シーフード調理学(22)イワシ<2>天ぷら・フライ・照り焼きがベスト3
かつてロンドンで遊んだことがありましたが、ホテルの朝食では腹を満たすことができず、周辺を野良犬のようにうろついておりました。
すると裏街に店頭で軽食を立ち食いさせるような店が結構あり、その中の一軒で大きな丸パンにたっぷりのオイルサーディンと野菜を挟んでもらい、あわてて口に放り込みました。味付けは粒マスタードとトマトケチャップだと思いますが、そのおいしかったこと。忘れられない思い出のひとつです。
イワシは安くておいしい、代表的な大衆魚といえるでしょう。しかし臭みが強く、安っぽいというイメージがあり、嫌がる人もかなりいるようです。
とはいっても調理の幅が広く、アイデアひとつで新メニュー開発が際限なく可能になることも確かなこと。調理上の第一のポイントが、鮮度にあることはいうまでもありません。この魚種は、海洋の比較的上層部を泳いでいるので、水圧をあまり受けないので身が軟らかく、それだけ腐敗が早いという欠点があります。
仕入れる際には、皮が青みがかった銀色をしているもの、光ってピンと張っているもの、目が黒く澄んでいて赤くないもの、を選ぶとよいでしょう。
イワシ料理には処理方法により、次のようなものがあります。
・姿のままで=塩焼き(酢とおろしショウガで)、魚田(味噌をつけて)、唐揚げ(南蛮漬け、甘酢あん、おろし煮)など。
・二、三枚おろしで=刺身(鮮度のよいもの)、たたき、酢じめ、マリネ、唐揚げなど。
・開き=蒲焼き、フライ、天ぷら、みりん干しなど。
・すり身=つみれ汁(味噌仕立て)、唐揚げ、だんごなど。
このように利用範囲が広く、調理の面からみますとイワシとサバはよく似ているので、傾向としては「天ぷら」「フライ」「照り焼き」がベスト3といってよいでしょう。
料理の傾向を地域別にみますと、東京では焼き物が多く刺身としてはほとんど利用されませんが、大阪では天ぷら(イワシ天)、フライ、煮魚、焼き魚、塩焼きというようにまんべんなく使われております。
東京で刺身として利用されていない理由(マグロなどが豊富にあるから)は分かりますが、銚子という産地が近くにあるわけですから、検討する必要があるでしょう。
大阪ではある統計によりますと五%ほど刺身に利用しているようです。
(『ニューデリカ通信』編集長 染矢清亜)