環境保全、清掃、メンテナンスなど外食店ではなかなか消費者の目に入らない部分での業務が課題になってきた。個別の企業で対応するのが従来の外食業の手法だったが、企業規模が大きくなれば、専門の人材を育成し、深夜営業などにも対応しなければならず、個別の企業ですべてをまかなうと高コスト構造になりやすい。日本ケンタッキーフライドチキン、モスフードサービス、ワタミフードサービスは店舗のメンテナンス、廃棄物の適切な運搬・リサイクル・処理を手がけるＪＲＭ（ジャパン・リテイル・メンテナンス（株））を設立、三社以外の外食店を対象に業務を展開する。

外食店最大の課題は容器や包装を中心とした廃棄物。リサイクルを意識した適切な分別とリサイクルにかかるコストの削減がカギだ。チェーン化した外食店はセントラルキッチン方式の採用などで容器や包装を中心とした廃棄物が増えている。個別の企業でリサイクルしようとすると、一つ一つの店舗が離れていたり、リサイクルできる業者までの距離が遠くなるなどで、物流コストばかりかかってしまう。

リサイクルするには、分別排出が必要条件だが、家庭のゴミと同じように分別しても構成比が異なるので、外食独自の分別の方法が必要だ。また、分別したものから新たな製品にするリサイクル業者も探さなければならない。

ＪＲＭはワタミグループの店舗で実践してきた九通りの分別方法をベースに契約した各店舗に実施してもらう。分別された廃棄物を自社が持つ二ヵ所のリサイクルセンターで異物を除きビンの色別などさらに一六種類に分けて、リサイクル業者に回す。ボードメーカー、製紙業者など量がまとまらなければ製品化できない企業とも連携を図る。

分別排出はルールを定めると同時にそのルールを就業者に守らせなければならない。外食店はパートタイマーなどが多く、だれでも短時間で理解でき、厨房などでも操作しやすいようにしなければならない。ＪＲＭはワタミで実践してきた、厨房で分別ルールを明示するシールの使用などを契約者に勧める。

食品リサイクル法が平成１３年に施行され、１８年までに外食店は食品残さのリサイクルや発生抑制などをしなければならない。ＪＲＭは生ゴミ処理機をエンジニアリングメーカーと共同開発、一部の店舗で食品残さを乾燥させたものを受け入れてワタミグループの農業生産法人ワタミファームで肥料化して、有機栽培の野菜の肥料として活用する。

全国で「てんや」などを展開するテンコーポレーションは、ＪＲＭに廃棄物の回収、定期清掃、グリーストラップの汚泥の回収を委託する。飲食店三社が出資した関連会社だからこそ、飲食店に配慮したサービスを期待する。

ＪＲＭとテンコーポレーションの協力は平成１２年から始まった。外食店も１８年までに発生抑制やリサイクルで実績を上げなければならなくなる食品リサイクル法に関連して、ＪＲＭとテンコーポレーションの担当者間で情報を交換したり、ＪＲ上野駅のリサイクルセンターを見学するなど、対策を検討してきた。

一昨年からテンコーポレーションは、ＪＲＭに（１）排水から油分を除去するグリーストラップの汚泥処理（２）廃棄物処理・リサイクル（３）店舗の定期清掃の三種類の業務を委託する。

廃棄物の処理・リサイクルは東京都内の四店舗で実施。同社の店舗はロードサイド型ではないため、スペースに余裕がなく、廃棄物を保管する場所がないので、毎日、回収にくるＪＲＭのサービスは有効という。

店舗清掃は二ヵ月に一回の床などの定期清掃と、年に二回念入りに厨房まで含めて行うタイプで契約。

ＪＲＭを使うメリットは「飲食店について精通している点」（テンコーポレーション営業企画室）という。同社の清掃や廃棄物の運び出しは店が閉店した深夜になるが、その時間帯に対応している点と、飲食業で重要な衛生に配慮して作業する点を評価。また、てんやの各店舗がモスフード、ワタミ、ケンタッキーフライドチキンの店舗にも近く立地していることが多いため、廃棄物の運搬費用の削減につながるという。

今後の契約店舗の拡大は、店の立地によってはコスト削減効果が出にくいこともあるので、コスト、サービス内容などで使い分けしていくという。

◆ＪＲＭとは？……

ジャパン・リテイル・メンテナンス（株）は、二〇〇〇年に設立。（１）定期清掃、厨房機器のオーバーホールなどの保守・メンテナンス（２）改装・厨房工事（３）環境マネジメントなどを手がける。保守などは三六五日二四時間対応している。出資者である日本ケンタッキーフライドチキン、モスフードサービス、ワタミフードサービスの三〇〇〇店で培ったノウハウを生かす。

特に環境保全に関しては、自治体別に回収処理業者の選定から処理管理まで行う。