対に期待を裏切らないよう万全を期します」という。
すでに誘致案件が殺到している。大阪府の堺市にFC、貝塚市に直営の出店を決定。ローカルニーズの掘り起こしに意欲全開だ。
虹の湯の集客効果で、近隣飲食店の売上げは二~三割、周辺の地価は一~二割アップした。複数のファミリーレストラン、ショッピングセンターの出店も決定済みだ。
温浴と飲食を核に地域貢献する虹の湯のビジネスモデルは、外食の将来像を探る大きなポイントになりそうだ。
◆「虹の湯」(奈良県北葛城郡上牧町上牧三二三七、電話0745・71・1126)営業時間=平日午前10時~翌午前1時、土・日・祝午前8時~翌午前1時、無休/入場料金=大人六〇〇円(土・日・祝七〇〇円)子ども三〇〇円(同三五〇円)三歳以下(一〇〇円)/総敷地面積=三〇四二坪/建築面積=四九四坪/総延床面積=六五七坪(二階建て)/駐車場=二一一台/総工費=一五億円(土地費用八億円含む)/開業=平成12年12月24日
〈温浴施設〉=大浴場、バイブラバス、リラクゼーションバス、ジェットバス、スーパージェットバス、シェイプアップバス、高温サウナ、大型露天風呂、洞窟風呂、打たせ湯、隠れ湯、壷湯、岩風呂、檜香り湯、釜風呂、湯腰掛、アカスリコーナー、エステルーム、マッサージ室、足底マッサージ、貸会場(五〇坪)
〈泉質〉=ナトリウム・塩化物温泉(高張性・中性・温泉)/泉温=四一度C/由来=地下一五〇〇m約八〇〇〇万年前の恐竜時代の地層からわき出る神秘の湯。
〈効能〉=神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、疾病、冷え性、病後回復期、疲労回復、切り傷、火傷、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病