注目!ココが光る技あり店(7)FC加盟店舗編 カプリチョーザひたち野うしく店

2003.03.03 266号 15面

米国の「プレイボーイクラブ」「ハードロックカフェ」などを日本に紹介した(株)WDIは、昭和60年、本多征昭氏よりカジュアル・イタリアン「カプリチョーザ」の展開権を取得した。下北沢に一号店をオープン、日本のイタリアンレストランブームに火をつけ、カプリチョーザは現在全国約一五〇店のFCチェーンに成長した。そんな数ある店舗の中でも、十指に入る優秀店、それがカプリチョーザひたち野うしく店だ。経営者は(株)シー・アンド・アイ代表取締役社長の坂巻龍治氏。坂巻氏の経営技を探ってみた。

■FC加盟と独立の動機

同社がFCビジネスにかかわった歴史は古い。坂巻社長の祖父は、千葉県柏市で「伊勢角」という鮮魚店を営んでいた。家業を継いでいた現社長の兄が昭和52年、ケンタッキーフライドチキン加盟を契機にFCビジネスに参入している。

その二年後、坂巻氏は伊勢角に入社。「一ブランド単独で経営できる時代は終わった」とし、平成7年、カプリチョーザのFC権を取得。(株)シー・アンド・アイを設立し、セルフからフルサービスへと業態の幅を拡大した。

同社は、FC契約を巧みに利用することで経営ノウハウの無い業態への進出を成功してきている。現在ケンタッキーフライドチキン三〇店舗、ピザハット四店舗、カプリチョーザ四店舗。また、直営店「くいどころバー円喜門」一六店舗、「ぎをん庭」三店舗を含む計五四店と順調に成長している。

■他のFCとはココが違う

これだけ多くの店舗を運営するには、信頼できる従業員の確保は死活問題といえる。しかし坂巻社長は従業員に決して高度な能力を要求するわけではない。「最低限の能力は要求するが、人間性を重視しています」と坂巻社長は語る。また「当社の社員はみんなまじめです」ともいう。ここが光る技なのであろう。

サービス業はそのひとの資質がハッキリと問われる。向いている人を採用し、信頼できる社員に育て、正確な情報をスピーディーに伝えることが重要である。

「みんなは嫌がりますが、昔はよくピークの洗い場をのぞいたものです。そこで基本ができていないとすぐにわかります。そんなところを発見したらすぐにその場で注意します」と言う。

また、従業員には「基本に忠実」であるように指導している。それは特別なことではなく「礼儀礼節」とか「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく」といっただれでも心掛ければできることだ。

ひたち野うしく店のような特殊な立地環境の店舗を、優秀店にする秘けつにしても「基本に忠実」なだけと語る。「店舗は人間の体と同じ、頭脳がSV、心臓が店長、情報は血液」と坂巻社長は考えている。すべてが健康な状態に保つことが重要なのである。特に今年のテーマは「スピードとシンプル」を掲げ、素早い情報伝達を意識しているという。

■店舗の運営手法について

ひたち野うしく店は、いまから五年前の平成10年、同社のカプリチョーザでは四店舗目のオープンだった。JR常磐線の新駅として開発されたひたち野うしく駅だが、商業立地という観点から評価すると決して恵まれているとは言いにくい。

周囲を見渡しても住宅地はかなり遠く、駅前には広い駐車場とコンビニが一軒、それにカプリチョーザがあるだけだ。この地に出店を決意するのは並の経営者であればかなり覚悟が必要だろう。

しかし、昼どきのこの店をのぞくと驚く。満席でしかもウエーティングの客がいるほどだ。客単価平均一三〇〇円、平均一日来店者は二〇〇人。一昨年は、前年比一一三・三%という脅威の成長率を記録した。これは五年間の地道な蓄積が開花し、目的来店性の高いブランド力を築くことに成功したからであろう。

店長を務める岡田光世氏は、学校卒業後に入社し今年で六年目、この店に勤務して五年目という若い店長だ。入社前は「包丁などほとんど触ったことも無かった」という言葉が信じられないほどの手際良さで厨房を駆け回る。

そんな岡田店長は「調理は案外習得しやすいんです。自分で努力できますから。しかし、接客はそうはいきません。奥が深いと思います」と語る。

忙しい中でも日々遭遇するさまざまな事件を、ホールノートに詳しくメモし、スタッフ全員で情報を共有化するように努めているそうだ。

■将来の目標・ビジョン

「当社は、独自に開発した業態の複数店舗運営も経験してみて、本部の苦労もよく理解できるようになった」と坂巻社長は言う。さまざまなFCビジネスを体験し、それぞれのノウハウも蓄積できた。そんな坂巻社長の目標は、「すべての飲食業態を網羅することです。地域密着を目指す以上、地元のお客さまが望む外食ニーズをすべて満たしたい」。

今後はカプリチョーザよりワンランク上で付加価値の高いレストランへの拡大を視野に、さらなる発展を目指している。

((有)マネジメントプロセス・東山世司子)

◆FC本部担当者からのコメント

当社は毎年優秀店上位10店舗を表彰しイタリア研修旅行へ招待しています。(株)シー・アンド・アイは2年連続の受賞となりました。これは数字(業績)に加え、覆面調査など多面的なデータで評価されます。それを2年連続受賞するということは大変名誉なこと。平均的に礼儀正しい方が多い社風のようです。

((株)ダブリュー・ディー・アイ第一カンパニー・シニアバイスプレジデント・泉正和氏)

◆筆者からのコメント

組織が巨大化すると経営者の意思が伝達されにくくなるが、同社は定期的なコミュニケーションと、迅速な対応で基本を忠実に守るというシンプルな経営を貫いている。それはチェーンビジネスを主体とした事業経験から得られたものだろう。結果として、ケンタッキーフライドチキンというセルフサービスで育ち、フルサービスの提供に成功している。

今後は、社長が自ら人選し教育した従業員が、どのような創意工夫と地道な努力で、地域客に向けた付加価値の高い店づくりを行っていくかが問われる。

●店舗データ●

店名=カプリチョーザひたち野うしく店/所在地=千葉県牛久市ひたち野東三三‐一‐一、電話0298・78・0177/店長=岡田光世(おかだ・こうせい)/店舗面積=六〇坪/平均客単価=一二〇〇~一三〇〇円/目標月商=八〇〇万円

●本部データ●

企業名=(株)ダブリュー・ディー・アイ/所在地=東京都港区六本木五‐五‐一、ロアビル八~九階、電話03・3470・4831/カプリチョーザ店舗数=一四三店舗(直営五〇/FC九三)/モデル収支=売上高八五〇万円、原材料費二三〇万円、粗利益六二〇万円、地代・家賃九四万円、水道光熱費五四万円、人件費二三八万円、ロイヤルティー(基本的に売上げの)六%、各種リース料五五万円、一般営業費八五万円

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