飲食トレンド:港町ヨコハマに和食の黒船登場 元町代官坂・酒菜「匠」
先ごろ赤レンガ倉庫が商業施設として生まれ変わり、ハイカラ港町としてますます集客力に磨きがかかる横浜。その横浜・元町商店街で、昨年、新和食の店をオープンさせ、山の手マダムを中心に大流行なのが、酒菜「匠」だ。
「隣接する山下町には中華街が控え、洋食店が多い元町では、これまで和食の店が少なかった。とくにここは山の手の高級住宅街を抱えているのに、この富裕層が満足できる和食店は『元町梅林』くらいしかない。うちでは日常気軽に利用していただける客単価五〇〇〇円の和食を提供しようとこの店をオープンしました」と同店の相馬江社長(37)。
狙いは当たり、女性客が昼は九割、夜も七割を占める。そのうち過半数が四〇~五〇代の主婦。ほとんどが観光客ではなく、地元の住民や、学校、商店街に通ってくる常連だ。
相馬社長は和食の板前歴二〇年、「これからはお客様の声が直接聞ける飲食店ビジネスをやりたい」と、昨年板場を引退し起業。現在、匠のほかに和食業態を二店舗経営している。
匠の店名には、職人の技を表現したいとの思いを込めた。創作和食が増えている中で、あえて正統派の和食にこだわる。自らの経験から「和食の調理法が素材をもっとも生かす技法」と考えるからだ。旬の素材を一番おいしい方法で食べてもらうことがモットー。年配の客からは「私たちに合う薄味」と好評だ。
五〇〇〇円の客単価へのこだわりは、「さまざまな年代の人に来てもらいやすい価格」だからだが、料理だけではなく、「ほかにサービスと空間、この三つのトータルバランスがとれてこそ、お客様に五〇〇〇円の価値を認めてもらえると考えている」という。
そのために会社設立の段階から、デザイナーに経営に加わってもらった。店内は庭園をイメージしたもので、「床を池に見立て、石畳を渡し、こあがりが丘陵、テーブルが蓮をそれぞれ象徴している」。
庭園の空間を楽しんでもらうために、仕切りも設けない。六〇坪の店内に客席は六〇席しかなく、「ひとり一坪」のゆったりとした居心地の良さを提供している。いすは一脚三五万円というブランド品だ。
だが、ここまでおしゃれで高級なイメージにこだわった一方、「子連れも大歓迎」という。近くに小中学校があるため、店の前を子連れの主婦が多く通ることに気が付いた。しかし子連れで入れる飲食店がない。店の雰囲気を壊す危険もあったが、「最終的には店はお客様がつくるもの。地元のお客様に喜んでもらった方がいい」と決断した。
いまでは、ランチの時間帯に子連れの主婦が一〇人、二〇人単位の団体でやってくることも珍しくない。地域密着の店づくりで、客層にも仕切りを設けなかったことが、口コミを呼び、繁盛店となった要因だろう。
ほかにも一口サイズの手まり寿司を用意したり、パティシエを雇ってデザート類を充実させるなど、女性客を意識したメニュー作りを行っている。
来年は、第三セクターの「みなとみらい21線」が渋谷から元町まで乗り入れる。便利になって都心から横浜に流れる客はさらに増えそうだ。相馬社長は、「あと二店舗ぐらい地元に出店した後、東京に進出する計画」とその日に向けて地歩を固めている。
◆「元町代官坂 酒菜 匠」(神奈川県横浜市中区元町二‐九七、喜久家アネックス地下一階、電話045・664・1566)/営業時間=正午~午後3時、5時30分~11時(木金土・11時30分)/坪数・席数=六〇坪・六〇席/客単価=昼二〇〇〇円、夜五〇〇〇円/一日来店客数=八〇~一七〇人/月商=一〇〇〇万円強/経営=(株)クリエイティブサービス・インターナショナル(ホームページ=http://www.c-s-int.com)













