業務用食材活用・成功事例ルポ:ベトナム料理アオザイ 自慢の極薄ライスペーパー

2004.07.05 287号 3面

東京は赤坂の「アオザイ」は、わが国ベトナム料理店の草分け。一九八〇年の開店以来、エスニックブームを追い風にファン層を広げてきたが、近年、同種競合店の出現や近隣オフィス移転に伴う常連客の流出により集客に陰りが見え始めていた。昨年就任した新オーナー・木村泉料理長は、ベトナム直輸入の加工食材を積極的に活用し、看板メニューのブラッシュアップ、また、新メニュー開発に取り組み、復活に成功している。(谷口正俊)

「生春巻き」はベトナムの代表的料理で、この店の看板メニューでもある。以前は来店客数より生春巻きの販売本数が多いほど人気だったが、近年、生春巻きは他業種店でも定番メニューとなっており従来のやり方では売れなくなっている。

開店以来、厨房を守ってきた木村料理長は、昨年9月、店を買い取ってオーナーシェフになったのを機に生春巻きに使うライスペーパーを従来のタイ産からベトナム産に切り替えた。

「以前、ベトナム産は高価格で入手困難だったため、低価格で入手しやすいタイ産を使ってました。オーナー就任で心機一転、本格訴求を極めるためベトナム産に切り替えました」と言う。

ベトナム産ライスペーパーは、(1)手作り(2)薄い(3)歯応え(4)具材との相性、などに優れる。また、タイ産は分厚いので一袋(四〇~五〇枚入り・五〇〇g)だが、ベトナム産は薄いので一袋(六〇~七〇枚入り・五〇〇g)。一袋の価格対比では割高だが一枚の単価はほとんど変わらない。

この切り替えで、生春巻きの味は飛躍的にアップし、すぐに人気が復活した。また、ベトナム産ライスペーパーは薄くて破けやすく機械や素人では巻けないため、職人技の訴求と他店との差別化も明確となった。

看板メニュー復活の勢いにのって、白身魚の定番であるベトナム産「カラスカレイ」をベトナム産「キャットフィッシュ(ナマズ)」に切り替えた。

ベトナム産キャットフィッシュのメリットは、(1)身がしっかりして崩れない(2)うまみが上品で品質が均等(3)冷凍真空パック・フィーレ加工で使い勝手よい(4)小分けパックでロスが無い(5)アメリカ産キャットフィッシュに比べて低価格でくさみがない、など。価格は従来のカラスカレイとほぼ同じという。

キャットフィッシュはベトナムでは一般食だが、日本ではマイナー素材。当初は心配したが、エスニックブームの定着もあり、意外に抵抗なく受け入れられたという。

「はじめは驚かれますが、ほとんどのお客さまが次回も再注文されます」とし「いまやキャットフィッシュメニューは売上げ構成比の一割を超える」と好評だ。

◆ベトナム料理「アオザイ」(東京都港区赤坂五‐四‐一四、トレード赤坂ビル一階、電話03・3583・0234)営業時間=午前11時30分~午後2時、5時~10時、日曜祝日定休/坪数席数=二〇坪三六席

◇「アオザイ」を支える業務用飲食材

◆冷凍キャットフィッシュ・フィーレ (株)メイプルフーズ

流水養殖場のきれいな水質で育つため淡水魚特有のクセがなく、適度な脂がのって身肉の食感に優れる。また、発育が早く価格も安い。ベトナムの水産養殖は年々拡大し、この三年間で生産量は約五〇%増加。キャットフィッシュはその大半を占め、世界中に輸出している。

▽製品規格=一切れ一〇〇~二〇〇g、二〇〇~三〇〇g/一キログラム×一〇袋

▽問い合わせ=(株)メイプルフーズ(東京都中央区、電話03・5565・7001)

◆BANH TRANG 販売・協同食品(株)

ほかのアジア産ライスペーパーに比べて、皮色の美しさ、透明感に定評がある。薄皮のため、巻いた時に具材がきれいに透ける。一〇〇%ベトナム手作り。

原材料は、米粉、タピオカでんぷん、食塩。

▽製品規格=一袋五〇〇g(六〇~七〇枚)/直径三一センチメートル、二一センチメートル、一六センチメートル

▽問い合わせ=協同食品(株)(大阪市北区、電話06・6315・6366)

◇これがお店の人気メニュー

(上)「キャットフィッシュの衣揚げ」(一六〇〇円)。キャットフィッシュに塩とコショウをふり、米粉と小麦粉を合わせた粉で揚げたもの。サニーレタス、ライスペーパーで巻いてヌクマムをつけて食べる。このほか、「キャットフィッシュのあんかけ」(二五〇〇円)、「キャットフィッシュのレモングラス焼き」(二三〇〇円)、「キャットフィッシュの酒蒸し」(二三〇〇円)、「生春巻き」(一本四〇〇円)などがある。

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