名古屋版・繁盛店シリーズ:とんかつ店「とんとん亭」駅西総本店
とんかつ業態は苦戦が続く中、新しいコンセプトの立て直しを図り、活気を取り戻している店がある。多業態で展開している(株)アートフード(本社=金沢市三口町火二七一‐一、電話076・237・0652)が出店している「とんとん亭」がそれ。
島田誠二社長は「お客さんの、昼と夜の店の利用動機が明確に分かれてきている。したがってとんかつ店は昼型の利用が中心となったため夜の集客率が落ちこんだ」と考え、夜の客数を増やすために店づくり商品づくりのコンセプトを練り直した。そして、昼型の単純なメニューを廃し、ファミリーやカップルに「とんとん亭のこれを食べたい」という目的を持ってわざわざ足を運んでもらえる商品力をつくりあげた。
社長いわく「いわゆる原点回帰。専門店としての意識を持ち、ご飯をかまどで炊いたりオートフライヤーは使わず手揚げで高温仕上げに植物油を使った」。店の都合である効率重視の考え方を一掃させたのである。
メニューも客の要望でかゆいところに手が届く工夫ぶり。特撰ヒレかつ定食、特撰ロースかつ定食、黒豚(群馬吉田農場直送)スーパーとんかつ極上、ヒレミックスかつ定食(五種類)などと設けているところまでは他店と変わりないが、量を大・中・小に分けさらにまたポン酢おろし、味噌おろし、ごまだれのチョイスをできる。
ロールかつ三種盛り(一二八〇円)はアスパラ巻、チーズ巻、梅じそ巻とバリエーション豊富。冬季限定としてかき祭りも行ったり、カレー、丼など単品メニューも広げて楽しさ満点。
もっか二店舗を持つが今年中にはさらに一店大型店舗を計画している。
「この三年をかけて今の時代のニーズに合わせて戦える体制にセットし直した」と話す社長だが、では時代にあった店づくりとは。
「それはファッショナブルな流行にのるのではなく、大衆的でベタな商売が基本。いわゆる自分のお金で気軽に行けて、ふだんなじみある商品がある店のこと。従業員にもなじみがあるから商品を理解しやすいし、愛情も持ってもらえる」
たとえばとんかつやラーメン、やきとりなどラインを一本にしぼってフル稼働できる業態だ。「腰をすえてメニューを深く磨きこんでゆけるのもいいし」と話す。
やきとり業態では焼鳥ダイニング「とりどり」「とりえん」を出店するが、春よりメニューにつくねシリーズ七種を加えた。女性にも食事型で楽しめるとして開発したが、つくねの中になんこつやチーズなどを練りこんだスタイルだ。いろいろ食べたい人のニーズに対応して一本一二〇円のお手ごろ価格に。
「ずぶとく腰をすえ、地に足をつけてやっていきます」。コツコツと少しずつ軌道修正しながら築き上げてきた店ならではの底力がのぞく。
◆「とんとん亭駅西総本店」(金沢市北安江三丁目一六一七、電話076・233・0086)