炊飯の技術と実践 これがプロの炊飯手順(2)「とぎ」から「蒸気を飛ばす」まで
米は夏なら三〇分、冬なら一時間水に浸しておくということもいわれているが、米はといですぐに炊いてもおいしく炊ける。
追い炊きの場合は、そのたびに時間をとっていられないのですぐ炊くわけだが、その場合はいつもより水加減を心もち多めにし、再スイッチを七分後くらいに入れるようにする。
時間に余裕があれば、スイッチを入れる前に三〇分くらい浸水時間をとるとよい。冬でも同じ程度でよい。
米の質によって、硬質米、軟質米、新米、古米によって水加減を変えるようにともいわれている。しかし、米自身が含んでいる水分には大差がなく、たとえ新米にしても昔に比べると乾燥状態がよくなっているので従来いわれているように水を控えることもない。
米店から米が変わったとか、新米になったとか連絡を受けた段階で若干、水加減の手直しを行い、炊き上がりの状態を確認して、水量の変更を行うことが必要である。
炊飯というのは“煮る”“焼く”“蒸らす”の三つのプロセスを経る。
“煮る”というのは、スイッチを入れてから切れるまでをいうが、次の“焼く”というのは昔のかまど炊飯でいえば、最後にわらをひとつかみ燃やし、ご飯に残っている余分な水分を飛ばして、ご飯の底にきつね色のおこげをつけたことをさす。しかし、現在の炊飯器はこのプロセスが欠けている。そこで、スイッチが切れて五分後にもう一度スイッチを入れる。これは煮る、蒸す、のプロセスのガスや電気炊飯器に、さらに“焼く”役目を担わせるための作業である。
再スイッチを入れる場合ガス釜なら五秒ほど、電気釜なら一〇~一五秒ほどたったらすぐにスイッチを切って次の蒸らしのプロセスに移る。この再スイッチによって底の方に薄くおこげの層ができ、ご飯も炊き上がりがよくなる。
再スイッチをしたら、そのまま蒸らす、蒸らす時間は一五分間が適当。
その蒸らし時間を短かくすると、芯のあるご飯になってしまう。反対に長すぎると、炊飯器のふたについた水蒸気が水滴になってご飯の上におちてしまうため、つやのない水っぽいご飯になってしまう。
一般に、この蒸らしの時間が長すぎるきらいがあるので充分気をつける。
蒸らしの時間は炊飯のプロセスの中で最も大事なポイントといえるもので一五分という時間は大切にすることである。
蒸らしが終ったらご飯をそのままに放置しておいてはおいしいご飯にはならない。上層の堅いご飯と内側の柔らかいご飯を合わせることで均質のご飯になる。ほぐした後は釜にかたく絞ったぬれぶきんをかけた上で蓋をする。料理はもちろん、ご飯もやはりできたてを提供することが最も望ましい。炊き上がった釜のご飯がみるみるなくなるのであれば問題はないがいかにその状態を保って提供していくかが大きな鍵になる。
金属の釜に入れぱなしではすぐさめてしまうし、水分もとびにくい。そこで別の容器に移す。水分を取ることにすぐれ、そして温度も人肌ぐらいには保つ機能を有しているのが昔ながらの木製のおひつである。おひつの保温はちょうど人肌程度でご飯の味が最もおいしいと感じられる生あたたかさが保てる。ぬるいご飯ではなく、熱いままのご飯を、と望む場合は、ジャーを利用するわけであるが、この時もジャーの蓋とご飯の間にぬれぶきんをはさみ込むことをおこたらないようにした方がよい。
また、ジャーの場合六五度から七五度という高温での保温が可能であるため、あたかも炊きたての状態が続いているようであるが時間がたつに従って食物は変化していくのであるから、ご飯であっても保温の状態の良さにたよらずに手早くさばいていくように心がけた方がよい。